「…確かにねぇ、夏ですもの、とても季節感に則っているとは私も思いますよ
でもですよ高屋敷君?幾ら何でもしつこいじゃありませんか
大体、私が君を殺すなんて日常茶飯事だったでしょう
なのに今回に限って君は死体のままで、ちっとも生き返らないから壁に塗りこめて始末しましたよ
そうしたら、君ときたら何ですか。嫌味ったらしく…

幽霊になんかなったりして」

(なにその逆ギレ!?最低!)
「だってそうでしょう、私への嫌味以外に何だって幽霊になんかなるんです?」
(別に僕の意志でなったわけじゃないんだけど。つーかセンセがやったんじゃないの)
「いいえ?」
(じゃあなんで?)
「だから嫌味なんでしょう?」
(嫌味で幽霊になれるほど器用じゃないよ!もうセンセが殺さなきゃこんなことにならなかったのにー!)
「何がムカつくってその姿だと抱っこも出来ないんですよ。スカスカ通り抜けてホログラム気取りですか?頭を撫でさせなさいこの馬鹿ガキ」
(うわーん!!)
「幽霊も泣くのですね」
(ひっぐ、ひうぅ…)
「…そういえば、幽霊の服って脱げるのですかねえ」
(やめろ!死んでからもセクハラするな!)
「冗談ですよ。第一私は君に触れませんもの」
(…ねえ、安西先生って黒魔術師なのに幽霊に詳しくないの?)
「ん?」
(だから、黒魔術師なのに…)
「全然聞こえません、もう一度言ってくれますか?高屋敷君」
(……安西先生って幽霊に詳しくないの?)
「あー…いや、どうでしょうね?人間の幽霊は使い勝手悪いですし、あまり馴染みが無いんですよ」
(いっぱい殺してるのに?)
「あれは皆魂ごと地獄にお中元として送っているのです」
(…)
「この際君も行ってみます?食われますけど」
(行くかアホー!)
「それは残念…しかし困りましたねえ、どうして今回に限って幽霊なんでしょう?」
(僕が聞きたいよ)
「いつもは生き返るのにねえ…」
(え、なに言ってるの?僕死ぬよ?生き返らないよ?)
「今更何言ってんですかね、もう三百話以上死んだり生き返ったりしているくせに」
(三百話?話?なんのこと?)
「いえ、まあ…こっちの話です。それより君をなんとかしなければなりません。取り敢えず壁に塗り籠めた君の死体を調べてみましょうか」
(そういえばどこに埋めたの?僕そこら辺の記憶無いんだけど)
「近所にある洋館ですよ。もう何十年も人が住んでいませんから、殆ど廃墟になってますがね」
(えええあそこに!?モロおばけ出そうなトコじゃないですかー!!)
「ええ、なので死体を隠すのには最適でした」
(バカー!恐いじゃん!!)
「君が幽霊なのに」
(って言うか、そんな廃墟に死体を担いで入って壁に塗り籠める安西先生が恐い)
「私は恐くありません」
(本人だからね!)
「とにかく行きましょう?何か手がかりがあるかもしれませんし」
(…うん…)


―――――――――――――――


「…ここですね。君を埋めたのは夜だったのですが、夕暮れ刻もなかなか味があるものです」
(つーか恐いよ!コウモリ飛んでるじゃないー!)
「私は恐くありません」
(これだから安西センセ嫌い…)
「まあまあ、そう尻込みせずに入りましょう。足元に気を付けて…いや、君には関係ありませんでしたか」
(安西センセのせいでね!…あ、ちょっ、待って待って!置いてっちゃイヤですよぅー!)

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