「高屋敷君、何してるんです?」
「料理に決まってるじゃん」
「刻んだスイカと炊き立てご飯を混ぜ合わせるのが料理なんですか?」
「おいしいものを併せたら倍おいしくなるに決まってるじゃん」
「君は家庭科の授業で生ごみの作り方を覚えてきたんですかね」
「失礼なー!」
「授業で思い出しましたけれど、高校の頃君はよく弁当に気を使わず鞄を振り回して登校してきて、中身をぐちゃぐちゃにしていましたっけねえ。あれもどう見ても生ごみでしたよ」
「そろそろ泣くけどいいの?」
「割と喜びますね」
「このドSがあぁ…!!」
「君のその似つかわしくない殺意の顔は可愛くありませんが嫌いではありませんよ。もっと私を憎むと良いでしょう。先生は君の成長を心待ちにしています」
「殺意で済むと思ってんの?この包丁が見えない?」
「よく見えますよ。でもねえ高屋敷君、私はそれでも構わないのです」
「はあ?」
「誰が言ったやら忘れましたが、よく言うじゃありませんか?殺仏殺祖って、ねえ、何でしたっけ?禅でしたかねぇ…そうそう、三島由紀夫や岡本太郎もパロってましたっけ。仏に逢うては仏を殺し、祖に逢うては祖を殺し、羅漢に逢うては羅漢を殺し、父母に逢うては父母を殺し、親眷に逢うては親眷殺せ…ははは、ねえ高屋敷君、私が何を言いたいか解るでしょう?」
「…」
「私を殺して御覧なさい。それも本当にね。君は悟れるほど賢い子ではありませんから、無に近づくより無にした方が手っ取り早い。そら、どうしたんです?私が憎いのでしょう?」
「…」


僕はスイカを刻むのをやめて

逆手に構えた包丁を

安西先生に振りかざし

心臓めがけて振り下ろす





「はい、残念でした」
「ウゴゲキャッ!!?」
「馬鹿ですね、愚かですね、虫けら風情が誰を殺せるっていうんです?君は弱いから誰も殺せやしないんですよ。下等な虫が仏を殺せますか?祖を殺せますか?羅漢を殺せますか?父母を殺せますか?可哀想に、馬鹿ですねえ。君はそうして誰も殺せず、仏の慈悲を請うて地べたに転がることしか出来ないのですよ、高屋敷君?」














「…アンタ、仏どころか悪魔じゃん」
「あれ?もう生き返ったのですねえ」
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