「高屋敷君、結婚しません?」
「誰がアンタみたいな人格破綻の浮気性ド変態と結婚すると思うわけ?」
「いえ、私とではなく…それでも悲しい言い草ですが…ほら、これが結婚同意書です。先方のところはもう記入済みです」
「顔も知らない人と結婚なんてしないよ」
「顔?写真でならありますけど。ああでも、目を閉じていますね」
「どれどれ?……?…なにこれ趣味悪。菊の花敷き詰めるとか棺桶で撮ったみたいじゃん」
「棺桶で撮ったんですよ」
「え?そういう芸術?」
「いや、実際の葬式で」
「…つまり、僕にネクロフィリアやれってことですか…!?」
「いやいやまあまあそう怒らずに、そこまでは言っていませんよ。ただね、死後婚をお願いしようかとこう言っているのです」
「死んでから結婚するってこと?」
「そうですね、割と広い風習ですよ。未婚のまま無くなった男女を死後の世界で添い遂げさせようという、優しい一種のお見合いです」
「ふうん…まあ、そんな嫌な感じはしないけど。でも僕まだ生きてるよ」
「殺せば良いじゃないですか」
「本末転倒って言葉知ってる?」
「手段が目的になるってよくありますよね」
「にじり寄ってくるな!!絶対嫌!!」
「どうしてです?いいところのお嬢さんですよ?」
「やだよそれこそ一般庶民の僕とじゃ合わないもん。っていうかそれ以前に死にたくないんだけどさくるなってば!!」
「折角いい相手を見付けたと思ったんですがねえ…死人相手なら君も汚れを知らずに実を結べると…」
「普通の見合いだったら悪くなかったんだけどね…この人ピーターパンかなにかなのかな」
「まあ、気に入らないなら仕方がありません。殺しただけ無駄骨でしたけど、また誰か見繕っておきますよ」
「ちょっと待って、今なんて言った」
「また誰か殺しておきますよ」
「そっちじゃないやそっちだった!ちょっとー!?」
「次は生前と、半死半生と、死後の写真を持ってきますから安心して下さいね☆」
「やめて僕結婚しないから!生涯独身を貫くからー!!」
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