がらら


「安西先生こんにち…わー!?」
「やあ高屋敷君こんにちは。君もお風呂に入りますか?」
「なんでだよ!なんで学校の教授室にお風呂を作るんだよ!どっかで見たよこの光景!!」
「何処で見たのでしょうね?」
「もーこんなことしたら部屋に置いてる本とかしけっちゃうじゃない。しかも本格的なミルク風呂だし…なんで急にお風呂なの?」
「あー…エリザベート・バートリ婦人くらい、君も知っているでしょう?」
「え?女の人から血を抜いてそのお風呂に浸かってた人だよね。それが?」
「はい正解。…では、問題です。牛さんの牛乳や女性の母乳、そういったお乳は何から出来ていると思います?」
「なにって言われても…」
「難しかったですか?血から出来ているのですが」
「ふえ?」
「『血』だから『乳』なんですよ。一つお利口になりましたねえ、高屋敷君」
「……」
「…ああ…本当に良いお風呂です。若返りそうなくらいにねぇ」
「…え?」
「はい?」
「え、これ、母乳?」
「そうですよ」
「ぎゃああああ!!!」
「何故そう叫ぶのです、私は若い女性を人形に抱かせて刺し殺したりしていませんよ」
「たとえそうでも恐ろしいよ!薄めてないんでしょこれ?」
「百パーセント、搾りたてです☆」
「何人のお母さんから搾ったんだ!?こんだけ搾り取ったら赤ちゃんの飲む分無くなっちゃうよぅ!」
「優しい子ですね高屋敷君。でも大丈夫、全員降ろしてますから」
「いやーいやーもういやー!!」
「とても温まりますよ?高屋敷君も入れば良いのにねえ」
「絶対絶対入らない!!この楊貴妃!早く片付けろー!!」
「君は本当に潔癖ですねえ」
「センセが薄汚れ過ぎてるの!もう僕付き合ってらんないよう」
「汚れていますか、風呂に入っているのに」
「そういう意味じゃないって解るでしょ。はたくよ」
「では一緒に入るのは諦めますから、背中の一つでも流して下さいな?」
「やだ…触りたくない…」
「お菓子買ってあげます」
「いいよ」
「君、いつか誘拐されますね」
「黙って洗われる!…んしょ」
「ああ、気持ち良いですねえ」
「僕はあんまり気持ちよくない…」
「君だって生まれた頃は飲んでいたものですよ?」
「この出所の赤ちゃん達は飲むことも出来ずに死んだんだろ!?」
「あはは、高屋敷君は切り替えしが上手いですねぇ〜……おや?」
「え?」
「これはこれは…ふふ、生まれもしなかったくせに頑張りますねえ」
「……お湯が……じわじわと…赤く…」
「太鼓腹から引き摺り出されて血塗れになった当てつけですかね?」
「うわあああ水子の霊が!水子の霊がー!!僕悪い事してないから助けてー!!」
「何ビビッてるんですか高屋敷君、血に血が混じってるだけじゃないですか」
「アンタはなんでそんなに落ち着いてるの?!いつまで入ってるんだよ出ろよ!!」
「そんなことより、ねえ高屋敷君…」
「なんだよ!」
「私、風呂上りはフルーツ牛乳派だったんですけれど、たった今からイチゴ牛乳派になりましたよ☆」
「その状況でどういうセンスして…ばっ!?飲むな!飲むなぁーーー!!!」

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