安西先生に紹介されたお茶会は 安西先生好みそうな子がいっぱいいて お菓子を齧ってお茶を飲みながら ずっとおしゃべりしています みんないい子たちだけど 僕はそろそろ帰りたくなって 言いだす機会を伺ってる 『あれ、もうお茶ないじゃない。入れてきてあげる。なにがいい?ジュースにする?ミックスジュースはどう?』 「あ、あの、ありがとう…でも僕、もう帰るから」 『なんで?』 『まだいいよ、もう少しいなよ』 『退屈ならゲームでもする?』 『それより秘密の言い合いっこがいいな』 『私オセロ』 「でもホントに、もう帰らなきゃ」 『まだそんなに遅くないから大丈夫』 『はいリンゴジュース』 「えあ、い、今何時?」 『知らない』 『時計持ってないの』 『ねえ知ってる、あの子が好きな子はね』 『残念、その子は別の子にお熱だよ』 『その別の子は誰の恋人?』 「…帰らなきゃ」 『迎えに来てくれる恋人もいないのに』 『もう少し遊んでいきなよ』 『このストロー使う?ぐるぐるで可愛いでしょ』 「安西先生」 『…』 『誰って言ったの?』 『安西先生だって』 『あの子が?』 『ふうん』 「…?」 『残念だけどー』 『安西先生は迎えに来れないよ』 『だからお菓子はどう?一口パイが沢山』 『来ないの方がいいんじゃない』 「なんで?」 『さあねー』 『ほら棒キャンディがあったよ』 『ビスコットは?』 『だって安西先生は、ここにいるもの』 「え?」 『安西先生は帰らないから』 『誰かピアノ弾いてよ、ロンドン橋やろう』 『主催者だもの』 『結婚式ごっこは?』 『誰が賛美歌歌えるんだっけ』 『だから迎えに来れないよ』 『ベールが無い』 『ドレスも!』 『カーテンでいいからさ』 「いるって、どこに?」 『知らない』 『でもいるよ、だって、いなかったら』 『誰?枕を破いたの?』 『僕じゃない』 『私も違う』 『お菓子はどうしてなくならないの?』 『お茶を頂戴よ!』 『自分でやったら』 『ここにいなよ』 「でも」 『そのうち会えるかもしれないしさ』 『ここにいた方がいいんだよ』 『ねえ内緒にするから、君の好きな子教えて?』 『楽しいでしょ?』 『ずっと楽しいから、だから、みんなでここにいようねえ』 「…君、帰ってきたのですか」 「帰ってきたね。別に安西先生が迎えに来なくても帰れるし。あと甘いものばっかりで口疲れたからラーメン奢って」 「ああ、高屋敷君、それだから君は特別のお気に入りですよ」 |