「ちょっと、ちょっと安西先生!待ってってば!」
「ん…高屋敷君?何です、先生はもう行かねばなりません」
「あのね、僕はこのコマ休みでセンセの講義取ってないけどね、友達は取ってるの。で、その友達に聞いたんだけどね」
「はあ」
「先生、講義中にいきなり「先生帰っても良いですか?」って言って、結局誰も返事をしてないのに帰ったんでしょ。それどうなの」
「どうとは?」
「教授としてどうかって聞いてるの!!僕が捕まえなきゃそのままその高級車で帰ったんだろ!!それでも教師かアンタ!!」
「ふう…やれやれ、高屋敷君たら随分私を低く見ているのですねえ…何の理由も無く帰りたくなったから帰る訳ではありませんよ?理由があって帰るのです」
「え?そうなの?」
「これでも社会人ですよ」
「そ、そか…ごめんね、僕はまたどうせ講義に飽きたから帰るんだと思って…」
「良いのですよ、高屋敷君が真面目な子で先生嬉しいです」
「それで、なんのご用事で帰るの?」
「家でりんごジュース飲みながらゴロゴロしたくなったからです」
「殺すぞテメエエェェ!!」
「口の悪い君は嫌いです」
「行かせん!行かせんぞ!この大学の生徒として行かせてたまるもんかー!う゛ー!!」
「ちょ…引っ張らないで下さいよ…犬と引っ張りっこしてる場合じゃないのですから…」
「だれが犬だー!!不良教師!ばか!」
「不良教師はりんごジュースなんて飲みませんよ…ああもう本当に喉が渇いてきました、いい加減にしないと君の喉笛を噛み千切って喉を潤しますよ?」
「ばかー!いやに決まってるでしょばかー!うわぁーん!!」
「ああ高屋敷君、泣かないで下さいな。涙はしょっぱいから飲んでも仕方が無いです」
「早く教室帰れよう!絶対家には行かせないんだからねー!!」
「………たとえ、君でも、私の邪魔をするなら…」

『お取り込み中失礼します、安西先生』

「う?…あ!生徒会長!安西先生が講義抜けて帰ろうとしてるんだよ!一緒に怒って怒って!!」
「ふん、会長君が私に逆らう訳が無いでしょう?さあ会長君このへばりついている小動物をケージに仕舞ってきて下さい。私は帰ります、断固としてりんごジュースが飲みたいのです」
『はい、安西先生。御命令通りに』
「あのねー!そうやってセンセを甘やかすのいい加減にしてよ!逆に教育に良くないってわかんないのー?!」
『俺には安西先生を教育するような権限は無いからね。暴れないでくれないかな?傷を付けるのは安西先生も好まないだろうから』
「ばかばかばか!!会長なんか嫌い!安西先生はだいっきらい!!もう知らないんだからー!!」
「知らなくて結構。さ、帰りますかね」
『安西先生、申し訳ありませんがお待ち下さい』
「うん?何か?」
『学長が呼んでおられます。恐らく、講義を抜けたことでお怒りかと』
「…くっ…」
「やーいばーか!怒られればいいんだー!」
『差し出がましいですが、まだ講義終了までは時間があります。今からでもお戻りになられるのが賢明ではないかと思いますが』
「…」
「ほらほらなにしてんのー?早く行きなよう!学長センセに怒られるよー?」
『宜しければ、七階の大教室までお供致します』
「………い」
「え?」
『…何と仰いましたか』
「ふ、ふふふ…!愚かしい愚かしい!この私が何を恐れると言うのですか。そうですよ、別に私がサボった訳じゃありません。講義は、いえ大学自体が今日はお休みです、だって謎の大天災がこの一帯を滅茶苦茶にしてしまうんですからねえ!!」



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「…会長ー」
『高屋敷君。どうかしたかい』
「僕もお片づけ手伝うです…」
『そうか、ありがとう。なら、箒で掃いて貰えるかな?瓦礫は俺が片付けるからね』
「はーい」
『ガラスもあるから気を付けて』
「うん。…ねえ会長?」
『なんだい?』
「安西先生、こんなことして余計怒られるとは思わなかったのかな」
『…いや、この件については俺が責任を取るよ』
「過保護!」
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