なんかそこら辺で死んでる人がいっぱいいて

その全員が首無しで

噴水みたいに血をぴゅーぴゅーさせてたから

僕は安西先生を探しに行きました


「なにしてるの安西先生、マグロ解体包丁なんか持って」
「おや、高屋敷君。丁度良かった、君はどっちが綺麗な顔だと思います?」
「?」
「この首と、この首ですよ」
「…右。だけど、ねえ、まさか…」
「うん?」
「綺麗な人の首が欲しいの?」
「はい。寝室に飾りたくて」
「そんなことのために首狩りしてるんだ…」
「いけませんか?」
「ダメに決まってるでしょ!せめて生きてる内に選んで、その人のだけ持ってけばいいじゃない」
「面倒です。嵩張るから比べ難いですし」
「…もういいや…」
「あ、見て下さい高屋敷君、向こうの校舎の窓を。あの青い服を着ている人の方がこれより綺麗な気がしませんか?」
しないしない!!こっちのが綺麗!!」
「そうですか?…そうですかねえ?」
「そうだよそうだよだから殺しちゃダメ!っつーかこの大惨事でなんでみんな逃げないんだろ?!」
「もう日常茶飯事なんですよ。…やっぱりあっちの方が…」
「うやぁダメダメ安西先生!行っちゃダメ!!」
「裾を離して下さいな高屋敷君」
「行かない?」
「ええ、よく見たらこっちの首の方が綺麗ですものね」
「そう…ならいいんだけど」
「…ええ…」
「安西先生?」
「…」
「センセ?」
「やっぱり向こうの方が綺麗ですね」
「あああダメだって言ったのに!お願い待って行かないで安西センセー!!」

―――――――――――――――


「ほら、見て下さい高屋敷君。やっぱりこっちの首の方が綺麗でしたよ」
「…ダメって、僕、言ったのに…」
「髪を染めてるのが気に食いませんけれど、まあ如何とでもなりますしね」
「綺麗だけどさあ…でも、死んでるんだよ?」
「そりゃあ首が胴体と繋がっていなければ死にますねえ」
「そういうことじゃないでしょ?!解って言ってるんだ!」
「…?」
「もういいや…もうなにも期待しない…ばーか…」
「…」
「どしたの、センセ?またもっと綺麗な首見付けたの?」
「はい。…いや、んー…どうなんでしょうね?」
「なにさ?」
「それがその…よく考えてみればこんな首より、私の首の方がずっと綺麗です」
「ああ、そういやそうだね。化け物みたいに綺麗だもんね」
「…やっぱりこの首、いりません」
「じゃあ自分の首飾るの?」
「そうですねえ、そうしたいところですが…それだと私が眺めて楽しむことは出来ませんねえ」
「残念残念。じゃあもう首狩りやめて帰ろっか」
「そういう訳には行きませんよ、やり始めたことを投げ出すのはよくありません。教育者としてやってはいけないことです」
「人としてやってはいけないことを先に学んだ方がいいと思うけど…じゃあどうするの?」
「私の首を君の部屋に飾って下さい」
「いやだよ!!絶対いやだよ!?」
「おはようからおやすみまで高屋敷君を見詰めます」
「らいおんはみがき?!絶対絶対いらないですよぅー!!」
「そう言わずにもらって下さいな。ほら、あげますよ」
「うわああ取れたー!!?しかも喋ってるいやあああ人間じゃないよう化け物だぁー!!」
「何故受け取ってくれないのですか高屋敷君…先生のこと嫌いですか?」
「嫌いだよ!!寧ろおぞましいよ!!ああ僕もう帰るからそれじゃあバイバイさよならですーーーー…!……!!」
「…逃げられてしまいましたか。…まあ良いです、何も手渡しだけが贈り物の渡し方じゃありませんからねえ」









家に帰って死臭を落とそうと

お風呂に入って体を洗っていた時に気付いた

胸にぽつんと赤い腫れが出来てる

オロナインを塗ったけど次の朝には余計腫れてて

夜には三倍になってた

日毎に大きくなるその腫れは

握り拳くらいになった頃

もぞもぞ動いた

その次の日には

顔になってた

子供が粘土で作ったような顔は

三日もしないうちにとても綺麗になって

安西先生にそっくりになった



今、くすくす笑ってる

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