「ああ高屋敷君、居た居た…ちょっとこっちいらっしゃい」
「ふえ?安西先生。なになにー?」
「大したことじゃありませんよ、事故に合って貰うだけです(ドゴチャッッ!!)」
「あげへべっ!!?」



―――――――――――――――



「…そろそろ起きても良い頃何ですがねぇ」
「う…うう……」
「おや」
「あ゛、う……?」
「おはよう御座います、高屋敷君」
「あれ…僕、なんで…?」
「車に刎ねられたのですよ。覚えていませんか?」
「そうなの…?……ダメだ、なんにも覚えてないです…」
「けれど手術が成功して良かった…随分ヒドイ怪我でしたから、一時はもう駄目かと思いましたよ」
「うん…ありがとう先生。でも、なんか…ぼーっとして…よく考えられないし、なんか…なんか……わかんないけど、なんか変…?」
「ふむ…後遺症かも知れませんね、もしくは人工臓器の適応問題とも考えられますが」
「人工臓器?そんなの使うほど、ひどかったの?」
「ええ、殆どバラバラに近いくらいでした」
「そう…」
「しかし検査では問題無かった筈ですが…まだ慣れていないだけということなのでしょうか」
「わかんない…」
「…まあ、何にせよ君が意識を取り戻せて良かった。体の傷はもう治っていますので、今日から日常に戻っても大丈夫です。もしそれで動いてみて、違和感を感じるところがあったら直ぐに教えて下さい。その時に対応しましょう」
「…うん、わかった」
「立てますか?まだふらつくのでは…」
「ううん、大丈夫ですよぅ。走るのはムリっぽいけど、ゆっくり歩くなら大丈夫」
「そうですか、では中庭を散歩してくると良いでしょう。鈍った筋肉のリハビリにね」
「ん…じゃあ、少し歩いてくるね」
「はい行ってらっしゃい。気を付けて



 …ふふっ」




いやあああああーーーーーーー!!!
「おや…もう誰かに会ったみたいですね」
「いや!いや!いや!うわああああああ!!?」
「…さてと…」
「安西先生!安西せんせいぃ!!」
「どうしました高屋敷君!一体何が…?」
「ば、化け物!!化け物がいるの!!中庭だけじゃないの、病院中化け物が…!!」
「化け物?何のことです?しっかりして下さい高屋敷君、落ち着いて…」
「本当なの!化け物が!化け物が人間の言葉で!!」

『高屋敷君?どうしたんだい?俺が何かしたかな』

「ひぃっ!!いや、来るな!!化け物!!」
「会長君…?彼がどうかしましたか」
「会長?どこが?化け物だよ!!」
『お早う御座います、安西先生。見舞いに来たのですが、これは一体…?』
「私にもさっぱり…」
「先生!先生!!なにしてるの?!逃げなきゃ!!化け物だよ!!」
「…会長君、すみませんが今日は…」
『その様ですね。俺に出来ることがあればお声を掛けて下さい。…失礼致します』
「ええ…」
「はっ…はっ、はっ……」
「高屋敷君?」
「なんなの?なんなの?怖い…窓の外にもいっぱいいる…気持ち悪い…」
「何がいるんです?高屋敷君」
「化け物…化け物…気持ち悪い、内臓みたいな…塊が動いて、変な瓦礫みたいな奴もいて…喋るの……なんなの?怖いよ、先生、怖い…」
「……あれは…私には人に見えますが」
「人!?どこが?!あんな気持ち悪いもの…!」
「高屋敷君…」
「なに?なんなのその目…僕がおかしいって言うの?!」
「そうは言っていませんよ。お願いですから落ち着いて…もしかしたら手術の後遺症かもしれません」
「後遺症?」
「視神経か…いえ、脳の映像認識領域に障害が残ってしまったのか…」
「じゃあ…じゃあ、あれは人間なの…?」
「君以外にとっては」
「…いやだ…いやだ、いやだいやだよ!!あんな気持ち悪いものが人間?!嘘だ嘘だ嘘だ!!」
「高屋敷君!しっかりして下さい!」
「だって!!だってあんなもの見て…」
「…私はどう見えているんです?」
「え?」
「人間が化け物に見えるのなら、私もそう見えている筈です。しかし君は私に怯える様子も無いですし…」
「…安西先生は…安西先生は、人間だよ」
「私が?」
「うん…どうしてだろう…」
「…さあ…解りませんが、良かった。大丈夫ですよ高屋敷君、他の人が恐ろしくても、私は恐ろしくないのでしょう?それなら私が傍にいてあげます。だから君は寂しがらなくても……高屋敷君。高屋敷君?何故逃げるんです?そっちは化け物がいるのでしょう」
「化け物の方がマシ」
「どうしてです?人間とはいえ君には化け物に見えるのでしょう?」
「…そうだよ」
「ならば何故」
「だって…だって人間が化け物に見えるのに、安西先生は化け物に見えないって事は」
「…」
「安西先生、人間じゃないんだ」
「…ちっ」
「あー舌打ちしたやっぱりそうなんだ!!いやー化け物いやー!!だれかー!!だれかこの化け物外に出してぇーーー!!」
「折角君に私以外の人間がグロい生き物に見えるようにして私にだけ懐くようにして遊ぼうと思ったのに…何故こんな時だけ頭が回るんでしょうねえ…」
「なんだよやっぱりアンタのせいかー!!どんな独占欲だ!!発狂寸前だったわ!!」
「あーあ、つまりません…また次の手を考えなければ」
「次の手考える前に直せ!戻せ!」
「はいはい分かりましたよ…まったく面倒臭い…」
「自分が悪いんでしょ!?…あのさ、一つ聞いときたいんだけどさ?」
「はい?」
「あのね、今僕は人間が変なものに見えてるけど、それは【安西先生を除外した人間】が化け物に見えてるの?それとも…本当に【人間】が化け物に見えてるの?」
「………手術室、こっちですよ高屋敷君」
「答えて!?答えて!!この質問で安西先生が人外かどうかが決まるんだから…ってちょっと?!ちょっとーー!!

 BACK