「ああ高屋敷君、こんな所にいたのですか」
「ほえ、安西先生。メリークリスマスこんにちわ。なんかご用?わざわざ探すくらいの?って言うかよく見付けたね?」
「いや、探してはいません。GPSがありますから」
「…どこに仕掛けたの」
「君の心臓の裏ゲホッゴホン!…君の携帯にね」
「今日携帯忘れたんだよ!なにしてくれてんだよ!」
「君こそこんなクリスマス商店街で何を探しているのです?…靴下?」
「あのね、サンタさんにプレゼント入れてもらう靴下選んでるの。最近の靴下可愛いんですよう、ほらこれとか!顔描いてあるんだよ」
「ああ…よくありますよね、全裸に靴下のみで現われたと思ったら自分がプレゼントだと言い張る人間が」
「ないよ」
「それはさておき、今年も先生から高屋敷君にプレゼントがあるんですよ。保護者の義務ですから」
「ホント?また米とか首輪?米なら実家から送ってきたからいらないよ?首輪もいらないけど」
「いいえ、流石に五年連続で同じプレゼントは芸が無いのでねえ。きっと君の気に入りますよ。だから早く帰りましょう」
「えーでもまだ靴下選んでない…」
「靴下無しにはプレゼントを用意しないサンタなど放っておきなさい、なんなら店ごと買ってあげますからほら帰りましょう。えーと?ここは個人営業ですか?ならこのカードで買えますねぇ」
「帰るからやめて!」


 
「…で、僕のアパートに帰ってきたわけなんだけど、また不法侵入の痕跡があるね。安西先生って僕の了承を得ずにしかこの部屋へ入れないの?」
「驚かせてあげようと飾り付けた行為がそんなに冷めた反応をされるとは思いませんでした」
「このツリーさぁ…でかすぎて上の部屋ぶち抜いてるよね…?」
「いえ上の上の部屋までぶち抜いてます」
「なんでそんなサイズ選んじゃったのさ」
「最初は小さかったのですよ。でも育ってしまったのです」
「プラスチックのツリーが伸びるか!ちゃんと後始末してよ?!工事費とか!」
「分かっていますとも」
「もう、ご近所さんに嫌がらせされたらどうしよう。…あ、そんでプレゼントは?」
「ふふ、ツリーの根元を御覧なさいな?」
「?…?!…え!あれ?!なんか…麻袋だよ!?え、なに、あれ?あれがプレゼント?こわっ!やけにでかいし動いてんだけど!?」
「さてさて何が入っているのでしょうか?開けてみて下さいな高屋敷君☆」
「イヤだよ!肉食動物とか入ってそうだもん!処分してよー!」
「しても良いですけれど…たぶん、君は恐ろしく後悔することになりますが?」
「なんで?」
「だって、あの中に入っているのは君のご両親と飼い犬ですよ」
「………う、うわ、うわあああああ!!?!」
「すごいですねぇ高屋敷君、麻袋を素手で引き裂くなんて火事場の馬鹿力というやつですね」
「父さん!?母さん!?ガラナちゃん!?ねえ!!返事してよ!!」
「あ、大丈夫ですよ。まだ麻酔が効いてるだけですから。起きたら暫く記憶の混同があるでしょうが」
「ホントになにしてくれてんだー!?!」
「何って、クリスマスを家族で過ごさせてあげようという心遣いじゃありませんか。クリスマスとは家族で和やかに過ごすのが一番です」
「…まあ、それは一理あるね」
「そうでしょう?ちゃんと家族パーティーの用意もしてあるのですよ、ご両親が起きたら一緒にケーキを食べましょうね」
「うん。でも安西先生は家族じゃないから帰ってくんない?」


安西先生は物凄く不機嫌そうに帰って行きました

でも普通に自業自得だから死んでも謝らない

つもりだったんだけど

朝起きたら枕元に包丁入りの靴下が置いてあったから

僕は大人しく屈することにしました
 BACK