「ああっと手が滑りました」
「ぎゃー!!」
「あ…本当に手が滑りました、まさかこの私が急所を外すとは」
「ふざけんなこのヤロォ…!あががばばばいだたたまともに料理も出来ないのかこの猟奇教師がぁあああ…!!」
「君に言われたくないですね、刑務所並みに臭い飯しか作れない君には一番言われたくありません。そんなまずい料理を作るから刺したくもなるというものですよ」
「いいから救急車呼んでよ…包丁がおいそれとは抜けないくらい深々と刺さってるよ…」
「いや、それより逆立ちしてくれませんか?血抜きをしたいので」
「食肉加工を誰が頼んだ!?うわあ叫んだら血がー!!」
「まあお腹も空いていますし、今から血抜きをしている時間はありませんねえ。高屋敷君が黒焦げにした肉は捨てて、魚料理に変更しましょう」
「わざとやった訳じゃないのに…っていうか救急車」
「うるさいですね、役立たずなんですからせめて静かにしていたらどうです」
「で、でもこのままじゃご飯出来るまでに失血死だよ?」
「包丁を抜かなければそんなに吹き出やしませんよ」
「ええーでもじわじわ出てるし口からも湧き上がってくるしなによりすごく痛いんだけどゴボフッ」
「手間の掛かる子ですねえ本当に。何をやらせても駄目な子です」
「自分が刺したせいで余計手間掛かってるんだよ?」
「腕を出しなさい、輸血パックを点滴で繋げておきます。ちょっとしたお薬も入っていますから痛みもじきに無くなるでしょう」
「それより病院に…」
「ああ、まるで君は施錠されたドアの様ですね、ちょっと鍵を回しても良いですか?」
「安西先生、僕おなかがすいたなあ!」
「すぐ作りますよ。鮭のムニエルと何かソテーでも添えましょう。君が随分食材を駄目にしましたから大したものは作れませんがね」
「もう嫌味はやめてよ、ただでさえ包丁刺さってるのにこれ以上言葉の包丁でまで刺すつもりなの」
「はいはいどきなさい、熱いですよー」
「ぎゃあああああ!!ぶつかる前に言えー!!」
「おかしいですね、魚を焼いたはずがなぜか肉の焼ける匂いが…」
「お、おおおあああ…!もう食欲なんて吹き飛んだよ…?」
「大丈夫ですよ、そんな高屋敷君のためにこの万能薬と名高い×××草をバターソテーにしてあげましょう。その傷も火傷も一口この草を口に含むだけでたちどころに治る筈です」
「そんなゲームの世界の植物を一体どこで採ってきたの?」
「さあ?」
「不安…その辺の雑草であることを願っとくよ…」
「さあさあ出来ましたよ、バケットは取り敢えず二切れ切っておきましたので、まだ欲しければ言って下さいねえ」
「もがが、せめて座って食べさせてよう、運ぶからー」
「ではお願いします」
「左手が火傷で潰れたから、先生の分は自分で運んでよね」
「仕方がありませんね、自業自得と受け止めましょう」
「先生の業で僕が不得になってるけど…それじゃいただきまーす」
「ええ、さぁさ遠慮なくさあどうぞ?」
「わあおいしい、先生は料理上手だねえ。レモンソース?おいしいなあ、さっぱりしてていっぱい食べられそう」
「フランスパンも焼き立てだけあって美味しいですね、まるで君の柔肌の如く…と言いたいところですが、今の君は随分酷い肌です。早く×××草をお食べなさいな」
「嫌だな…」
「君の幸いのために作った料理を口にしないと?それは面白い話ですね、先生そういう話は大好きです」
「フォークを眼球に向けないでよ!食べるからさ!」
「どうぞ召し上がれ」
「うう…ううう!苦い!!青臭い!死ぬ!!」
「良薬は口に苦いものです。そら、もう傷が塞がって包丁が抜けましたよ?」
「え、あ、ホントだ!?火傷の痕もない!!」
「良かったですねえ」
「す、すごい…ホントにゲームの世界みたい…ただ、ゲームじゃないのは、なんか副作用っぽく全身が発熱してることだけど」
「? そんな筈は…おやおや、何ですかそれは?」
「ぎゃああなんじゃこりゃあ!!?変な触手が胸部からー!?!どういうこぎょぼろべぷ」
「ああ、高屋敷君頭が割れて中から昆虫じみた巨大な目が…変ですねえ、こんな効能は聞いていないのですが…」
「はじゅはじゅぺげろぽますぺ」
「んー…しかし、そうですねえ、こんな話は聞いたことがあります」
「ささくますきくかかかかかまぽ」
「マリファナをそのまま摂取して、その為に死んだ人は少ないですが、マリファナをバターで炒めて摂取した人は、かなりの率で死んでいます。油分に溶けやすい成分が関係あるそうで…」
「しゅぐるぶぶぶべぶべぷぺ」
「君のそのメタモルファーゼも、そんな理由ですかね?まあ、これはこれで面白いので大事に飼ってあげますよ。しかし、これから餌は何を与えたら良いのですかねえ〜?」
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