お昼休みに食堂で

プラバルーンで遊んでたら

ふと横を見ると安西先生が崩れ落ちてた

なにやってんだろ


「なにしてんの安西先生?」
「昼食を摂ろうと食堂に来てみればどこのいい年した馬鹿が大学構内でプラバルーン膨らませて遊ぶなんて馬鹿やってるのかと思えば、四年来の知り合いだった時の絶望が君に解りますか」
「割と解ってる方だと思うけど。四年来の知り合いの三十路間近の大学教授が螺旋階段の手摺に乗って滑り台してた時とか」
「嘘おっしゃい、喜んで一緒にやり始めたのはどこの誰です。証人もいますよ、暫くしてから会長君が来て二人で怒られたでしょう」
「怒ることないよねー」
「怒ることないですよねえ」
「センセもプラバルーンやる?」
「やります」
「はいどーぞ」
「ああ、久しぶりにこんなもの触りましたよ…脳味噌溶けそうなシンナー臭さですね」
「そんなに臭いかなあ」
「余り長時間やっていはいけませんからね。君の軽いおつむが更に軽くなったらどうするのです」
「軽くないよ!失礼ですー!」
「心配したのですが?」
「心配と見せかけたイジメです!バカ!」
「まあまあ良いじゃありませんか…ほら、大きく膨らませましたよ」
「わーでっかい!先生すごーい!!」
「やはり軽いですね」
「なんか言った?」
「ええ、このプラバルーンが軽いとね。風船等よりよほど軽い」
「センセーそれ投げて投げてー」
「こうですか?はい」
「あー…えい!」
「おっと」
「ちょっとぉ!ダメダメ止めちゃー!続けるのー」
「ん?…ああ、バレーということですね。…はい」
「おー…てい!」
「はい」
「うー…んしょ!」
「よっ…(パン)あ」
「あ、割れた。先生強くやり過ぎー!」
「すみませんでした。…では、もう一度」
「え?…今、どこから出したの?ってゆーか、いつ膨らませたの?」
「気にしないで下さい。ほら、さっきの物より大きいですよ」
「うあー…せいっ!(パン)あ」
「おやおや、ふふふ…」
「なにこれ割れやす過ぎ…って臭っ!?なにこれ変な臭い…え、あれ……臭、い、…え……?…(…ドサ)」
「…高屋敷君?」
「…」
「ふふっ、おやすみなさい高屋敷君。…成る程、プラバルーンも使いようによっては面白い…気体を封入するにはなかなか使える。おまけに、割れるところも便利なものです」
「…」
「君が割ったものに入っていたのは気化したクロロホルムですよ、可愛い眠り人形さん。さあ、可愛い君を綺麗に飾る為に、私の工房へ行きましょうねえ」


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(「う…うう…?」)
「起きましたか、生き人形君」
(「起きた…起きたよ…なんなの、頭ぐらぐらする……さっきのなに?なにしたの?」)
「先程のことより、君の周りを取り囲む現状の心配をした方が良いと思いますよ」
(「現状?……え?なにこれ…これ、なに、硬い……」)
「割れないシャボン玉、何て玩具もありましたね。…しかしそれもプラバルーンも、何れは萎んでしまいます…君を仕舞って置くのには不適合。だから、ガラスで代用しましたよ。けれどよく出来ているでしょう?御伽噺の王子様をシャボン玉の中に閉じ込めるなんて、我ながら趣味の良い事を思い付いたものです」
(「だ…出して!!出してよ!なんでこんな…出してったら!!」)
「嫌ですよ?」
(「いい加減にして!出さないと本気で怒るよ?!」)
「嫌です。それよりも高屋敷君、余り暴れては寿命が縮まりますよ?」
(「え?」)
「よく御覧なさい、君の封じられた球体をね」
(「……ひ…っ!?」)
「まあ、虹に輝く玉の中で飛び跳ねる君も可愛いですから、構いませんけれど…」
(「出して…出して!出して!!助けて!お願い、出してぇッッ!!!」)
「あはは、嫌ですったら。解りの悪い子ですねえ」
(「あ、あ、出し、て…助け、て……助、け…」)
「…おやおや…もう息が詰まってきましたようですねぇ…」
(「く…け、けふ、あ、…あふ、あ………あ…………ぁ………」)
「もう一度、おやすみなさい高屋敷君。今度は二度と割れない夢を」

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