「安西先生ー」
「はいはい、どうしました高屋敷君。棒状の物を拾って大学に入ってくるなと何度も言ったはずですがねえ。棒状の物を振り回したいだなんて、なんの潜在願望なんでしょうかね」
「僕ね海行って来たの。そこで拾ったんだよ。あげるね」
「…要らないと言いたいのですが、言ったら泣くでしょうし…ありがとう御座います。ふむ、節くれ立っていて太く長いですねぇ、成る程こういうブツになりたいのですね君は」
「あのね、そういうカッコいいの拾いに行ったんだよ。友達が熱帯魚飼ってて、その水槽に入れる流木拾うの手伝ったんだ」
「ああ…泳ぎに行ったのではないのですか」
「足だけ入ったんだけど踝まで漬かったところでもう引っ張られたからやめた」
「お盆ですものね。しかし熱帯魚ですか、なかなか面白い趣味のご友人がいるのですねえ」
「僕もやろうかな!青いのとかいっぱいいて綺麗だったよー…って、なに涎垂らしてんの」
「いやその君はうっかり屋ですから。うっかりサーモヒーターの温度を間違えて煮魚を作ってしまえば食べ放題だなあと」
「変な寄生虫に寄生されろ!」
「大丈夫、寄生虫も茹でれば単なる蛋白質です」
「…」
「君も茹でれば変質した蛋白質です」
「そういうのはせめて非常時だけにしてよ」
「はいはい、解りました。…ところで高屋敷君、先生まだお昼を済ませていないので、大変空腹なのですが」
「どこが非常時なんだよ学食行け学食!飽食の時代に好き好んで禁忌を犯すなって言ってるのに!」
「何を怒っているのです?君もまだなら一緒にどうかと思ったのですが?」
「え。あ…あー、そうなの?」
「はい」
「ホントに?」
「はあ」
「そう?そっか…うん、まだ食べてないです」
「なら行きましょうか。試験の評価付けも一段落したところですし」
「うん!」
「いらっしゃい、奢りますよ。何が良いです?」
「僕ねーハンバーグ定食ー!!」




「センセの分も食券買ってきたよ、はいどーぞ」
「ん、ありがとう御座います。…おや?ハンバーグ定食はやめにしたのですか」
「うんドリア食べたくなっちゃったから。えへへ、おなか空いてきちゃった。おばちゃん僕ドリアお願いしますぅー!」
「私は刺身定食で…あと」
「ぐえっ!?あぐぐ、苦しいよなにー?なんで襟掴むの、え?!ちょなんで持ち上げんの!?」
「これ、煮付けにして下さい」
「煮付……だ…騙された!騙されたー!!やっぱり食う気でつれてこられたー!!いぎゃああああああ!!!」








「…うん、やはり腕のいい方が作る煮付けは違いますねえ。ちっとも煮崩れしていませんから、熱帯魚並に鑑賞に堪える煮付けです

 おまけに、大変美味しいです」
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