がらら


んきゃー!!
「おやどうしたんですか高屋敷君、発狂したのですか」
「ストレス!ストレス!超ストレス溜まった!!それも安西先生のせいで!!」
「何かしましたっけ?まだ何もしていない筈なのですけれど…はっ!?まさか十年前から温めていたあの計画が…!」
「まだってなんだ…ってええ?!十年前!?なんの計画!!?」
「あ、違うみたいですね。何でストレスが溜まったのですか高屋敷君」
「え…じゅ、十……んと、あのね、そこで同級の女の子四人に捕まって、安西先生の笑顔の素晴らしさについて一時間強語られました!!サラウンド音声システムで!!」
「それはご愁傷様☆」
「あああ良い笑顔で微笑むなぁ!!殴るぞ!?」
「いいえ、殴るのは私の方です」
「は?なに言ってん(ドゴキャ!!おべはああぁっ!!?
「高屋敷君、笑顔というものは本来闘争心の表れだったのですよ」
「いたーいいたいー!!…へ?なんのこと?」
「んー…ちょっとこっちいらっしゃい」
「なにー?…あたたにゃにひゅるんでひゅかー!」
「ほら鏡を見て御覧なさい。こうして口角が吊りあがるという事は、牙を向く行為なんです。だから、笑顔も本当は相手への攻撃態勢を示す筋肉の動きだったのですよ」
「いたたー…もう、それはいいけど引っ張りすぎだよう」
「笑うのは身体に良いなんて話がありますけれどね、全く何処まで本当だか…性悪説でも信仰してるんですかね」
「でも笑うと楽しいし、見てるほうも楽しくなるじゃない」
「あー…高屋敷君、ダイナマイトスマイルって知ってます?」
「ダイナマイトスマイル?」
「私も何かの小説でしか読んだことがないのですけれどね、例えば、自閉症の子供が何の意味も無く起こす…新生児の引き攣れ笑いと同じものだと思いますけど、その笑顔のことをそう呼ぶんだそうですよ。多分虚構でしょうけど、そのダイナマイトスマイルとやらは、何の意味も持たない分原始の笑顔に近く、とても無垢であるから美しいだなんて描写がなされていましたっけねえ」
「はあ…」
「やってみませんか」
「嫌だよ!」
「まあまあ、もしかしたら君も女子大生に噂されるような笑顔が手に入るかもしれませんよ?」
「いやだよ!人為的な方法で自閉症になんかなりたくないよ!」
「自閉症?自閉症になんかしませんけれど?」
「え?だって…」
「顔の筋肉に電極を埋め込むのですよ。スイッチ一つで電気が流れて勝手に筋肉が収縮と弛緩を行い素敵な純然たる笑顔が手に入る。ああ良いですねえ、是非とも観賞用にしたい。そんな訳で高屋敷君、暫く眠って下さいね☆(ドゴッ!!)」
いぎゃっ!?!…ドサ)」



そうして僕に付いた笑顔の仮面

先生の手にある押しボタン一つで

僕の顔は意思を無視して勝手に動く

口角が持ち上がり

それは自分でもとても綺麗な笑顔だと思う

でもちっとも楽しくない

笑いながらこんなに不快な気持ちになるんだから

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