ある日大学に来てみたら

なんか西洋のお城みたいになってて

ふかふかの絨毯を踏みながら

僕は謁見場まで行きました


「そうだろうとは思ってたけど、やっぱり安西先生の仕業だったんだね。なにその格好、その年でゴスロリまがいの女装?」
「口を慎みなさい、貧民風情の高屋敷君?王女直々の処刑を受けたくなければねえ」
「王女?王妃じゃないの?」
「そのつもりだったのですが、そうなると王と結婚していることになるでしょう?」
【いくら聡美との遊びでも、妻に無言で怒られるからな】
「あ、学長が王様なんだ。…意外に恐妻家」
「普段は和風美人で優しい方なのですがねえ…まあそれはさて置き、高屋敷君。君に二つの選択肢を与えましょう」
「選択肢?」
「私の玩具として仕えるか…若しくは奴隷になるか。さて、どちらにします?」
「選ばなくちゃいけないの?」
「逆らうならば、縛り首ですよ」
「はーあ…じゃあ玩具でいいや。死ななそうだし」
「ふふふ、そうですか。君ならそう言ってくれると思っていましたよ、高屋敷君?」
「そりゃー光栄です王女サマー」
「早速お茶に付き合ってもらいます。さあ、いらっしゃいな」



「…メイドさんまでいるんだ…」
「当たり前でしょう。お茶どころか、砂糖を入れて掻き混ぜることまでやらせますよ」
「箸より重いもの持てなそうだね」
「持てなくても何ら問題ありません」
「そう?でも王女サマったら、平民達から血税絞りまくってるじゃない。反乱起こされたらどうするの?」
「愚民共がこの私に触れられるとでも?…そうですね、見せてあげましょうか。来なさい、近衛隊長」

『御呼びですか、安西姫殿下』

「あー、会長がねー…ぴったりだねー」
「彼のような騎士がいる限り、私に髪の毛程の傷もつきませんよ。安心して恐怖政治を行えるというものです」
『御誉めに預かり光栄です、安西姫殿下』
「良い子ですねぇ近衛隊長君?さあ、跪いて忠誠の接吻を、この手にして御覧なさい」
『はい、安西姫殿下。この身が果てる迄貴方をお守りすると、この口付けに懸けて誓います』
「ふふ、それで良い…では命じますよ、隣国を滅ぼしなさい。赤子一人生かしては置きません…あの馬鹿皇子がこの私を嘗め回すように見た報いです。民を焼きなさい、国を焼きなさい、皆殺してしまいなさい」
『はい、御命令通りに致します安西姫殿下。全ては貴方の御心のままに』
「なんかいつもと大して変わんないね、妖姫サマ」
「君の方こそ、もう少し役に撤してもらいたいですが」
「玩具役なんて分かんないよ」
「もっと媚諂いなさい、地にその薄い胸を擦り寄せて可愛らしい舌で私の靴をお舐めなさい」
「そんなの奴隷じゃん」
「いいえ、奴隷ならば蹴り飛ばしますが玩具なら拾い上げます」
「膝の上に乗るくらいならやるけど」
「ではいらっしゃい」
「うん」
「よしよし…少し我儘な子猫のようです、あんまりおいたが過ぎると殺してしまいますからね?」
「高がネコ一匹でしょ?気にしないで」
「ふふっ…まあ良いでしょう、君は可愛く縋っていれば良い。良い子でいればどんな願いも叶えてあげますよ、私にはそれだけの力があるのでね」

