「安西先生安西先生!ハッピーハローウィンですよぅー!!トリックオアトリート?」
「これはこれは高屋敷君、可愛らしい吸血鬼になりましたね」
「えへー♪…ってセンセはなんにも仮装してないじゃない!なにしてるの?!」
「少し忙しかったのですよ、そう怒らないで下さいな」
「もー!僕だけやってもつまんないのに…じゃーお菓子は?」
「伯爵殿がお怒りになられるのを恐れず申し上げますならば、まだ買ってませんでした。君が来る前には買っておこうと思っていたのに、間に合いませんでしたねえ」
ばかー!!
「ふむ、やはり怒りましたね」
「ばかばかばか!安西先生の準備不足!僕せっかく頑張って吸血鬼になったのにー!!」
「すみません」
「お菓子が無いならいたずらするからね」
「そうなりますね。しかし、まるで恐喝ですねぇ」
「センセが悪いの!えいアーンパーンチ!!」
「あー、えー…と、…そうそう、バイバイキーン」
「棒読みすぎるよー!全然効いてないよ!もうちょっとやられたっぽくしてくれてもいいじゃないー!!」
「いやいや効いていますよ?ほら」
「え?…ぎゃああああぁぁぁーーーー!!?」
「吸血鬼になっただけありますね高屋敷君、先生、君の強力パンチでバラバラになっちゃいました」
「いやあああ!?ああああ!!うあああぁぁぁ!!!」
「高屋敷君たら、そんなにも取り乱してどうしたのです」
「程があるわ!!」
「と言いますと?」
「バラバラだよー!!本当にバラバラだよぅー!八つ裂きどころか十六分割くらいだよぉー!しかも床に転がった生首が平然と喋ってるよー!!うわあぁーん!!」
「おやおや、泣いてしまいました…君の願望を叶えてあげたというのに、何故裏目に出るのでしょうね?腕もバラバラですから頭を撫でるのも難しそうです…ああ、そうです高屋敷君、お菓子の代わりに私の肉でも食べますか?」
「食べないよ!!もう帰るー!えーん!!」
「んー…」
「今年のハロイン全然楽しくない!安西先生のせいなんだからね、もう知らないんだからね!」

「高屋敷君」
「なにさ!」
「怒らせておいて尚厚かましいとは思うのですが、バラバラになってしまった体を縫い合わせては貰えませんかねえ?」
「やだよ!自分でバラバラになったんでしょ」
「君にしか頼めないのですよ、お願いできませんか?」
「…」
「高屋敷君…」
「…縫ったら帰るからね!!」
「ありがとう御座います、高屋敷君」


―――――――――――――――


「…ねえ先生、タコ糸と畳針しかないけど、これでいいの…?」
「構いませんよ」
「そうかなあ…よいしょ」
「おや、もう体は繋がったのですね。あとは首を繋げるだけですか」
「そうだよ。だから大人しくしててね」
「勿論」
「なんかここの傷は綺麗に切れてるから縫いやすい。他はぐちゃぐちゃだったのに」
「そうですか?」
「うん…」
「…」
「…もうちょっと……糸始末してー…結んで………ハサミハサミ」
「終わったのですか?」
「……うん。はいおしまい、どっかぐらぐらするところない?」
「よっと…ん、大丈夫そうです。ありがとう御座いますね高屋敷君、お陰で仮装も出来ました」
「ふえ?」
「フランケンシュタインですよ。本当は色々な人間のパーツから寄せ集めなければいけないのですが…因みに、飛び出した額・厚いまぶた・首のボルトという特徴はユニバーサル映画が版権を持っているので勝手には使えません。が、まあつぎはぎの体ならばそれらしく見えるでしょう?」
「……」
「あれ?…駄目ですか?」
「…ううん!!すっごくいい!!わーいフランケンシュタインだぁー♪センセーかっこいー!」
「お気に召して頂けたようで…では、お菓子を買いに行きましょうか」
「うん!」


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「最近はハローウィンのお菓子が増えましたね。お祭り騒ぎなら何でも良いという日本人のいい加減さが好きですよ」
「キティーちゃんのカボチャ型お菓子入れだー」
「!」
「え?」
「ジャックオランタンを忘れていましたね…」
「カボチャに顔の穴開ける奴?あれ可愛いよね!ロウソクの光もキレーだし」
「この辺りにあのカボチャを扱っている花屋さんなどありませんしねえ…仕方ありません、代用で我慢しましょうか」
「代用と言えばー、ホントはあれもカブを使うんだよね!でもカボチャの方が彫りやすいからってアメリカでカボチャにしたのが始まりなんだよ、カボチャの方がオレンジで可愛いから僕カボチャのが好き!…で、センセはなにで代用するの?」
「それはですねえ、高屋敷君…」


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【…今年も来たのか聡美。む?高屋敷君はどうした。…?】
「ハッピーハローウィンですね、氷室さん。お菓子と悪戯はどちらが良いですか?」
【…何だ、その手にぶら下げているのは?】
「ああ、これですか。ジャックオランタンの代わりですよ、最近はコンビニでもロウソクや果物ナイフが売っていて便利ですよね」
【血が垂れている】
「これでも汁はきったのですが」
【元から付いている顔はどうした】
「可愛かったのですが、あのままでは蝋燭の光が見えませんので目玉をくり貫いたり口を更に切り裂いたり」
【中は空洞になっているのか】
「はい、スプーンで掘るのにはちょっと苦労しましたけれど」
【…良いジャックオランタンだな】
「褒めて下さってありがとう御座います」
【菓子だったな。入ると良い、用意はしてある…毎年ねだりに来るからなお前達は】
「ふふ、だって私も高屋敷君もお菓子が大好きですもの。ねえ高屋敷君?」

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