「ええとあの…久しぶりにファンタジーな設定の続き物なんて感じになったのに…何でそんな、鯛焼きとか食べてるの?」
「は、ファンタジーで続き物ならば鯛焼きを食べてはいけないのですか?知りませんでした、じゃあ高屋敷君にあげますよ」
「いや僕も羽が生えている以上ファンタジーだから。あと安西先生は吸血鬼になったっぽい感じだったのに何で鯛焼き食べられるの」
「鯛焼きにニンニクなんて入っていませんが」
「そういう話じゃなくってもっと概念的な…ごめんなんでもない。でももっと設定を生かしたお話ししようよ」
「まあまあ良いじゃないですか。鯛焼きは美味しいですよ?そこにある屋台で買ったのです」
「うわークトゥルフ神話に出てくるような怪物が鯛焼き焼いてるー。体液が滴り落ちて衛生的に超不安ー」
「成程、普通の鯛焼きとは一味違うと思ったらそんな秘密が…!」
「おいしいのかも知んないけど、よく食べられるね」
「私は全ての頂点に立つ者ですよ?何もかもを捕食する存在が何を躊躇いましょうか」
「僕がその立場でもその鯛焼きは食べない。もっと乾いた感じの化け物が出してる屋台ないの?」
「向こうでミイラが売っているたこ焼きが…」
「粉末化した皮膚が入ってそうだから嫌だ」
「何を言うのですか高屋敷君、ミイラは古来から漢方薬として高い価値を持っているのに」
「あっちに行ってよカニバリスト。…元から人じゃない人は、人が化け物になるおまじないでも、見た目あんまり変わらないんだね。向こうに会長がいるけどあんまり変わってないや。…継ぎ接ぎが出来てるみたいだけど…」
「面白みがないと言えばないんですけれどねえ。そうです、君は色々変化させて遊びましょうか。日替わりで色んな化け物になると良いですよ」
「アイデンティティと自我が崩壊の危機だよ!」
「元からちっぽけな存在じゃないですか。明日は妖精にしましょう。ピクシーなんかが小さくて美しくて良いですかねえ」
「そういえばさっきからなんか小さくてふわふわしてるのが飛んでると思ってたんだけど、これ妖精だったんだ」
「いやそれは雪虫…いえ、何でもありません。妖精ですとも」
「捕まえたらお願い叶うかな?何匹捕まえたらハロウィンまでにこの馬鹿騒ぎ終わらせられるかな?」
「さあ、ケサランパサランには詳しくないので…それにしても本当に気に入らないのですね、一応君が言ったからハロウィンらしくしてあげたというのに」
「忘れてるみたいだから言うけど、そもそもハロウィンは仮装って言う前提があるじゃない。マジモンのバケモノになってどうすんのさ」
「そこはそれ、本格志向ですから。皆心の底から愉快、享楽、お祭り騒ぎ。現実に立ち返る隙もなく、人の我を忘れて目出度頭の人外でいられるなんて素敵でしょう?」
「洗脳みたいなことを言うなあ」
「この洗脳は醒めないから安心ですよ」
「まあ確かに…みんな化け物だけど楽しそうだね。向こうじゃパレードもやってるみたいだし。でもさあ、皆が皆遊んでていいの?働くにしたってお買いものごっこくらいしか見かけないよ?社会インフラストップしないの?」
「ああ嫌だ、子供の君が言うべき台詞じゃありませんよ。それもこれもどこぞのネズミが仮初のファンタジー世界を作ったせいですかねえ?夢と魔法と残酷の世界に、どうして社会インフラが存在しましょう?蛇口は無くとも机に錐で穴を開ければワインが溢れ、葉巻を吸うには指先から炎を出せば良い。コンピューターは鎖から放たれ走り回り、街灯が立ち尽くさずとも七色に光るカボチャのランタンがある」
「人外なら住み心地よさそうだけど、割と人型保ってる僕にはちょっとー」
「…人のつもりでいたのですか?」
「人だよ、安西先生とは違ってね」
「君の頭の中身を刳り抜いた覚えはありませんよ、お馬鹿さん。自分の言ったことを思い出しなさい。元より人でなしは、化け物になる呪いでも見目は麗しきまま…可愛い可愛い高屋敷君、羽の生えた君はまるで、絵画に住む天使の様です。神の膝元で永遠に愛され、不老と不死を持つあの天使の様にねぇ」
「…?!…ちが、ちがう…僕は違う、僕だけはマトモ…!いつもそうだったよ、どんなに回りがおかしくても、僕だけは、普通で…!!」
「呪いの言葉で言ったじゃありませんか。理性を保つ者は存在を許さないと。Happy Halloween? 高屋敷君。この世界では、君の正常も意味を為さない。仲間外れは先生許しません。さあ、そろそろ我々もパレードに参加しましょう。浮かれ頭の空っぽ頭、Happyにいきましょう、だって今日はハロウィンなんですからね?」
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