ガララ


「こんにちわぁ安西先生!…センセ?」
「…ちーととと……よしよし、良い子ですねえ」
「新しいペット?見して見してー…わあ!」
「おや高屋敷君、来ていたのですか?気付かなくてすみません」
「んーんそれはいいんだけど、すごーいアザラシの赤ちゃんじゃん!かわいー!!」
「そうでしょう、可愛いでしょう、真っ白でふかふかでつぶらな目のゴマちゃんですよ」
「えー、えー、超可愛いぃー♪ねーだっこしていい?だっこしたーい!」
「勿論いいですよ。ただし、優しくしてあげて下さいね」
「うん!えへへ、こっちおいでゴマちゃーん…ぎゃーふかふかだ!?ふわふわだー!!」
「ぎゃー?」
「うわーうわー重ーい可愛いーびちびちするー♪センセーどっから連れてきたのぉ?」
「落ちてたのです。北極に」
「…それは落ちてたって言わないよ?」
「落ちていたのです」
「言い張るんだ」
「だから、鍋の具材にしようとして拾いました」
「ふーん………あれ?!
「はい?」
「今、なんか、恐ろしいことを聞いた気がする!先生今なんか恐ろしいこと言った?」
「言ってませんが」
「そっか…よかった気のせいだった…」
「で、君も食べますかアザラシ鍋」
やっぱり言ってた!!いやーもうこの人いや!!なんで動物を愛でるのと食欲を同時に起動させられるの?!幼児期のトラウマでもあるの?!」
「え…だって一石二鳥じゃありませんか。可愛くて美味しいなんて、合理的ですよね」
「なんにでも合理を求める現代人帰れ!!」
「多分ですが、このヒレと尻尾の部分にコラーゲンが多いのではないかと思うのです。煮込んだら美味しいでしょうね」
「触るな!!そんな目で見るな!」
「何ですか高屋敷君、君はグリーンピース気取りですか」
「え、豆?!」
「…」
「僕グリンピース食べれないけどなんの話?!」
「…いや、良いです。君が世界情勢に疎いのは知ってますし。…もう十分可愛がったでしょう?寄越しなさい、調理師科の調理室借りて捌いてきますから」
「いーやーあーー!!ホントになにこの人!?怖いわ!金持ちなんだから肉くらい買ってくれば?!」
「何を言ってるのですか?私はその小さくて可愛い生き物を食べたいのです」
「この歪んだ小動物マニアが!!」
「因みに152センチの君も小動物と認識しています。つまり」
「え?」
「代わりに君が鍋の具材になるならそのゴマちゃんは勘弁してあげましょう」
ええー!?
「十秒で結論を出して下さいね。じゅーう、きゅーう…」
「あわ!あえっ、え、あ、うな、あ…」
「さーん、にーい、いーち、ゼロ。はい答えは?」
「……う、あ…」
「はいバッドエンド。両方お鍋で仲良くして下さいね☆(ザグドシュウ!!)」
あぎゃあああああ!!!


―――――――――――――――


「…高屋敷君、お肉よそってあげましょうか?」
「…うん」
「冬はやっぱり鍋ですねえ。身体も温まるし、野菜も沢山取れますし」
「…うん」
「はい、熱いから気を付けて」
「…うん」
「生姜を入れたのは正解でしたね、臭みが消えて良い感じです」
「…」
「…熱…」
「…ねえ」
「はい?」
「あの、どうして僕の下半身、アザラシになってるの?」
「ああ、二匹使うと二人分の鍋には多過ぎたのでね」
「…そう」
「ええ」
「…」
「あ、食べ終わったら南極に戻りますか?それとも日本に居る方が?」
「…なんか、もう………どうでもいいやぁ…」

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