「あ、高屋敷君」
「あー安西先生。偶然ですー、センセも晩ご飯のお買物?」
「いや、それは良いのですけれど。君、後ろ振り向いちゃいけませんよ」
「ふえ?」
「たぶん向いたら死にます。ドッペルゲンガーがいますから」
「……またまたぁ、そんなこと言って恐がらせようと…」
「でしたら振り向いたらどうですか?じゃあ私はこれで…」
「いやああぁ〜ごめんなさい無理です出来ないです行かないでぇ〜!」
「はは、恐がりさんですね。でも大丈夫ですよ?要は見なければ良いんですし…あ」
「なに?!なに!?あってなに!!」
「いえ、先程より近づいてきたなと」
いやあああ!!!
「ああパニックにならなくても…大丈夫ですよ、ニコニコしてますし。ほら手を振ってくれましたよ。可愛いですね、君にそっくりの良い子です」
「やめて描写しないでなんとかしてどっかやって助けて!」
「え〜?私としては是非捕獲して色々…ああ、いや冗談ですよ?泣かないで下さいドッペル君」
「安西先生の傍にいれば安心な気がしてきた。でもやめて」
「まだ怯えていますよ。もしかしたら君より打たれ弱いかも知れませんねぇ」
「まあ僕だって怯えるけどね。……いひゃ!?!?」
「おや可愛らしい、相当怖かったのですねえ?高屋敷君の背中にしがみ付いたりして」
「え…え…や、マジだった……た、たた助け…!」
「マジだと言ったじゃありませんか。あと可愛いから助けません」
「だ、ちょ、死ぬ、死ぬんだよ!?見たら死ぬんだよ!?」
「見えてないじゃありませんか」
「触ってる触ってる!!震えてるの分かるもん!つーかそろそろその晩ご飯を見る目を僕の背後に向けるのやめてあげてくんない!?」
「これは失礼」
「まだ震えてるけどね。…え?あ?な、なに?!なにすんの!」
「ほほう、ドッペル君、高屋敷君に目隠ししてあげるのですね。何て気の聞く優しい子でしょう、先生感動しちゃいました」
「ええー…いらん世話だよう…」
「高屋敷君、どうしてそんな意地悪を言うのです。ドッペル君が可哀相だと思わないのですか」
「だ、だって」
「ほら泣いてしまいました…」
「えあ…ご、ごめん」
「…許してくれますって」
「解るの?喋んないのに」
「大体解りますよ、笑ってくれましたからたぶんそうなのでしょう。これで君も死ぬことがなくなった訳ですし捕か…いや、家に招いても良いですよね?」
「また震えだしてるけど」
「そうですか?私にはそう見えませんね」
「いや…」
「さあ二人ともいらっしゃい、今夜はエビグラタンを作ろうと思いましてねえ」
エビグラタン!?行く!!」
「ドッペル君も?…そうですか、では風邪をひかないよう早く早く帰りましょうか」


―――――――――――――――


「わーいグラタングラタン!…と喜びたいところなんだけど、この黒絹の目隠しのせいでさっきから色んなところにガンガンぶつかってるんだよね。痣が全身にやばいことになる」
「仕方ないじゃありませんか、死にたいなら外してあげますけれど」
「それはやだよ」
「なら我慢なさい。…おや」
「え…」
「おやおやいや可愛いですねぇ、ドッペル君たら高屋敷君の手を引いてあげるなんて本当に良い子です」
「あ、ありがと…」
「いやあ先生引き続き感激しちゃいました、仲良しと言うのは良いものですね。ほらグラタンも焼けたようですよ?席について仲良く食べましょうねえ」
「あ!すごいいい匂いがする!!食べる食べるいただきまーす!!」
「はい、おあがりなさい」
「ぎゃああーー!!」
「どうしたと言うのです高屋敷君…少しはドッペル君の大人しさを見習ってくれませんか?食事中ですよ」
「火傷したー!!手をグラタンの中に突っ込んだー!!目隠しがー!!」
「やれやれ…」
「最悪最悪どうやって食べれば…あ?あ、あー…あーん」
「ん?ああ、食べさせてあげるのですか。本当にドッペル君は良く気の付く子ですね。まるで双子のようです」
「グラタンすごい美味しい!ありがとドッペル君」
「それは良かった」
「ねえでもなんでドッペル君って喋らないんだろ?…あーん」
「さあ…君が情報の受信を出来ないから、彼は情報の発信が出来ないのですかねえ…」
「まあなんでもいいんだけどさ、美味しいし。…あーん」
「そうですね、私も可愛いから何でも良いです。そうです、君達はずっと一緒にいれば良いですね…高屋敷君はドッペル君の口になり、ドッペル君は高屋敷君の目になってあげれば良い。何の不都合も無いでしょう?」



そうして僕らは二人で一人

確かになんの不都合もないけれど

これは結局

どちらが本体になるのかな?

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