ロッカーに置いていたプリントを取りに来て

折角学校来たんだし帰らないで図書室に行こうかな

と思って廊下を歩いていると

向こうから安西先生がふらふら歩いてて

僕に気付くとスタスタ近付いて来てこう言った


「完全に暇です」
「…仕事しなよこの不良教授…」
「高屋敷君こそ冬休みの課題もせずのこのこサボっているではありませんか」
「僕そんなことしないもん。プリント取りに来たんだもん。安西センセとは違うもん」
「ああそうですか、それは偉いですね。ふん」
「そだ、僕図書室行こうと思ってたんだけど、センセも暇なら行く?」
「図書室?ふむ…悪くないかも知れませんね」
「じゃーいきましょー。予約してた本返ってきてるかなあ?」
「返っていると良いですね」


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「返ってなかった…」
「まあまあ、そうがっかりせずに。楽しい本は他にも沢山ありますよ?」
「…うーん…」
「ほら御覧なさい、この本なんてハードカバーで四隅には金属鋲、重さは約一キロあって撲殺するのには最適の書物ですよ」
「用途を誤るな!本は読むものだ!!」
「おやおや…しー、ですよ高屋敷君」
「あう」
「それに、ここに有る本は全て読んだものですしね。ページを捲るのも今更です」
「全て?…図書室の全部?ウソ、だってうちの大学図書室でっかいので有名じゃん」
「そりゃあまあ、大学生までなら読む量も限られるでしょうけれど。私はもう27才ですし、それだけ時間が有ったらここ分くらいの本は読み終わるものですよ」
「十年も年の差ないよ?」
「十年あれば市立図書館七個分は読めますよ」
「そうかなあ?!」
「静かになさいったら…本棚ドミノで押し潰しますよ?」
「…」
「しかしそうですね、話せないのもつまりませんし談話室に行きましょうか。あそこならお茶とソファーがありますしね」
「談話室?ここのこと?」
「ええ、読む本を選んでらっしゃい。私は先に入っていますから」


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「…センセー?いる?」
「ん、持って来ましたか。何にしたのです?」
「はらぺこあおむし」
「…高屋敷君…」
「む、なにその反応。じゃあ安西先生はどんな本が好きなの?」
「そうですねえ…ファウスト伝説を扱った古典が好きですよ」
「ファウスト?名前は知ってるー」
「お話してあげましょうか?」
「うん」
「では…確かこの図書館にも絵本がありましたから持っていらっしゃい」
「はあーい」

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