ガララバシャン!!


「殺すぞ安西この野朗!!」
「こんにちは高屋敷君、随分なご挨拶ですね。どうかしましたか?」
「おまっ…なにしらばっくれてんの?!人のこと舐めてる!?」
「物理的になら今は舐めてません」
「いや物理的にじゃないし今まで物理的に舐められたこともないし!!つーか聞け!」
「はあ、何でしょうか」
「ここ一ヶ月くらい、僕のお菓子になにか盛ってたでしょ」
「何かとは?」
「…女性ホルモン剤とか」
「あ、バレました?じゃあ効果出てきたんですねえ。君は元が女性的なので効果が出てこないのかと心配していたんですよ」
「殺すぞっつってんだろうが!!」
「おしとやかにはならないみたいですね」
「目的はなに?!相当納得いく理由じゃないと続きは法廷で話すことになるからな!!」
「いやあ、君に複乳があるかなあと思いましたねえ」
「…ごめん聞こえなかった、もいっかい言って」
「君に複乳があるのかどうかが気になったもので、女性ホルモン剤を摂取させました」
「うん。とにかく一つずつ問題は片付けていかないとね。えーと、複乳ってなに?」
「大体において女性にしか発覚し難いものですが、乳腺が本来あるべき場所以外にも存在している場合にこう呼びます。乳腺があっても乳頭が無い場合もあり、また膨らみも現れない場合が殆どですので、大抵妊娠時に乳腺が急発達し母乳が造られることによって腫れに気付き、そこで初めて自分が複乳の持ち主だったと気付くのが普通ですね。奇形の一種ですが珍しいことではなく、寧ろ複乳のある方の方が多いそうです。勿論、通常の乳房程の見かけになるものは珍しいですけれど。場所としては両脇に存在するパターンが多く、それ以外は稀です。男性は第二次性長期における乳腺の発達がなく妊娠もありませんから、複乳があったとしても気付く方はほんの一握りですね。男性で乳頭まである複乳というのは事例が極端に少ないですから」
「うわ…」
「何か?」
「もうホントやだ…今なにも見ずにすらすら答えたでしょ……どんだけ変態なのこの人」
「人に誇れる程度には。…で、どうでしたか高屋敷君?複乳らしき膨らみが現れましたか?」
「死ねばいいよねマジで。…現れてないよ、って言うか通常の場所も乳房隆起は認められないよ」
「そんな馬鹿な」
「ホントだよ」
「…つまりあれですか?君は貧乳だと?」
「そうなんじゃないのーどうでもいいけどー」
「では君の為に集めたBのブラは一体どうすれば良いのですか」
「燃やせそんなものはー!!まだ持ってたのかよ!?」
「あーあーつまらない面白くない役立たず。第一通常の乳腺が発達しないなら複乳の乳腺も発達しないのでしょう、ならばあるかどうかも判らないじゃありませんか。ああ役立たず」
「ウザいなあ…っていうか謝ってくんない?面白半分に女性ホルモン投与された身にもなってくんない?」
「…ん?…そういえば君、どうしてホルモン剤に気付いたのです?乳房隆起もないし声の高さも元から高いままですし、丸っこい体つきも元からじゃありませんか」
「ほっといて!!…気付いた理由は言わないよ」
「起たなくなったんですか」
「殺してやる!!その品性下劣な口を二度ときけないようにしてやる!!」
「はいはいすみませんでした。まあ投与を止めれば自然に治りますから、気にしなくて良いですよ」
「そりゃよかった!ああ目出度い!!」
「あ゛ーまた暇になっちゃいましたねえ…もうこの年の瀬に暇で暇で…」
「仕事すればいいのに。っていうかホントに暇潰しの興味本位で人にホルモン剤投与した訳?人権団体に訴えるよ?」
「うん?…いや、まあ…ほら、代理母犬が欲しかったんですよ」
「意味わかんない」
「犬は沢山子供を産みますから、お乳も沢山あるでしょう?だから、君もそうだったら犬にしてお母さん犬になって貰おうと思ったのです」
「う?え?なになに、センセのウチ子犬いるの?」
「はい、四匹ほど」
「ええーホント〜!?見たい見たいー!見に行っていい?」
「常々思っていますけれど、君は頭が悪いですね」
「なにが!?」
「君が幸せなら何も言いませんがね。だってもう忘れてるでしょう」
「なにを?」
「…。見たいですか、犬」
「うん!」
「じゃあ連れてきますよ」
「あれ?ガッコにいるの?」
「はい。その箱の中に」
「これ?開けても良い?」
「どうぞ。逃がさないようにね」
「わーいどれどれー…ん?……ぎゃー!!」
「どうしました?」
「ここここれ!!人!!人間の赤ちゃん!!でも犬耳ついてる!!?」
「耳は形成外科手術で作ったやつですよ」
「え、あ、で、でも人間!!犬じゃなかったの?!」
「何言ってんですか高屋敷君、そりゃ人間ですよ。犬に人間の母乳与えても育つ訳無いでしょう?」
「お前がなに言ってんだよマッドサイエンティストー!!」
「煩いですねえ、母乳も出せない駄犬が吼えるんじゃありません。全く、君が役立たずだからこの子達が飢え死にしてしまうではありませんか」
「いや粉ミルク買ってきなよ!なんであえて母乳に拘るの?」
「高屋敷君、母乳で育った子と粉ミルクで育った子は将来的な身体発達や免疫機能がはっきりと違ってしまうのですよ。勿論母乳の出ないお母様方は仕方ありませんが、出せる場合は飲ませてあげる方が絶対に良いのです。ここまで言っても飲ませないつもりなのですか君は?それでも母親ですか」
「あああ良識人ぶりやがってあああこの変態殴りたい!!あとどこからツッコもう?!」
「母乳母乳言ってたら喉が渇いてきました。早く出して下さい」
「よし!この変態の脳ミソに割り箸を突っ込むことから始めよう!!」
「冗談ですよ高屋敷君、幾ら私でも赤ん坊の取り分を横取りはしませんよ。…しかし本当に出ないのですか?」
「出ないって言ってるでしょ!?」
「じゃあやはりこの子達は飢え死にですね」
「ぐぬうっ!この話に出てくるキャラ唯一にして最後の良心の僕になんて暴言を!」
「この話?キャラ?…まあ良いですけど、だってどうしようもないでしょう?」
「いやだから粉ミルク…」
「あ、そうだ食べれば良いんですね」
「え!?なにを?!それはクリープをコーヒーに入れずそのままベロベロ舐める的な?!」
「いや赤ん坊を」
「中国人か!!犬耳ついてるから四本足で歩かせて椅子じゃないから食べるのか!!」
「何言ってるんですか?」
「僕が聞きたいわ!!その子達をこっちに寄越せ!」
「え〜?だって犬耳ついてますよ?人間として君が育てるのは無理かと…」
「先生に育てられるよりはマシだね」
「…人間としての君が育てるのは無理かと…」
「二回言わないでよ。…え?あれ?」
「犬を育てるには、やはり犬です。人間を育てるのも、やはり人間です。では、犬人間を育てるのは…?」
「……あ、あ、あ、あの、僕、やっぱりそんなに自己犠牲真に溢れたいい人間じゃ…!!」
「女性ホルモン投与も継続します、それでも複乳が見付からなければ適当に移植します、母乳も出るように色々改造します、だから、この子たちのお母さんになってあげて下さいね、優しい高屋敷君☆」
「いやあああああーーーーーーーーーー!!!」

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