「…高屋敷君、何故部屋の隅っこで陰気に何やらブツブツ呟いているのです?」
「…どうせ僕なんて生きる価値の無い人間なんだ」
「全くその通りだと思います」
「うわーん!?!」
「何泣いてんですか豚みたいな鳴き声で。まさかこの私が慰めてくれるとでも思いましたか?」
「人として慰めるでしょ普通!この冷血漢!!」
「嫌ですよ、役に立たない人間は火炎放射で焼き払ってしまいたいと常日頃から思っているんですから。と言うか実行してますけどね」
「人じゃない!えーん安西先生のバカー!!慰めてよー傷ついた僕をー!!」
「うわウザッ…こっちに来ないで下さい無能が」
「うえーん!!」
「来るなっつってんですよ!」
「ぎゃう!?」
「ちっ…蹴り飛ばされなきゃ解らないとは本当に頭の悪い…」
「あーん!!うわーん!!うえぇーーーー!!」
「ああうるさいったら…頭が痛くなってきました。静かにしなさいな」
「もういやもういやもう人生なんてイヤー!!」
「頭割りますよ」
「ひっく、ひぐ…割ればいいじゃないぃー…」
「…やれやれ、仕方ない…何があったか聞いてあげますよ」
「ホント?!」
「嫌々ですけれど」
「あのね!あのね!最悪なんだよ!今日は最悪な日なの!!朝から滑って血が出るほど転ぶし!もう冬休みで講義無いのに学校来ちゃったし!もうロクなことないのー!!」
「怪我?どこです、見せて御覧なさい」
「う?ここ…」
「…」
「ぎゃ痛ぁ!?なんで蹴るの?!」
「ムカついたんですよ。この真冬に半ズボンで歩いてたらそりゃ怪我しますったら…というかなんで半ズボンなんです?女子高生の生足より寒そうです」
「洗濯間に合わなかったから…だって冬場は乾かなくて…って傷がまた開いた!血が!!」
「ドクドク流しなさい、全くぬくぬく平和なところで育ってきたガキが。それだけで最悪ってどれだけ順風満帆な人生送ってきてんですかほらほらほら」
「痛いいたいいたい!!傷口踏まないで!?膝の皿見えちゃうからー!!」
「見えたら綺麗に洗って酢の物でもつんもり盛ってあげますよ」
「それ痛いよ!やめて!いやそれより今踏むのやめて!!肉取れてる肉ー!!」
「泥まみれで不味そうな肉です」
「あー骨見えた骨見えた!!」
「貧弱な骨ですね」
「なに?!なに?!どうすればいいの!?どうすれば拷問をやめてもらえるの?!」
「謝りなさい。今日が最悪の日だというのを撤回しなさい」
「わかったわかったごめんなさい!!今日は最悪じゃないです最高の日ですぎゃー!!」
「ふん、それで良いのですよ」
「あああ…もうズル剥けだよう…やっぱ今日は最あ
「ん?」
「なんでもないです鉄パイプの出番は無いです!!」
「そうですか、それはよかった」
「うー…それにしてもセンセ、今日は機嫌悪くない?」
「別に」
「悪いじゃん。どうしたの?…あたた、包帯巻かなきゃ」
「何でもありませんったら。別に仕事で失敗なんてしていません」
「失敗したの?」
「しました」
「そうなんだ…よしよししてあげようか?」
「結構です」
「そう?…ところで、なんの失敗したの?」
「…」
「あわ!いや言いたくなきゃいいんだけどー!!」
「…管理していた人食い虎の檻の鍵を閉め忘れて…」
「え?」
「今、街が大パニックです」
「…!!?」
「まあ良いです。私は痛くも痒くもありませんし…虎もお腹一杯食べられて嬉しいでしょう」
「いやっ…あの…!」
「何です?君も街に行きたいのですか」
「行きたくありません!!」
「そうでしょうね。…良いですか高屋敷君、さっき君は人生最悪の日だと言いましたけれど、確実に今虎に食われている人間共の方が最悪の日を過ごしていると思いますよ」
「うん…そうだね…僕が悪かったです、ごめんなさい」
「良いのですよ。謝る必要はありませんから」
「え?」
「今から最悪の人生になれば良いのです。虎に食い殺されるより最悪な…」
「ひっ…い、あ、安西先生その手に持ってる巨大な下ろし金は…!?」
「よく言うじゃありませんか、生きたまま少しずつ身体を削られるのが一番惨いってね…さあ高屋敷君、今日を最悪の日にするために、一緒に頑張りましょうねえ〜…」
「いや…いやああああああーーーーーー!!!
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