『随分な思い込みだなあオイ、勘違いのお姫さんよ?』

「え?」
「…これは、無体な侵入者ですねぇ…衛兵!何をしているのです?早くこの無礼者を…?」
『聞こえたか?あんまり我儘だから耳がねえのかと思ってたんだがな』
「…安西姫サマ、これ、なんの音?」
「音ではない…これは…声?」
『ご名答。お前を殺しにきた反乱軍だ。つっても殆どただの民衆なんだけどよ。…もうこの城を囲んでるな』
「……は、はは…何を馬鹿な、我が国の兵が高が賤民共に負ける訳がないでしょう?」
「…お姫サマ…」
「何です高屋敷君、君は黙っていなさい。殺してしまいますよ」
「兵は…隣の国を滅ぼすために、出兵したんだよ…」
「っ!?」
『そういうこった、お前の残虐趣味で守りが薄くなる機会を狙ってたんだよ。頼りの騎士様は、今頃勇敢に戦ってるだろうなあ?』
「く……馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!この私がお前のような汚らわしい者に殺される訳がありません!…そうです、お前さえ殺してしまえば…」
『俺を?無駄だな、もう囲まれてるって言ったろ』
「ふん、亡命くらいなら城に残っている兵で足りるでしょう。あっはは!見ていなさい、同盟を結んでいる国を動かして、お前達など捻り殺してあげます。革命なんて無駄ですよ…高屋敷君!何をしているのです?早くのろまな衛兵を呼んでらっしゃい!」
「あ…」
『あー、もう少し早くそれに気付いてりゃなあ…ま、民衆の声も聞かないアンタじゃ無理な話か』
「どういう意味です」
『もうお前の味方は誰もいないんだよ。ちょっと頭のある貴族はとっくに逃げたしな。高貴な貴族様の動向にも気付かなかったか?賢いお姫様だなあ』
「…そんな、馬鹿な…」
『ああ、忘れてたな。そこのガキは味方だったか。あとは騎士様だが…疲れて帰ってきたところを襲えば簡単だ』
「お……お父様…お父様は?!」
『王か?さっき殺してきたところだ。本当は形だけでも裁判にかけるんだが、抵抗されたしな』
「……いや……嘘です、こんな…こんな……馬鹿な…」
『アンタは抵抗しないよな?こんなほっそい腕じゃしようにも出来ねえか』
「離しなさい無礼者!離しなさい、離せ!離して…」
『ほら、お前の嫌いなネズミ共が大群でお出ましだぜ?可哀相になあ…』
「…安西姫サマ…」
「…!」
『おっと…お前がいたなガキ。どうする?この姫さんを知らないって言えば見逃してやる。だが…』
「やめて下さい!高屋敷君は関係ありません、私が無理に連れて来たのですから、あの子は何も…あっ!?」
『おとなしくしてな、死ぬのは遅い方がいいだろ?…おいガキ!さっさと答えろ』
「僕、僕は…」
「…高屋敷君…」
「…僕は…!」
『ああ、お前は?』



―――――――――――――――



「……なんだっけ?」
『ちっ…』
「またですか高屋敷君…もう3テイク目ですよ」
『おいいい加減にしろよ、なんで一番の決めゼリフを言えねえんだ』
「き、決めゼリフだから緊張して頭真っ白になるのー!!」
「頭の弱い子ですねぇ」
『おい安西、俺は帰るぜ。お前の暇潰しになんだってこんなに付き合わされなくちゃいけねえんだよ』
「えー、もうちょっと付き合ってくれたって良いじゃありませんか。次は上手くやらせますから…相模先生がいないと劇が成り立たないんですよ?」
「そうだよー超重要な役じゃん!準主役じゃん!」
『知るか!会長にでもやらせとけ。じゃあな』
「あん、相模先生ったら…」
「…行っちゃったー」
【…まあ、何だ、そろそろ私も仕事にだな…】
「そんな、氷室さんまで。忙しいというから出番が少ない役にしたのに」
【すまないな、また今度遊んでやるさ】
「…校長センセまで行っちゃったー…」
『安西先生』
「会長君。君は逃げませんよねえ?」
『はい、貴方の御心の儘に。ただ、次の芝居ではもう少し貴方の役に立つ役柄を頂けませんでしょうか?』
「ん…そうですね、三人で出来る劇を作らなくてはいけませんね。私ももう少し悪びれないキャラでいきたいです」
「あーはいはい!じゃあ今度は僕が考えるですよぅ!次はハートフルストーリーでいくのー!!」
『内容はどんなだい?』
「わかんないっ!」
「やはり三人で考えましょうか。場所を変えましょう、衣裳も脱ぎたいですし」
「なんで?!」
『はい、安西先生』
「あーん待って待ってぇー!僕も行くですよぅーー…!……!」

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