昨日は安西先生と喧嘩別れで帰宅したんだけど いつものことで僕は気にしてなかったのに 安西先生はやけに気にしていたみたいです 「高屋敷君、先生のこと嫌いですか?」 「そりゃまあ好きではないけど…それよりなんか…目が、なんか…焦点ちょっと手前だよ…?」 「それはとても寂しいです。私は君がいないと退屈で退屈で、堪らなくなるのです」 「大変だね」 「高屋敷君は、どうしたら私を好きになってくれますか?」 「惨殺行為を今後一切やらないんなら好きになるです」 「その為になら何でもしますよ」 「ならまず話を聞いてよ!」 「寒いのは好きですか?」 「え、あんまり。じゃなくて、ねえ焦点が…」 「ならば、今から夏にしましょう」 「なに言って…熱い!はい?!暑い!?」 「暑いのは嫌いでしたか」 「嫌いとかじゃなくて…うわ、桜咲いた…うわ…」 「秋が良かったのですか」 「なんでもいいよ!季節を操らないでよこの…神か!」 「神でなくとも季節は操れますよ」 「季節を操れる存在を神っていうんだよ。この人なにで出来てるんだろう」 「それで、次に叶えて欲しいことは?」 「ますます神っぽいなあ。しかも特にないしねお願いなんてー、僕は誠実にいきたいの」 「どうしてです?折角何でも叶う機会ですよ?君に喜んで欲しいのです」 「…僕はねえ、安西先生。センセと会ってからこの方、非日常ばっかりで苦労してきたの。だから普通が幸せなの。わかる?わかんないかなあ、存在が不可思議だし」 「君に諭されるとは」 「第一安西先生にお願いなんかしたら魂取られそう。この悪魔!」 「悪態を吐くとは酷い。そんなに私は君を喜ばせられないのですか」 「まあ、普通に可愛がってよね」 「普通に可愛がるなんて私には分かりません」 「じゃあ病院行こう」 「でも、その代わりにこんなことが出来ます」 「?…あいたっ!?」 僕の頭に直撃したのは 赤い色した飴玉だった カツンコツンと一つまた一つ 空から地面に降り落ちてきて 「君は何味が好きですか?」 「な、ななな…!?」 「ハッカにブドウ、チョコにパイン。サクランボにレモンにイチゴにキウイにどれもこれもいくらでも君の為、私は飴を降らせましょう」 「な、なんで、こんなこと…どうやってるの?!おかしいだろー!!」 「何もおかしくありません。高屋敷君、君は知らないのですか」 「知らないってなにが?!」 「ドロップスはね、泣き虫神様の涙で出来ているのですよ」 そう言って安西先生はメソメソポロポロ泣き出して 飴はいっそう激しく降り出した 僕は謝ろうとしたけれど あんまり飴が強いから 声は届かないしすごく痛くて 転がった飴を踏んで倒れたらもう起き上がれずに そのまま降り続く飴に沈んだ 最後に聞こえたのは 涙声での童謡だった 「♪むかし 泣き虫 神様が… 「…と、いうことになるので高屋敷君、飴を降らされたくなかったら先生に謝りなさい」 「オリジナル紙芝居作ってまで謝らせることじゃないでしょ?!」 |