「♪おんまは みんな ぱっぱか はしる
ぱっぱか はしる ぱっぱか はしる
おんまは みんな ぱっぱか はしる
どーうして はーしるぅー」
「高屋敷君は相変わらず可愛いですねえ、飴をあげます」
「ありがとー」
「よしよし」
「ところで安西先生、その棒っこなに?いい年して拾ったいい感じ棒を手放さないなんていい年して恥ずかしいよいい年して」
「これですか?これは、高屋敷君殴り棒ですよ。高屋敷君を殴る為の棒です。こうやって使います」
「いたいいたい!!やめてやめて!!」
「躾です躾です、虐待じゃありません躾です」
「えーん!いたいっ!!うえーん!いだっ!!」
「あ、折れました」
「そんな固い棒が折れるほど殴らないでよー!」
「三十万かけて作ったのに、案外持ちませんでしたねえ」
「え…ホントにその用途の為の棒だったの…」
「いえ、それは冗談。腐食しないように作らせたのですが…まあ、これくらい短くなった方が君には扱いやすいですかねぇ」
「僕?僕がなにに使うの?」
「んー…高屋敷君でも死体洗いのアルバイトという都市伝説は知っていますよね?」
「安西先生ってそんな話しか出来ないのにどうしてモテるの?」
「顔と金ですよ。それはさて置き、知ってますよね?」
「生涯を懸けて倒すべき相手だね。流石に僕でも知ってるよ、医学生のお勉強のためとかに献体した人とか、そういうのをホルマリンのプールにいっぱい保存しとくお手伝いっていうあれでしょ?都市伝説の代表みたいなお話だもんね」
「はい、それが有り得ないと言うお話はそこら辺のコンビニに売っている本が長々解説してくれているので説明しませんけれど、とにかく存在しないアルバイトですね」
「うーん、やっぱりそうなの?ちょっとはあったような気がするんだけどな、そういう管理意識の高くなかった昔とかさ」
「まあ、その可能性も否定できないですが…例えそうでも、一般に言われるプールに死体を浮かべてそれを棒で突き沈める、という内容は有り得ませんね。ホルマリンは気化し易くて毒性がありますから、そのアルバイトも忽ち死んでプールにどぼんです。何の食虫植物かって話ですよ。有り得るとすればアルコールプール程度だと思いますけど、それでもふやけちゃったりしますしねえ…と、結局解説してしまいました」
「良いんだよ、先生が死体のことに詳しいのはよく知ってるから」
「で、そんな感じに存在しないんですけどね。でも今もこうして都市伝説という形で誰もが信じたがっているのです」
「まあねー」
「ならば、作れば良いじゃないですか」
「は?」
「ホルマリンのプールをですよ。そしてバイトを雇えば良いじゃないですか。そうすれば都市伝説どころか事実として存在することになるんです。何故誰もやらないのか私には解からない。無い物を生み出してきたのが人類の発展ではありませんか、さあ高屋敷君君を雇ってあげますから死体をこの棒で突いて沈めるんです。はいどうぞ」
「いやだよ!ホルマリン危ないんでしょ?!」
「勿論、生身ではね。でもこの宇宙服紛いの全身スーツには酸素ボンベが付いていますのでその心配はありません。安全性の方も金の力で解決しました。ホルマリンも原液の状態では大変高価ですがそれも金の力で余裕です。良いですか、死体洗いのアルバイトが存在しない決定的な理由はね高屋敷君、コストが掛かり過ぎていると言う事なんですよ。しかし私はこと金に関して無限の無駄遣いが許される。だから、その条件の下にこの都市伝説は事実と化せると言う訳です。ああ愉快な道楽です。じゃあ行きましょうか」
「アフリカの難民とかに刺されろ!いやああぁーーー!!」



(「…ううう…ううー!なんかぶにっとした感触がするよぉ、つついてもつついても浮いてくるよぅ!仰向けで浮かれると最悪だよー!」)
「頑張って下さいね高屋敷君、時給一万出しますから」
(「くそうこの不況時には魅力的過ぎるー!っていうかなんで安西先生は宇宙服着てなくても死なないの」)
「想いがあれば大丈夫です」
(「…で、これはいつまでやればいいの?もういいんじゃない?」)
「うーん、私としては今後も継続して貰いたいのですけれどねえ。私が悪戯に解剖して遊ぶ用の死体が尽きるまで」
(「こんな大量の死体でいつまで掛かるのそれは!?」)
「明日までには」
(「…」)
「じゃあ取り合えずこれとこれとこれを引っ張ったり付け間違えたりして遊んできます。サボっちゃいけませんよ」





それから

地獄の鬼役みたいなバイト中に

安西先生はちょくちょくやってきて

死体を見繕って帰って行った

空が白んできてるくらい時間になって

最後の死体を持っていった

その一時間後くらいにやってきた





「お疲れ様、高屋敷君」
(「うん…やっと終わった…もう眠くなった…」)
「ん?何言ってるんです?」
(「え?もう終わりでしょ?死体全部無くなったよ」)
「無くなったなら、補充するものですよ。何事もね…っと」





ボチャン
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