今日のレポート資料調べは全部終わったから

帰ろうと大学を一歩出たところで

タモで野良猫を追い掛け回してる安西先生を見つけました


バカじゃないの


「なにしてんの安西先生…」
「ん?ああ、高屋敷君ですか。もうお勉強は終わったのですね」
「僕は終わったけど、センセは今の時間冬休み特別講義あるよね?教授が講義サボるのやめなよ」
「良いのです、課題を置いておきましたから。終わったら提出して帰れって言っときましたしね」
「その割に講義人気あるんだよなあ…何でなんだろ、単位ゆるい訳でもないのに」
「一遍通りなおじさん先生とは違いますよ☆」
「だからって教授が講義ほっといてタモ振り回すのはどうかと思うよ。つーか、ホントになにしてんの?」
「猫を捕らえているのです。可愛いから」
「…じゃあ、そこでモゴモゴ動いてるでっかい袋の中には…」
「ミチミチに☆」
「楽しそうだね、センセ」
「はい、とても」
「…一段落したらどっかケーキ屋さん行かない?」
「良いですよ。もう少し待って下さいね」
「あ、猫袋はお店に持ってけないからね」
「!」
「当たり前でしょ、食べ物屋さんなんだから」
「じゃあ行きません」
「なんでさーおごってよー」
「せっかく捕まえたのに持って行けないなど馬鹿な事がありますか」
「おいとけばいいじゃない、あとで帰ってくるんでしょ?」
「嫌です、今愛でたいのです」
「小動物バカ」
「黙りなさいぶりっこショタ」
「誰がぶりっこだ!」
「大学生男子がケーキ屋に連れてけなんて言うとでも?」
「じゃあ三十路も見えてきた大学教授が猫追い掛け回してるのはどうなんでーすかー」
「私は良いのです。イケメンは何をしても許されるのですから」
「うわその顔ムッカつく!ムカつくのにイケメン!死ねっ」
「ふん、気が済むだけ吠えなさい負け子犬君?」
「………」
「…ん、あ、何してるんです高屋敷君?…ちょ!」
「わー五十匹くらいの猫が一斉に四方へ散っていく!壮観壮観!」
「…高屋敷君…」
「あはっ、安西先生てば愕然とした顔もカッコイイねっ♪」
「最低ですよ君…」
「いつもは僕の台詞なのにねっ♪じゃあ猫袋も空になったところでケーキ屋さん行こうねー!」
「意気消沈とはこのことです…折角集めたのに…」
「え、あえ?あわ、泣くことないじゃん!」
「…くっ…」
「やばー本気で泣かせちゃった…」
「ぐす……」
「うわーどうしよう、三十間近の大学教授泣かせちゃった!しかも理由が猫を逃がしたってなにそのキュート感、なにやってるんだろう僕、センセハンカチいる?」
「いりません」
「あ、泣き止んだ」
「猫の恨みは猫で返せとハムラビ法典に有りました。この燃える恨みは猫で晴らしましょうか…」
「ないよそんなの!ハムラビ法典を自分の都合で書き換えるのやめてよ謝るから!あ…ちょ、うわあああ麻袋チクチクするよ詰めないでーーーーー!!」



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『猫喫茶のにゃんこワールドへようこそー!お客様はお飼いになられている猫ちゃんもお連れでしたか?』
「ええ。この子なんですが、お腹が空いているようなのでご飯の注文をお願いしますね」
『勿論です。カリカリとウェットタイプの二種類が御座いますがどちらになさ……?……あの』
「はい?」
『ええと、お連れになっているのは…』
「猫です。だからキャットフードを出してあげて下さい。ウェットだとツナ缶みたいなので、カリカリが良いです」

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