安西先生が黒絹のハチマキみたいな

細長い布切れを持って

無表情な早歩きで延々追いかけてきます


なんのジャパニーズホラーなの


「………」
「もうやめてよ!なんだよ!目的はなんなの!?」
「これで目隠しをして下さい高屋敷君。そして恐る恐る手探りに家具伝いに歩き私を呼びながら人工の闇の中おどおどと動き転んで泣きなさい。私はそれを少し離れた所でニヤニヤしながら見ていますから」
ド変態ー!!
「大丈夫、高屋敷君はその大きくてクリクリした目が隠れてしまっても可愛いままですよ」
「あっちいけよ殴るぞー!ホントにもう気持ち悪い!イケメン補正もぶっちぎりなの解ってる?第一なにが嫌って先生やってる途中で飽きるでしょ?そんでそのまま僕を放置してどっかいってもう帰って来ないんでしょ?最悪!!」
「ふむ、駄目でしたか…じゃあ首を絞めるのにでも使いますかねえ」
「ごめんなさい僕が悪かったです。目隠しでもなんでもいいから殺さないでください」
「ん?ああ、安心して下さい。君の首を締める気はありませんよ」
「ふえ?」
「そうですねえ、その辺の女子高生の細首でも絞めてきますか。可愛いのですよ?こう、紐を首に一周させてそのまま持ち上げるのですけど、不っ細工に顔が浮腫んでねえ〜」
「やめてお願い!これ以上前途ある若者を手に掛けるのやめて!!どうしてそんなに辻斬り大好きなの?!」
「?…あ、じゃあ中年のリーマン騙して絞めますね。面白いのですよ、大抵騎乗位なんですけれど、絞めると同時に大量に中で…」
あーあーあーあー!!聞こえなーいー!!成人男子の援助交際なんて存在しーなーいー!!」
「ふふ、高屋敷君たらいつまでもお子様ですね」
「死にたい…こんなに穢れた世間で僕はなんで必死に頑張ってるんだろう……うぁっ?!」
「はい捕まえました。外したらお仕置きしますからね?」
「ぎゃああ見えない見えない外せー!!」
「ははは、だからいけませんったら。それとも腕も縛ってしまいましょうか」
「嫌に決まってんだろ警察屋さーん!!犯罪が行われようとしてるから未然に防いでくださいだーれーかー!!」
「あーあー煩い子ですねぇ、その騒がしい声が可愛らしい口に上らないように細い首を締め上げてあげましょうか?ほら、こんな具合にね」
「あぐぐぐががあげげげげ!!」
「あはは、高屋敷君?目隠しを外して欲しいですか?それともこの手を外して欲しいですか?」
「手を!!手をはずしてくださいおねがいしまああああ゛あ゛あ゛あ゛……!」
「ええ良いですよ。はい」
「ゲホッ!?!おぐうっ…うおぐげへぇっ!!」
「よしよし、ゆっくり深呼吸しましょうねえ」
「死…死んでた…あと二秒もあれば死んでた…!」
「ふふ、高屋敷君は本当に面白いですね。その目隠しの下でどんな悲壮な瞳孔の開きかたをしているのかと思うと楽しいです。まあ取らせませんけどね」
「お願いします、土下座するからもうやめてください。靴も舐めます」
「へえ…割と長い付き合いですが、始めて見ましたよ君の本気土下座。でも靴はいつでも舐めさせられるので今舐めなくても良いですよ」
「いやホントに…お願いこれ取ってなんでもするから…なんでもするから家に帰して…」
「何でも?では、そこから土下座のまま一歩も動かないで下さいね」
「え?なんで…ひぎぃっ!?!
「はいはい動かない動かない、約束したでしょう?」
「熱い今のなんですかもうヤダ帰しあっつう!!なになになに垂らしてるのぎゃあ!!熱いやだあぎひっ!!」
「勿論蝋燭ですよ。ほら、動くなって言ったじゃありませんか、約束を破ったらもっと酷いお仕置きですよ」
「約束って!元から一方的な命令だったじゃあづづづぢう!!ごめんなさいごめんなさい髪の毛燃やさないで!!」
「そう、良い子ですね高屋敷君…そのまま良い子にしていたら殺しはしませんよ…」
「あづい!!痛い!!いだい熱あつあづ助けてあづつぎゃああがあああ!!!」
「おや…良い子にしていてくれると思いましたけど、やっぱり暴れてしまうのですか?」
「ひ、だ…だって、熱くて、ごめんなさい、でも、あついから僕」
「んー、そうですかそうですか…高屋敷君は大人しくしていたいのですね?でも熱いから動いてしまうのですねえ?」
「そう…です、そ、です、だから、ごめんなさい…あぎひゃ!?!あぎいぃ!!」
「解りましたよ高屋敷君。君が良い子でいられるように腕も足も縛ってあげましょう。これで君は怖いことなんて何もありませんね」
「たすけてたすけてたすけてたすけて……ひっ…あ、助け…熱い、先生、そこ、ホントに…」
「すみません、嫌な臭いがしますよねぇ。シルクは動物性ですから、燃やすとどうしてもねえ…」
「やめて、許して、目は、目だけはやめて、お願い、安西先生、僕、なんでも…なんでもするからおねがいやめあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーー!!!!



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「…高屋敷君?」
「…」
「まだ怒っているのですか、高屋敷君」
「ふん!」
「謝っているじゃありませんか…ちょっとした冗談のつもりだったんですよ」
「…」
「…しかし君は本当に素直ですね。蝋燭の火を目に押し付けられたと思ったんでしょう?実際には私の指だったのですけどね」
「うっさいな!!解説すんなバーカ!」
「まさか君があんなに暗示に掛かりやすいなんて思わなかったのです。気絶までさせちゃいましたし、先生反省してます」
「気絶とか言うな!!帰れ!!大っ嫌い!!」
「すみませんったら…」
「死ねっ!!」
「…これ程謝っても許してくれませんか?」
「許すもんか」
「そうですか…」
「ふん!!」
「……なら、実際にやっても一緒ですよね☆」
「は?なに言ってんあぎゃああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーー!?!!!

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