学校でクリスマス会をやるらしいので来てみたら

大ホールで安西先生が

その無駄なテノール美声を完全に無駄遣いして

おぞましい替え歌にした賛美歌を口ずさみながら

五十メートルくらいあるツリーに飾り付けしてました


「安西セーンセー!おはよーございまーす!」
「ん?おや高屋敷君…ちょっと待って下さいねー、今梯子を降りますからー」
「はーい」
「よ…っと。改めまして、おはよう御座います高屋敷君。クリスマス会への参加に来てくれたのですか?」
「うん。大学にもなってクリスマス会とか、カトリック校でもないのになにやるのか不思議だったし。来て見れば案の定安西先生は怖い歌歌ってるし、ホントになにやるの?」
「…あ、会長君が新しいオーナメントを持ってきてくれましたよ。君も一緒に飾り付けしませんか?」
「あからさまに話し逸らしたね」
『オーナメントの追加を持って参りました、安西先生。おはよう、高屋敷君。君も飾り付けするかい?』
「これ人骨だよ?オーナメントってもっとキラキラしてるんじゃないの?」
「こっちに金箔を貼った人骨もありますよ」
「なんで無駄に豪華なの?」
『こっちはまだ赤いけれど、クリスマスらしいからそのままにしているものだよ』
「ちゃんと加熱処理して表面に残った肉を取ってくれないと、僕死臭で吐きそうだよ」
「仕方がありませんねえ、弱い子です…ほら、こっちのジンジャーマンクッキーでも吊るしなさい。食べちゃいけませんよ」
「ほえ、これ本物なの?心配しなくても死臭で食欲無いけど」
『本格嗜好が良いと安西先生が仰ったからね。このツリーも生木なんだ』
「また我侭言ったんだ…でも凄い量あるね、誰が作ったの?」
『何分急なことだったから、奴隷を増やしてね』
「クリスマスクソ食らえー!」
「お手伝いしてくれるのですか?してくれないのですか?してくれないなら奴隷を…」
「手伝う手伝う!だからいいから!ね!?」
「ありがとう御座います、良い子ですね高屋敷君。モールを飾り付けてくれますか?」
「うん…え、上から?」
「ええ、梯子を上ってね」
「え、ええ〜…嫌だな僕。高いとこ怖いもん」
「馬鹿のくせに?」
「バカじゃないもん!!いいよ登るよそれでいいんでしょ!?」
「頑張って下さいね☆」
『大丈夫だよ高屋敷君、梯子は下で支えていてあげるから』
「あうう、絶対ですからねー?」
「あ、私は他の準備がありますから失礼しますよ。二人で飾り付けを頑張って下さいな」
『はい、安西先生。お任せ下さい』
「いってらっしゃーい…」
『…御行きになられたみたいだな…大丈夫かい?高屋敷君』
「あうーやっぱり怖いよ会長!ちゃんと押さえてくれてる?ツリー倒れたりしない?」
『大丈夫だよ、随分大きなモミの木だからね。悪いけれど、もう少し登ってくれるかな』
「えー?!うう…ここくらい?」
『うん、丁度いいかな。そこなら腰掛ける程度の枝もあるだろうし』
「腰掛ける?」
『そうだよ。見えないくらいの奥に入った方がいいな』
「え?え?なんで?ちょっとー!なんで梯子外すの?!降りれないじゃん僕ここに座ったまま!?」
『降りない方がいいんだ。それと、声を出さない方がいい。動かずに息を殺してしっかり隠れていなくちゃならない』
「なに?なに?隠れる?なにから?ねえ待ってよ会長…!!」
『クリスマス会に参加させてあげられなくて、ごめんよ高屋敷君。でも、これも君の為に、ひいては安西先生の為なんだ。この儀式日に殺したら、いくら君でも生き返るのには来年まで掛かるだろうからね』



ツリーの中に隠れて僕

震えながら惨劇を見る

赤い服着たサンタクロースに

見付からないよう息を止める

血の臭いに噎せかけても

音を立てずに隠れてる



「…会長君、あの子を何処に隠したんです?」
『申し訳ありません、安西先生。お答えするのが良い結果を齎すとは思えません』
「ふうん?折角プレゼントだって持って来たのにねえ」
『私見ですが、恐らく高屋敷君が米と首輪をプレゼントに欲しがっている可能性は低いと思われます』

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