就職指導室に来ると

安西先生は居なくて

置手紙といなりずしがあった


『出掛けてきます
 お腹が空いたら食べなさい』


ありがとセンセ

でもまだおなか空いてないし

あとでにしてこの漫画読もっと


ガララ


「ただいま帰りましたよ…ん?」
「あ、おかえり安西センセー」
「…高屋敷君、どうしてこんな食べ方をするんです」
「ふえ?」
「あのですねえ高屋敷君、君ももう子供みたいな食べ方はおやめなさい。油揚げだけ食べるな んて、酢飯が泣いてますよ?」
「…食べてないよ」
「はい?」
「食べてないよ、僕食べてないもん。あとで食べようと思ったし」
「…」
「なんでそんなになってるかは知らないけど、僕じゃないよ。センセが意地悪してるんじゃな いの?」
「…高屋敷君…」
「なに?」
「そのべたべたの手は何です?」
「え?」
「はあ…何故すぐばれるような嘘を吐くのですか?質が悪いですね…いつからそんなに悪い子 になったのです」
「…うそ…なんで?なにこれ…僕ここに寝て漫画読んでたよ?ホントだよ?食べてないよ!? 」
「まだ言うのですか、悪いお口ですね」
「違…違うよ、ホントに……ウソじゃない…違うの…」
「いらっしゃい高屋敷君。お仕置きですよ」
「いや!離して!僕じゃないもん!!離してったら…離せよこの野朗!!!
「つっ…!?」
「はあ、はあ、はー…はー……」
「高屋敷君…?」
「触るな…触るな…」
「…痛いじゃないですか、咬むなんて…」
「……あえ?」
「…」
「あれ?先生、どうしたの?血…」
「…やれやれ」
「どうしたの?大丈夫?痛くない?どうしたの?」
「そういえば少し前にこっくりさんなんてやりましたっけね。憑かれたんですか、君」
「へ?」
「ああ、面倒臭い…やはりやらなければ良かった。結局面倒を被るのは私なんですから、割に 合わないったら無い…」
「憑かれた?僕が?狐に……あ!」
「うん?」
「そういえば、最近毎晩半分になって枕元に出てくる狐に油揚げあげてた…」
「馬鹿ですか君。同情こそ付入られる隙だと知りませんか?オレオレ詐欺に引っ掛かるタイプ でしょうね」
「狐憑きとオレオレ詐欺を一緒にしないで欲しい」
「おや、狐に口を取られましたか?…まあ良いです、所詮は使い道も無い低級の狐ですからね 。とっとと食い殺すのが良いでしょう」
「と、取ってないよ!僕狐じゃないよ!食い殺すってなに?!」
「それは勿論、狐の嫌いな犬にですよ」
犬!?
「はい」
「え…じゃあ先生犬神筋の人?犬神筋の人って周りの人不幸にするんでしょ…」
「馬鹿にしてるんですか君?何故この私が小汚い犬畜生なんかにしか憑かれないと思うのです 。滑って転んで起き上がれなくなったペンギンの神に憑かれた方がまだマシですね、可愛いか ら」
「よ、弱そうだけどそれでいいの?…でも、じゃあ犬神筋じゃないんだ!?よかった追い出さ れずに済む…あ」
「憑かれた方が馬鹿なら憑く方も馬鹿ですね」
「う…ち、違う、僕は憑かれてなんか…」
「ふん、確かに私は犬神筋じゃありません。しかし犬神筋の人間を犬に持ってるんですよ」
「え…」
「犬畜生如きにしか守られない者達くらい、従えられなくてどうします。犬笛無くとも私が必 要とすれば一族朗党駈けてきますよ。この前のように私の力だけで畜生狐を叩き割ってやって も良いですが…それじゃあ詰まりませんからねえ」
「た…助け……出る、から…この人間から出るから!」
「もう遅いですよ」
「ギャン!!?」
「はは…愚かですねえ獣風情は、高屋敷君の身体に入っているからといって手加減して貰える とでも思いましたか?」
「あう…痛い、ごめんなさい…助けて…」
「ほら鳴きなさいコンコンと!鳴いて犬に居場所を知らせなさい、食い殺されるために鳴きな さい。そら、そら、そら!!」
はぎゃう!?ぎゃうん!ぴ…ピュィー!!キャオーーーン、キャオン! キャオーーーーンキュィー!!」
「おや、コンコンと啼かないのですね。初めて知りました。…犬共が来ませんねえ…ああ遅い 」
「いぬいや!!でもアンタの方がもっといやあ!!ギョブヘッ!?痛ぎゃひいい!!」
「さてさて、私が虐め殺す前に犬神が来るかどうか…どう思います、狐君?」
「いやだいやいや来て来て早く来て殺される踏み潰される助けて早く早あわぎゃウキャウグ ブゲエェッッ!!!
「…ああ、今頃来たんですか?もう狐は潰しちゃいましたよ、役に立ちませんねえ本当に…四 国から北海道?五秒あれば来れるでしょうがこの豚。七十五匹もいて一匹も役に立たないとは …狐と同じに潰してやりましょうか」
「………」
「……いや、待ちなさい。逃げるんじゃありません。踏みませんから待ちなさいったら
「………」
「面白い遊びを思い付きましたから手伝いなさい。そこにいる子を咬むのです…解りましたか ?」
「………う…うう…?」
「おっと…ほら、完全に起きる前に咬みなさいな」
ぎゃあ?!!痛あ!?痛いイタイイタイ!!なになになんでなんで犬だ 痛いよ咬まないでよ!!」
「ああ高屋敷君、可哀想に……おかしいですねえ、犬に咬ませてもまだ狐が抜けないだなんて 」
「咬むの?…ぐいぃっ!!いっ、あいひぃ!!咬んだら、かんだらぬけるの?!」
「そうですよ、そうですよ、高屋敷君…」
「まだ、まだ抜けないの…?痛いよう、もう死んじゃうよう」
「私も出来る限り努力はしているのです。…もう少しですから、頑張って」
「あい゛ひッッ!?!痛い!痛ぁ!!やめて、もう咬まないでぇ!」
「おや…狐が鳴いたようですね…あと一息です、さあもっと咬んでやりなさい!」
「ぎゃい!!ぐぎゃへぅぇ!!あい゛いい!!!」
「…ふふ」
「いや、いや、いやああっ!!狐じゃない!僕狐じゃないよぉ!!」
「嘘ですね、この狐が。…いや、それとも君は高屋敷君ですかね?そうだとしたら、もう少し の辛抱ですよ。…すみません高屋敷君…頑張ってもらうしかないのですよ」
「ぎゃへあっ!!いがぁ゛っ!助けべぇっ!!い…げぎゃあぁっ………!!(…ゴツ )」
「ふん?…貴方達、一度咬むのを止めなさい。気絶したようです…」
「……い゛、ひ…」
「そうですねえ、この気絶の間に狐が私を罵りながら咬み付いてきた事にしましょう」
「……あ゛…」
「あはは、可哀相にねぇ高屋敷君?狐が意地を張るものだから、君はこんなに苦しんで…」
「………」
「ふふっ…良いですよ貴方達、また咬んであげなさい」
「………ぐきゃあ!?!いぎゃいっ!?あ、あぎゃぎひいいぃぃ!!!」
「これで駄目なら、次の手がありますよ高屋敷君…犬に犯されれば狐もさすがに逃げると思う のです」
「い゛やあ゛ぁ゛っ!!狐じゃなひぃ!僕ぎづね゛じゃないい゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ ゛ーー!!!
「大丈夫ですよ高屋敷君…私が絶対に、狐を払ってあげますからねえ…」

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