「♪Down, down, down to Mephisto's Cafe…」
「そういや最近カフェとか喫茶店行ってないなー、お金無いし」
「ん、行きますか?奢りますよ」
「えーいいんですかぁ?なんかねだっちゃったみたいで悪いなー♪」
「高屋敷君たら、そういうことはもうちょっと可愛い顔で言いなさいな。それにね、奢ってやると言われたら遠慮なんかせず飛びつくようにして嬉しがって見せる方が可愛げがあるってもんですよ」
「甘やかされ歴は伊達じゃないねえ安西センセ」
「ではもう一度。カフェに連れて行ってあげましょうか?奢りますよ」
「ホント!?ありがとセンセ、僕嬉しい!早く行こー♪」
「はい合格、ではきちんとコートを着て行きましょうね。手袋とマフラーも忘れずに…君は耳あても付けなさい」
「うんっ」


―――――――――――――――


「…寒くありませんか、高屋敷君?」
「んーちょっときっついですー…今日は風あるし、雪めっちゃ深いですよう!埋まるー」
「まあ寒いと傷みませんし」
「え?」
「頑張って下さいな、もう少しですから…ほらあそこです」
「あれ?…なんか時代を感じさせるというか、端的に言うと古めかしくて妙に格調高くてぶっちゃけ現代的センスで言うと暗いっていうか」
「良いから入ってごらんなさいったら。雪は払ってからですよ」


カチャ カランコランカラー…ン…


『いらっしゃいませ、お二人様でしょうか?』

「ええ」

『ではこちらへ…』

「…なんか不思議ー、店員さんも大正時代みたいな制服だし。センセはよくここ来るの?」
「割とね。ほら、雪を払ってからにしなさいと言ったでしょう?そのまま座ったら雪が染みますよ」
「んえ。はーでも寒かった!温かい物飲みたいなー」
「私は紅茶にしましょうか」
「僕ココアにするです。ねえケーキも頼んでいい?これがいいな」
「どうぞ。……ああ、すみません。注文構いませんか?私は紅茶でこの子にココアと…何でしたっけ?」
「チョコレートガナッシュお願いしますー」

『畏まりました暫くお待ち下さいませ』

「…高屋敷君、最近どうですか?」
「最近?別に普通だよう。先生は?」
「年末ですし、忙しいことは忙しいですねえ」
「…ねえ高屋敷君、雪が溶けたら廃墟探険に行きましょう」
「へ?」
「私の知り合いに廃墟マニアがいましてね。この近くに良い廃墟があると教えてくれたのです。だから、行きましょう」
「廃墟…って、行ってどうすんの?」
「どうすると言われると困ってしまいますが…まあ、雰囲気を楽しむものですよ」
「よくわかんなーい」
「行けば解ると思います。だから、ね?行きましょう高屋敷君」
「うーん…そんなに行きたいならついてったげてもいいよ」
「本当ですか?嬉しいです。でも気を付けて下さいね廃墟探険は厳密には不法侵入ですしねぇ」
「えー?」

『お待たせ致しました、こちらヌワラエリヤで御座います。こちらココアとチョコレートガナッシュで御座います。ごゆっくりどうぞ』

「…変な名前の紅茶!」
「美味しいですよ?」
「あ、ケーキおいしー。…ところでさー、昨日僕が女の子だったら安西先生と付き合うかを考えてた」
「冬休みに随分不毛なことやってますね。…で、結論は?」
「絶っ…対に!付き合わない!!」
「…そんなに力を入れなくても良いじゃないですか…」
「やっぱさーお金も外見も二の次だよね!センセ見てると超そう思う。結局性格が一番大事だよ、男は優しくなくっちゃ全然ダメー。僕は優しい男を目指してこっと!」
「言ってくれますねぇ…私のどこが優しくないというのですか、こんなに本場仕込みの紳士だというのに」
「紳士は人を殺さないし援交なんてしないし。…このココア、ちょっとキャラメル入ってるんだね。おいしー」
「それは個性ととって貰いたいですね。一体何が不満なんですか?花束が週一では足りませんでしたか?フランス料理よりイタ飯の方が好きでしたか?洋酒のケーキよりレースの様なクリームのショートケーキが良かったですか?そろそろ手を握って欲しいですか?次のデートは白馬で迎えに行きましょうか?」
「だから、それを男に言うのやめたら?」
「んー、ですが他の恋人は今のところ全員年上なんです。年下何人か捕まえますかね」
「いや僕は恋人じゃないけど、その浮気性も問題だね。もうセンセもいい年じゃん、結婚しないの?」
「君がしてくれるんですか?」
「しねーよアホか!…ねえそのスコーン一個食べていい?」
「いや、君が女の子だったら。どうぞ」
「なんだ仮定の話かあ…うーん、最初に言ったけど今のまんまなら絶対ヤだね」
「どこを直したら良いんですか?」
「…直さなくていいところを上げた方が早いかな…」
「そんなにひどいとは思いませんけれど」
「ううん、ひどいよ」
「では、直さなくていいところとは?」
「顔と金。あとは全部」
「それはひどい。…これでもいじめずに純粋に可愛がっている時もある筈ですが、それも駄目なのですか」
「ボンボン育ちのせいだと思うけどー、ちょっとやり過ぎなんだよね。アンタどこの王子様なのさ」
「我儘ですねぇ」
「僕は一般常識を教えたげてるの」
「考えてみて下さい高屋敷君、こんなにも美形の私に一般常識を超えたお姫様をして貰える。それは幸福な非日常であり辛い現実を忘れさせる御伽の世界。つまり、言うなれば私はディズニーランドです」
「…なんかホストみたい」
「失礼な、誰が食品持ち込み不可で園内の飲食店は馬鹿高くて量も少ないボッタクリの金儲け主義の夢が欲しけりゃ金払え主義ですか」
「自覚してんじゃん!ギャルゲーの主人公みたいな髪型しちゃってなにさー!!」
「へえー、攻略されたいんですか?」
「されるか!ジゴロプレイのくせに」
「君の為なら、一生懸命フラグ立てしますよ」
「いらないよ」
「寧ろエロゲ」
「最悪だよ」
「…気付けば随分居座ってましたねえ」
「あホントだ。ねー僕お腹空いちゃったんだけど、ここってご飯系もある?」
「ありますよ。…ああ、そうそうこの店、持ち込み可でしてね。おまけに食材なら調理もしてくれるんですよ」
「………この喫茶店に入る前さ」
「はい」
「なんかこう、食材を心配するような発言してなかった?傷むとか」
「はい」
「でも先生手ぶらだし、コートの内になにか潜めている訳でもないよね」
「はい」
「じゃあ、食材って、もしかして」
「はい」





「…すみません、お会計お願いします…あ、残った肉はお持ち帰りで」

 BACK