安西先生と遊園地に来ました

来たんだけれど

先生が頑なに鏡の迷路に入ってくれません <br />

「なんではいんないのノリ悪いなー」
「そうやってノリを重視してばかりいるから、学生の悲惨な死亡事故が耐えないんですよ」
「鏡の迷路で何の事故が起きるって言うの?」
「君の顔面がガラスを砕く事故が起きると思いますよ」
「事故じゃないだろ事件だろ!後頭部を鷲掴むのやめてよ!」
「仕方がありませんねえ、そこまで言い張るなら入ってあげます。しかし、どうなったって知りませんよ」
「どうなるかなんて知ってるよ、安西先生が鏡に映らないんでしょ。センセは吸血鬼だから」
「私は人間だと何度も言っているのに」
「ウソつきって何度も言ってるのに…あれ?安西先生?どこいったの…ひどい!入りたくないからって逃げた!?」
(「ここに居ますよ、高屋敷君」)
「へ?うわっ?!な、なんで!鏡の中…?!」
(「だから言ったでしょう。私は人間ですが、それは君が人間だから。でも、私と君は対称の存在で…君は普通の、当たり前の、居て当然の存在。私は異常な、おかしい、居る筈が無い存在。君の反対側にいる幻。だから、私は鏡の世界の存在です」)
「吸血鬼じゃなかったの」
(「違うと何度も言いましたよ。…そら、そっちは鏡ですから右に曲がって」)
「…僕が鏡に映ってない」
(「君の鏡像が私ですから」)
「じゃあせめて僕と同じ動きをしてよ!さっきから好き勝手動いて、僕がどう動いてるかわかんなくなるじゃない」
(「ははは、高屋敷君、右手を上げて御覧なさいな」)
「う?はい」
(「では私は左手を上げましょう」)
「やめろって言ってるのにー!」
(「ああ可笑しい…おっと、そこは直進ですよ」)
「こっち?…あいたっ!?違うじゃんバカー!」
(「騙されるのが悪いのです、お馬鹿さん」)
「は、腹立つ…もう、僕が映らないからどっち向いてるかもよくわかんないよう。センセが物凄くいっぱいいるみたいに見えるし軽く悪夢だよ」
(「君もなかなか腹立たしい」)
「えっと…あ、こっちだ。ここ曲がって…あ!ほらゴールだ。わーいクーリアー!」
(「おめでとう御座います、高屋敷君。そしてさようなら」)
「は?なにが?」
(「君は出られても、私は出られません。ここが何だったかもう忘れましたか?」)
「何って…鏡の迷路でしょ」
(「そうです。…現実に存在する君にとっては、鏡は壁で、進めない場所。だから、迷うにだって限度がある。でも鏡像の私には、鏡の反射の全てが道。道が幾つあるかすら解らない程…ここはまさしく鏡の迷路。鏡像を迷わせ、捕え、逃がさない。呪術の迷い道」)
「…あ…」
(「なので、私はもう鏡から出られません。さようなら高屋敷君。でも大丈夫ですよ、君が私に会いたいなら、とても簡単に会えますからねえ」)

 

 

 

「だから僕、女の子みたいに鏡を持ち歩いているんだよ」

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