「高屋敷君、マスクメロンを買ってきましたよ。一緒に食べましょうか」
「うーん…食べれるかなあ…」
「おや、嫌いでしたっけ?」
「そうじゃなくてー、甘いのはちょっとおえってなるから…でも、もう大丈夫になったかも」
「では無理せず食べて下さいな。駄目と分かったら私が片付けますから」
「うん、そうする。…でもなんで急にメロンなの?」
「ん?…ふふっ、君にそっくりだと思いましてねぇ」
「?」
「高屋敷君はマスクメロンのこの網目がどうやって出来るか知っていますか?」
「さあ…知んない」
「中身の成長が早くて、内側から皮に強い圧力がかかり裂けてしまうのです。だからこうして網目状の筋として現れてくるのですよ」
「それで?」
「はい?」
「なんでそれが僕に似てるの?」
「ああ、だから、君のそのボテ腹の妊娠線にそっくりですから」
「…」
「高級なメロンほどこの網目は美しい…君の妊娠線もまたとても美しい、青味掛かった撫す色の赤…きっととても甘くて美味しい子供が生まれるのでしょうね」
「ホンットもういい加減安西先生のマッドサイエンティストっぷりには嫌気がさすよ僕…なに?また僕のクローンを胃の中で育てさせてんの?つーかいつの間にやったの?」
「いいえ、今度は君のクローンという訳ではありません。ちょっとある遺伝子を掛け合わせて見ました。今回着床させたのは肝臓ですしね、昨日の夜に君の部屋に忍び込んで一晩掛で仕込みましたよ」
「仕込むとか言うな!死ね!!
「嫌ですね高屋敷君、そんなに口が悪くては良いお母さんになれませんよ?」
「ならないよ!」
「一度に五児の母となるのですから、今のうちからしっかり心構えをですね…」
「え、ちょっと待って、なに五児って?え?」
「そのままの意味です。排卵誘発剤を使うと多重妊娠が多くなるのですよ」
「いや卵子は無いけどね!?なにそれそりゃ妊娠線もでるよ!妙にお腹大きいと思ったよー!!」
「ははは、畜生腹ですね」
「どうしてそんな蔑称を使うの!!失礼でしょ大家族に」
「犬の様に子供をポンポン産んで下さい、どれも私が飼ってあげますよ」
「だからやめろ!!アンタみたいな捻じ曲がった人間に渡して堪るか我が子をー!」
「何を言うのです、私が孕ませたのですからそれらは私の物です。君は自販機から出てきたジュースを硬貨を入れた人間ではなく自販機のものだと言うのですか」
「例えも下品だー!!もう僕実家帰ります実家で産む!」
「肝臓に着床しているのですよ?自宅出産は無理ですったら」
「センセの元で産むよりはマシだね…よっ…しょと」
「あ、高屋敷君…」
「それじゃあさよなら安西先生、もう連絡しないでください!」
「…仕方ありませんね(ドゴフッッ!!)」
おごおぉっ!!?


―――――――――――――――


「高屋敷君…高屋敷君?高屋敷くーん?」
「う…うう…?」
「ああ良かった、起きましたねえ」
「あれ…僕…」
「無痛分娩は多少の危険がありますからね、君だけでも無事で良かったです」
「え…いつの間に?え?え?僕だけって…お腹の子は…まさか?!」
「はい…残念ながら、死産でしたよ」
「そんな!!…そんな、なんで…」
「君のせいではありませんよ高屋敷君、運が無かったのです…そう落ち込まずに…」
「でも、だって、僕がもうちょっと大きかったら…五人でも狭くなかったんでしょ?」
「それを言うのでしたら、私がメロンの遺伝子などを組み込まなければこんな事には」
「100パーアンタのせいじゃん!!僕悪いとこなんにも無かったじゃん!?」
「良かれと思った遺伝子組み換えだったのです!きっと美味しくて丈夫なメロンになると思って私は、私は…っ!」
「メロン育ててるじゃねーか人を何だと思ってんだ!!」
「培養地ですが何か?」
「培養地じゃないよ人間だっつってんだろ!!」
「サイズは小さいですが、メロンのお漬物の名産品の例もありますし折角なので食べましょうか。どれも奇形児ですけど」
「食わねーよ!!てか怖いよ色々と!」
「これが一番君のショックが少なそうですねえ、はい高屋敷君これが長男ですよー。胴体が人間で頭部がメロン、蔓の部分には巨大な一つ目が生えてますけどどうやって食べます?」
うわあああ悪夢だ!悪夢だあーーーーー!!!

 BACK