「♪男はオオーカミなのーよー 気を付けなさーいー」
「ひがあああああ!!」
「高屋敷君たら、ウサギさんらしく可愛い悲鳴を上げてくれませんか?狼のし甲斐がありません」
「せめて比喩で食べようとしてから言えよ!その刃物を下ろせよ食人鬼!」
「じゃあ比喩で食べてから直喩で食べましょうか」
「最悪だぁ!!」
「もしくは逆」
「死者を辱めるな!!こっちに来るなー!!」
「♪年頃にーなぁたなーらー 慎みなさーいー……食べ頃になったなら、包み焼きにしなさいと言いますよねえ。さあ吊るし切りで捌いてあげましょうね高屋敷君ほらいらっしゃい直ぐ来なさい今来なさい」
「行くわけないでしょ!?」
「困りましたね、やはり羊の顔で近付くべきでしたかねぇ」
「心の牙が丸見えだよ!ってゆーかよだれ出てるよ!」
「まあばれているなら仕方がないです。どうせ逃げられやしませんし、ゆっくり調理の準備をしましょうかねえ」
「いーやーだー!!血抜きと称して吊るされて膾切りで長時間苦しまされるのはもういやぁーーー!!」
「…そんなに嫌ですか?」
「当たり前だぁ!!」
「ならば態度で示して下さい。私は人の感情を汲み取ることが苦手なもので、解かり易くして貰わなければ理解出来ないのですよ…ねえ高屋敷君、命乞いをして下さいな。泣いてくれなければ解かりませんよ?君の哀れな姿を見ないと、先生満足出来ないんですよ…」
「こっ…この、ドS…!」
「良いのですよ?私に食い殺されたいのならプライドを捨てなくても構わないですとも。死にたいならね。あっはは!」
「うう……お、お願いします…死にたくない、です…なんでもします、お願いだから、殺さないで…?」
「ふふふ、それで良いのですよ。ゾクゾクしますねぇ…!ああとっても楽しいです、君は本当に可愛い子ですよ」
「くうぅ…上機嫌な顔が限りなくムカつく…!その悪魔じみた笑顔をなんとかする気はないのかこのサディスト教師(ドスッ!)ヒイ!?」
「何だ、やっぱり捌かれたくなっちゃったんですか?残念ですけれどそれはそれで別に悪くはありませんね、じゃあ目玉から穿りましょうか」
「あああごめんなさいごめんなさい!!りんごの芯抜き器は嫌ですごめんなさいもう言わないですごめんなさい!!」
「やりゃあ出来るじゃないですか。続けなさい。ほらほら生殺与奪の御主人様のお靴にご奉仕はどうしたんですか?ちっちゃな舌で綺麗にして下さいよ、タンシチューにされたくないのなら」
「ひぐ…う、ううー…!」
「おやおや、涙で洗ってくれるのですか?気の利く良い子にはご褒美をあげませんとねえ…っと」
「いたっ!やめ…いた、いたいいたい!」
「ああ高屋敷君のほっぺは柔らかくて踏み心地が最高です…やめるくらいなら削ぎ落としてしまいたいくらいですよ?」
「っ…ふぐぅ…やめ、やめなくて、いいでふぅ……」
「おや、良いのですか?痛いんじゃありませんか?」
「い、いたっ…く、ない、です…」
「へえ、痛くありませんか。ならばもっと踏んであげましょう」
「い゛!?いだ、いだいい゛だいい゛だい゛ぃぃ!!頭割れる゛ようぅ!!!」
「本当ですねえ、ミシミシ言ってますねえ?」
「死ぬ、じんじゃ…!…!!た、だすっけっげっ!!」
「死にたくないなら、服従しなさい。君のちっぽけな尊厳とやらをこの私に全て差し出しなさい。そうして初めて、君は生きることを許されます。…さあ、どうぞ?」
「いぃ………っぼ、僕は、人間じゃなくてもいいです…」
「ても?」
「ふぐうぅ…!人間はいやですぅ…豚に、豚にしてください…安西先生の……か、家畜に、してください……うぇっ、うええぇーー…!!」
「それを豚語で」
「豚語?!え、あ…ぷ、ぷぎー?」
「な…何て失礼なことを言うのですか?!やはり死にたいらしいですね君は…」
「わかるの!?違くて、えっと、えと、ぶー?」
「誰が今晩の夕食のメニューを聞きましたか!」
「ええー?!わかんないよ!ぶひぶひ?」
「だから誰が最愛の妻に先立たれ残された愛娘は交通事故で植物状態となり昨日会社をリストラされたばかりの連帯保証人になったために莫大な負債を抱えるガン患者を見事勇気付け世界を統べる真の王に足らしめた言葉を聞きましたかー!?」
「なにその情報量!しかもそんな言葉存在するのかよ!?もーわかんないー!ぶー!ぶー!ぷーぎーぃー!!」
「そんなこと聞かれたって知りませんよー!」
「僕も知らないよ!なにも聞いてないよ!」
「このっ…豚語も出来ずに何が家畜ですか!?高屋敷君、今からみっちり集中講義です!」
「いやだぁー!!いやいやはーなーしてぇー!!うわーん!!」

 


―――――――――――――――

 


「…」
「…」
「…高屋敷君」
「…ぷきー」
「ケントデリカットの出身州は聞いてません」
「…」
「…高屋敷君、君は…返事すら出来ない君は…」
「…」
「豚語の才能が、ゼロです」
「そんなことないー!!十三時間勉強して返事も出来ないなんてありえないー!!」
「あーあーもう良いです、無理です、調教師免許第一級の私でも君は無理です。解散しましょう、ほら晩御飯奢りますから」
「いやー!!まだやる!せめてこんにちはとさようならが言えるまでやるのーぶきー!ぶひー!」
「は、破廉恥なことを言わないで下さいよ!」
「言ってないー!!」

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