なんとなく大学の第一校舎十一ホールに行ってみたら

僕のお葬式が盛大に執り行われてました

当然のように喪主は安西先生です


「おや高屋敷君、この度は御愁傷様で…」
「なにがなんだかわからなくなること言わないの!とりあえずこのエキストラさん達を帰して!」
「えー?この人数だと結構お金がかかっているのですよ?君一人の我儘でそんな
「あーもう帰った帰ったー!!おしまいだから帰っていいよー!!」
「…がっかりです」
「最近の安西先生は陰険だよ。昔はもっと派手だったじゃない。言っちゃ悪いけどさ、もう年なんじゃない?」
「だって大学に入ってからこちら、全体的な行事もないですし…学生を使っての大殺戮祭も開催しにくくて…私だって大きな規模で殺したいですよ?」
「ふうん?その結果が大きな規模で僕の生前葬?発想がおっさんくさい保守的感溢れてるじゃない。アバンギャルドさに欠けるっていうか」
「…君、そんなことを言っていいのですか?唯一の良心が」
「別に殺戮行為を推奨してるんじゃないよ。むしろ逆です。いい加減落ち着いたらどうですかー?今年で三十路でしょ?」
「年は関係ないじゃありませんか」
「…ま、先生はなさそうだね。ホントに年取るかも怪しいし」
「ふん、君に何が解るというのですか。自分のことすら解っていない君が、この私のことを?」
「そっちこそなんで僕が僕のことを解ってないと解るのさ?」
「それは私が全知だからです」
「神かよ」
「ええ神ですとも。ああうるさい子です。高屋敷君はそんなにうるさくて可愛くない子じゃなかったですよ…さてと…予行演習も終わらされちゃいましたし…本番、始めましょうか」
「は?…本番?」


流れ始めたのは僕の好きな曲

僕にどこか似た顔の人達が

俯きがちに伏し目がちに

黒い服で次々椅子へ腰かける


揃って座る方向には

壇上に置かれた棺桶と

微笑む僕のモノクロ写真

僕はよく判らなくなってきて


「…あの…?」
「今日は高屋敷君のお葬式。可愛い子だったから、皆が悼んでくれている。親戚一同友人一同善男善女が総出で涙を滲ませている。良いお葬式にしませんとねえ」
「だって、でも、そんな訳…」
「疑うのなら、棺桶の中を覗いたらどうですか?誰がそこに眠っているのか、君の目で確かめれば良い」


僕は壇上への階段を上る

誰も止めない誰も見てない

僕は棺桶の蓋を開ける

経帷子を着た白い体

眼を閉じているけれど

それは確かに僕だった


だけどそうだというのなら

今ここでとても困惑している

僕は一体誰なんだろう?
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