ガララバシャン!


「安西先生今日はお月見だよ!だから僕お団子いっぱい作ってきたの!」
「…ビニール袋に入れてこないで下さいよ…海亀の卵かと思いました。団子も月見も良いですが、大学が始まった今、レポートは完成してるんですか?」
「海亀の卵はビニール袋に入れたりしないよ?ちゃんと砂敷いたダンボールに入れるもん」
「はあ、そうですか。…それにしても随分作りましたね、これを二人で食べるつもりですか」
「うん、がんばってねセンセ!」
「丸投げとはあんまりです」
「もーさっきから文句ばっかり!折角作ってきたのに嬉しくないの?」
「いえ、作ってくれたことは嬉しいのですがそれ以外の部分が…」
「バカ!センセのバカ!嫌いですー!!」
「ああ団子を投げないで下さい高屋敷君、食べ物を粗末にすると罰が当たりますよ…謝りますから泣かないで貰えるとありがたいのですがねえ」
「…残さない?」
「善処します」
「じゃあ泣かないであげる」
「それは良かった。…やれやれ」
「あ、あとねー付けられる前に先手を打ってウサ耳持って来たよ。はい頭出して」
「え…ああ…」
「大丈夫?カチューシャのとこゆるかったりしない?」
「ああ…大丈夫、丁度良いですよ」
「よかったー」
「…」
「先生かわい」
「…ありがとう御座います」
「ススキも取ってきたしーもうすぐお月様出るですから早く屋上行こ」
「はあ」
「センセー早くー!おいてっちゃうですよー!!」

―――――――――――――――

「…お団子美味しいですよ、高屋敷君」
「ホント?えへへ、ありがと。いっぱいあるからね!」
「そうですねえ、いっぱいありますねぇ」
「今日は天気いいし、お月様も綺麗に見えてよかったですー。…なんか月見ソバ思い出してきちゃった、おいしそうなお月様だー」
「あの月では今頃…兎達が一丸となって餅搗きをしているのですね」
「う?センセったら今日はロマンチストさんだね、いつもは酷いシニカリストなのに」
「………めしい」
「え?」
「恨めしい!ああ恨めしい!何故可愛い兎達は月に居て私はこんな下らない地球なんかに居るのでしょう!私も月に行って可愛い兎と一緒に餅を搗いて遊びたいのですよええ高屋敷君聞いてるんですか!?」
「あががが首絞めないでくださおごごごご!!」
「こうして高屋敷君の首を絞めている今も、きっと兎同士でひっ絡まって毛皮をふわふわさせながらくりくりの目を無垢に澄ませているのでしょう…恨めしい、一匹くらい私の下に来てくれたって良いものを…」
「えげほっ、げおごほおっっ!!…はあ、はあ、…死ぬかと思った……大体、センセがウサギさんと遊んだって餅と一緒に兎を臼にぶち込んで杵で叩き潰してウサギ餅ーとか言っておいしそうに食べるんでしょ?ウサギさんはそんなの望んでないよ」
「そんなことしませんよ、失礼な」
「じゃあどうやって遊ぶんですかー」
「それはもう、抱っこしたり撫でたりお話したり、追いかけっこをしたり…してからガブリと」
「やっぱり食ってる!」
「ああこんな話をしていたら本気になってきました。これは実家の経済力に物を言わせて月へロケットを飛ばすしかありませんね」
「はあ!?どんな金持ちなのって言うか今から?!僕は行かな
「当然君も連れて行きますからね高屋敷君。行かない何て言ったら君が杵で潰れることになりますよ」
行きます!!」
「それはそれは、自ら行きたがってくれるとは好都合ですねえ。…実家に電話してきますからそこで待っていなさい」
「え…あ、うん…」
「…もし逃げたら…」
「逃げない逃げないマジでマジで!!」
「君は物分りが良くてとっても良い子です。ではまた後で」
「…うん…」


―――――――――――――――


「…♪越えろよヘーイホー 虚空ーへ ローケット 届けよヘーイホー 虚空ーへ ローケット…」
「あ…お帰り安西先生」
「はいただいま。ちゃんと待っていたようですね、偉いですよ」
「ホントに行くのー?」
「勿論、ほらキャンパスの中庭にロケットを設置させました。見えるでしょう?」
「うう、なんでこんな目にあうんだろ?僕はお月見したかっただけなのに…」
「ん?」
「え?」
「ああ、仕事の電話です。こんな時に…すみませんが高屋敷君、もう少し待っていてくれますか」
「ふえ…別にいいけど」
「待たせてすみません。じゃあ、中庭で待っていて下さい」


―――――――――――――――


「…♪口笛吹きー 兎追えばー 麗しーきー 君ーを連れーてこ…」
「高屋敷くーん」
「あーお帰りセンセ。で、ホントに行くの」
「いやーそれが急な仕事が出来てしまいまして…」
「え?やった!」
「君だけで行ってもらうことにしました」
「やってなかった!!」
「頑張って下さいね高屋敷君、沢山兎を捕まえてきて下さいね」
「いやああ押し込めないでムリムリ僕ロケットなんて操縦できな(ガチャン!ガコ、ガゴン!!)」
「えー…と、発射装置は…これですね。ポチっとな」



……ズ……ズズズ…ズズズズズズズ…!!



「バカー!安西先生のバカー!!」
「おや高屋敷君、通信機の使い方が分かったのですか」
「それ以外はさっぱりだよ!なんかカウント始まってるよ!出せー!!」
「10秒前ですね。9……8……」
(「なんで!?どうして僕がウサギを捕まえに月になんか行かなくちゃいけないの?!」
「6……5……」
「聞いてる!?ちょっと!なんで僕がウサギを捕まえに月まで行かなくちゃいけないのったら?!安西センセが行けばいいじゃないー!!」
「3…はは、嫌ですねえ高屋敷君…1……」
「はあ?!」




「月に兎がいる訳ないじゃないですか」







ズゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオォォォォォォォォンンン!!






ぶっ殺おおおぉぉぉぉーーーーー…ーーー……ーー…………!!……!」

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