「高屋敷君は、首吊りごっこなんてやりましたか?」
「…?…なにその趣味の悪い遊び?」
「知りませんか。名の通り首を吊るのですが、直ぐに自分で紐を切ったり、一緒にやっている 人に支えてもらったりするのです」
「ばっかじゃないの?なにが楽しいのそれ」
「あー…そうですね、いつも君は首を絞められているだけだから解りませんか…」
「へ?」
「こう、紐や手で首を絞められるのがとても苦しいのは知っているでしょう」
「いつも絞められてるからね、安西先生に。顔面破裂しそうな感じがして大っ嫌い!」
「しかし、首吊りの場合はどういう訳か、そんなに苦しいものではないのです。寧ろ意識を失 うことへの快感が伴う…だから遊びとして成立するのですよ。自慰的なものなんでしょうがね 」
「…ふーん」
「やりたくなりました?」
「!?ばばばばっかじゃないの!そーんな不謹慎な遊び僕がやる訳ないですー!」
「ふふ、やりたいくせに…素直じゃありませんねえ」
「やりたくないってば!」
「ああ、そういえば似たようなものに失神ごっこがありましたね。これは君も知っているのじ ゃありませんか?」
「知ってるよ、なんか…深呼吸をしてから揺さぶったり壁に押し付けて貰ったりするんでしょ ?そしたら失神するんだよね。…楽しいのあれ?」
「何だ、それもやった事無いのですか?やめなよ男子ぃ〜とか言ってたんじゃないでしょうね えこの女顔」
「止めはしたけどそんな言い方してませんー!バカにしてんの?!」
「馬鹿にしてますよ?全く、本当に女の子ですね君は。ちょっとは危ない遊びもした方が良い ですよ…最も、女の子を目指しているなら別ですけれど…」
「ふざけんなぁ!!そんな訳あるか!あーあーいーですよやってやろうじゃんか!?首吊りだ ろうと失神だろうとドンと来いや!!」
「………へえ、そうですか………」
「…?!」
「じゃあやってみましょうか。大丈夫、先生医師免許持ってますし、失敗して死なせはしませ んよ」
「え、あ…ありがと………あの、さっき凄い怖い笑顔しなかった?」
「ん、何のことです?」
「……気のせいかな…?」
「と思いますが。…さあまずはどちらにしますか高屋敷君?首吊り?それとも失神しましょう か」
「え…両方やらなきゃダメ?」
「半人前の男で良いならねぇ」
「うー…ひきょおものぉ…」
「ほらほら、早く選びなさいな。男の子なんですからズバッと行かなきゃ駄目ですよ」
「えと、えと、じゃあ…失神から」
「ぬるい方から選びますね、腰抜け君?」
「うっさいうっさい!怖いもんは怖いのほっといて!」
「ま、好き好きですけれど…では早速いきましょうか、はい深呼吸」
「あうー………すー…はー…すー…はー」
「…(ドン!!)」
「おぐうへえぇ!?ぐええええ!!?」
「叫んではいけませんよ高屋敷君、息を止めなければ…」
「しぬしぬしぬしっしんのまえにしぬぐげげげげげ!!」
「変ですねえ、全然失神しないじゃないですか…何故息を止めないのです」
「アンタが押してるから肺の空気が…っ!!」
「…ん?」
「……」
「おやおや、ようやく気絶ですか」
「………」
「…いや、これは……死んでいますね」
「………がっはあ!!おごぶは!!」
「復活しましたね」
「臨死体験!臨死体験だったよ!!失神じゃないよこれ!!」
「似たようなもんじゃないですか」
「全然違う!つーかさっき殺さないって言ったのに!もうやめるー!!」
「まあまあ待ちなさい高屋敷君、次は殺しませんから☆」
「一度殺した時点でもう信用できないね!放せ!」
「ふうん、じゃあ殺します」
「すいませんでした。謝ります。続けますからその金属バットを置いてください」
「おやおや、土下座なんてしなくても良いのですよ?無理を言って遊びに付き合せているんで すからねえ」
「そんなことないです。安西先生と遊べて嬉しいです。だから釘バットも置いてください」
「高屋敷君は優しいですね。それではお言葉に甘えて失神ごっこを続けましょうか」
「うう…僕の人生はなんでこんなに受難ばかりなんだろ?」
「ん?人生が不満ですか?ならば今すぐ終わらせましょうか受難の人生を?」
「さあ首を引き絞ってください安西先生!首吊り健康法って昔流行ったよね!?」
「ええ、骨の歪みが改善されるそうですよ。因みに吊る為の縄ならもうここに準備してありま す」
「…ああ…」
「さあさあさくっといきましょうねえ高屋敷君、ほらほら台に乗りなさいさあ早く」
「ひい!い、いや…ごっこでしょ?ごっこだよね?助けてくれるんだよね?」
「勿論助けますとも。先生が日本刀を持っているのが眼に入りませんか?君が首を吊ったら直 ぐに縄を切ってあげますから何の心配もいりませんよ」
「ホントだよね?ウソじゃないよね?」
「殺さないと言ったでしょう?良いから輪のところに首を突っ込みなさいと言ってるんです」
「えぐっ…うう、ホントだよね…?」
「そうそう、それで良いのですよ。次に君がやるのはその台を蹴ることだけです。その後は全 て私がしてあげますからねぇ…大丈夫、何の心配もいりません」
「でも、だって怖くて足が…」
「…ちっ(ドガコオォン!!)」
「ぐがおっつ!!?おご!!ぎひいぃ!?!」
「あーあー良い眺めですねえ高屋敷君…絞め殺される豚みたいな声上げちゃってねえ?」
「いぎぃぃぃ…がはっ!がぐっ!!」
「でも悪くないでしょう?先に言った通り、首吊りってとっても気持ちが良いそうですから」
「けは、も…ムリ、切…ってえげへぇっ!」
「…んー…」
「早…ぐ、も、気、失う…し……!」
「…高屋敷君、これは何でしょう?」
「げへほっ!…?…」
「ふふ…君の字って女の子みたいに可愛いですよねえ?その特徴のお陰で筆跡鑑定も誤魔化せ そうですよ」
「ぐあ…が、ばっ…!それ、遺、書……?!」
「何、心配など要りません。最近はこの不景気で首吊りが大流行ですしね、誰も怪しんだりし ませんよ。もしテレビ屋が来たら現代社会の心の闇と世界恐慌についてで適当なコメント付け てあげますから、君は安心して自殺しなさいね☆」
「他殺だ他殺ー!!畜生自殺を装った他殺じゃ保険金下りねえんだからなこのやろー!!」
「おやまだ叫ぶ元気が…君は体重軽いですからね、この漬物石でも括りつけることにしましょ う」
「不自然すぎるだろ!!あ、や、やめてマジでちょ…おうぎひいぃ!!?
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