「こんにちは高屋敷君、夏休みですね」
「あれ安西先生。そうだね、暑いねー」
「朝顔の観察の調子はどうですか?」
「やってないよそんなの、小学生かっ」
「え?やってないのですか?」
「観察どころか育ててもいないよう」
「嘆かわしいですねえ、そんなことだから変わり朝顔が途絶えてしまったのです。先生悲しいですよ」
「変わり朝顔?」
「ああ、そういえば高屋敷君にも水をかけたら朝顔のように伸びませんかねえ」
「質問に答えろ!そして人の身長をバカにするな!」
「変わり朝顔というのはですね、江戸時代に流行った朝顔の交配遊びです。変化朝顔とも言われますが、例えば花弁が薔薇の様になっていたり、色合いが変わっていたりとどれ程珍奇で美しくなるかを競っていたのですよ。今は廃れてしまいまして、当時の種は殆ど残っていませんが…最近園芸趣味の方がまた新しい朝顔を作っているそうですよ」
「ふうん、先生は相変わらず変なものが好きだね。それも一種の奇形趣味だし」
「そんなことを言っては園芸の殆どがそうなってしまいますよ?」
「そりゃそうだけど。…そんなことより今気付いた。後ろに連れてる子達なに?」
「何とは酷い。私と君との遺伝子の結晶ではありませんか」
「そんな覚えはないですー!今度はなにをしたか言えー!!」
「だから、君と私の遺伝子を掛け合わせて交配させて出来た子供ですよ。可愛いでしょう?この子は私にそっくりですが、もう二人は君にそっくりですね」
「三人も作ることないでしょ…」
「いやですねえたか屋敷君、文系の君とて生物の授業を取ったでしょう?メンデルの法則ですよ」
「?」
「遺伝子の組み合わせは三種に別れます。優性のもの、劣性のもの、優性だけど劣性を隠し持つもの。つまり、この子達もその通り。どうやら私の遺伝子の方が劣性だったようですね。分裂気質は概ねそうです、同じ分裂と重なれば暴れだす…」
「わかんない!僕遺伝のとこはわかんなかったもん!!」
「じゃあ、この子達をあげますよ当然の君と狂気の私。その子は三人。一人は狂気で一人は当然、残りの一人は当然に見えて狂気。二人は直ぐに解りますけど、一人は少し時間が掛かるでしょう。それじゃあ、可愛がってあげて下さいね」





押し付けられたその子達を三人一緒に遊ばせた

僕に似た二人は玩具で遊んでいたけれど

先生に似た一人は玩具を壊して遊んでた


お菓子を取りに部屋を出た隙に

先生に似た子は僕に似た一人を殺してた

もう一人の僕に似た子も一緒になって殺してた
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