ガララ


「おや高屋敷君、来ていたのですか。…何してるんです?」
「こっくりさん。まだ紙に五十音書いてる途中だけど」
「小学生女子ですか君は…やめなさい」
「なんで?」
「何でと言われますと、まあ面倒被るのは大人だからって事になりますかね」
「いいじゃん、僕だってこんなの信じてないもん。確かー無意識に手が動いちゃって、心の中でそうなればいいなってことが結果になって出ちゃうんだよね。要は自己催眠でしょ?」
「そうと解ってやったとしても、後に影響が残る場合があるから面倒なのです。こっくりさん自体が最早都市伝説以上の根深さで認識されていますからね、影響力が大きいものは危険ですよ」
「なんで自分の財布から十円玉取り出してるの」
「特に一人でやるこっくりさんは危ないなんて噂もありますしね、さあ始めましょう」
「先生って割と言ってる事とやってる事が一致しない人だよね」
「DSこっくりさんというゲームがあったみたいですね。なんでも500本しか出回っていないとか…都市伝説かもしれませんけれど」
「えーと。…こっくりさんこっくりさん、お出でましたらこの十円玉にお乗りください…あ、動いた」
「動きましたね」
「安いもんだね。…これ先生が動かしてる?」
「いいえ、君の深層心理が知りたいので、意識的に動かさないようにしてます」
「僕もなんだけど」
「へえ」
「…動くもんだね。ねえ、先生黒魔術的なこと得意でしょ?これ狐とか狸のせいなのかわかる?」
「さあ、どうでしょう。分からない方が面白いでしょうし」
「えー…じゃ、とりあえず質問してみよっかな」
「何をです?」
「安西先生の正体」
「…」
「えーと、それじゃあ質問です。安西先生は人間ですか?」
「そこからなんですか」
「……動かない……あ、動いた」
「…」
「なんかプルプルしてる。…あ、YES……じゃないNO?YE…あ、やっぱNO…YE、N…Y(ベギン!!うぎゃ?!
「おや、割れてしまいましたね」
「いったぁー破片で指切ったよう!」
「大丈夫ですか?消毒しましょうねぇ、硬貨は汚れていますから」
「うん。…ねえ、こっくりさん帰る前に指離しちゃったけど大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ。それも割れましたし」
「え?」
「沁みませんか?」
「それも?」
「ん?…おっと、口が滑りましたね」
「…割ったの?」
「いいえ、割ってませんよ」
「…」
「何ですその目は?」
「…僕帰る」
「それが良いでしょう、後ろに気を付けてお帰りなさいね、高屋敷君?」



家に帰って扉を開けたら

チャリンと居間で音がして

安西先生がゴミ箱にぶち込んだはずの

二つに割れた十円玉が落ちてた


その夜寝ようと電気を消したら

暗闇に浮かぶ真っ二つのキツネさん

こうなったのも僕のせいだから

明日油揚げを買ってあげよう

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