気が付いたら 僕はベッドの上にいて 覆い被さるように 安西先生が覗き込んでた 「通報すべき?」 「馬鹿言いなさい、心配かけておいて失礼な子です。どこか具合が悪いところはありませんか」 「ない、と思う。たぶん」 「…だと良いのですが」 「なに?僕日射病にでもなったの?その割にはだるくないけど」 「君は三日も消えていたのですよ。神隠しというやつです。方々探して、ようやく見付けた。高く付きましたよ全く…借りを返す当てもないのにねえ」 「えー、それはごめんなさい。ありがとう。でも実感が無いからイマイチ心が籠もんないです」 「ふん、でしょうね。期待もしていませんから良いですよ」 「あ、でも三日経ってるのはホントだ」 「…ねえ高屋敷君、神隠しは別次元に行ったのだとも言われます。そして、別次元から返ってこれたら、おかしな能力が身に付くともね。…もし、そんな何かがあったら、すぐに言いなさい」 「おかしなって、どんなー」 「一般に言われる超能力。或いは、空間に関する異常。ボールを切らずに内と外を引っ繰り返すなんて話、聞いたことがあるでしょう」 「うん、漫画で読んだことあるよ」 「そんなような何かです。良いですね?きっと私に知らせなさい」 「…って言われたけどー、そんな面白そうな力言うわけ無いじゃんね えへへ、すごーい!僕ったら皮剥かないでオレンジ食べられる!中身だけすぽーんって取り出せるー! …でもホントにどうなってんのかな?皮も傷一つ付いてないし…内側と外側ひっくり返すのもできるかなあ? もっと色んなこと、できるかやってみようっと」 「…高屋敷君、先生はちゃんと言いましたよ。異常があったらすぐ知らせなさいと。それを聞かないから、そんな目に合うのです。空間の異常が高じたから、君の脳では着いていけずに、空間把握能力がイカレてしまったのですね。君にとっての狭いは広い、近いは遠い、小さいは大きい、低いは高い、全てが引っ繰り返った空間で、君は最早正常を認知出来ずに、そうして狂ってしまったのですよ」 |