「あれ?開かない。(ドンドン)安西センセー?いないのー?」
(「…いません」)
「いるじゃない!なんで入れてくれないの?」
(「君が昨日…折角の雛祭りに、ここに来なかったからです」)
「え…あ、それは…だって受験しに行ってたから」
(「受験と雛祭りのどっちが大事なんですか?!」)
「受験だよ!そこは普通受験だよー!」
(「もう良いです。高屋敷君など知りません…私にはこの高屋敷君人形がありますし、ああ、女雛の格好がよく似合いますねえ…」)
「また人形遊び!?やめてよぅー」
(「…おや?高屋敷君、そんな所に置きましたっけ?」)
「え?」
(「おかしいですねえ…そんなに髪が長かったでしょうか…」)
「魂宿っちゃってるじゃないやめてー!供養してー!」
(「でも、長い髪も似合っていますよ」)
「そういう問題じゃないよ!」
(「ふふ、そっぽ向いたりして…照れ屋さんですね。けれど怒った顔より、笑った顔を見せて欲しいです」)
「うわーもう表情も変わるし完璧生き人形じゃん!」
(「そうそう…ああやはり、そっちの方がずっと可愛い…」)
「手懐けてる…」


「おや?高屋敷君そんな所で何してるんです」


ええぇ!?!
「な…何です人の顔を見て大きな声を出して」
「だだだだって今…部屋から…え?あれ?」
「部屋?…ああ、そういえば昨日の雛祭りに君来なかったでしょう。折角桜餅も甘酒も用意してあげていたのに」
「だって受験で…ってそうじゃなくてー!ヘンだよさっきまでセンセの声中からしてたじゃん!」
「?よく解りませんが騒がしいですよ高屋敷君。腐る前に食べていってくれます?」

カチャカチャ…ガララ

「ぎゃー開けないで開けないで人形がー!!」
「人形?どうして知っているんです?」
「だって…え?」
「よく出来ているでしょう、知り合いの仕立て職人に貰ったのです。君の人形には少し大き過ぎましたがね」
「あ…あああ安西先生…安西先生の人形も…」
「ええ、まあ君は嫌がると思いますが、他に着せる人形も無かったので男雛用に」
「うわああ処分してそれ処分して!やばいから!多分自分が人形だってこと忘れてるから!!」
「は?」
「燃やして早く!神社とか寺とかで燃やして!怖いから!!」
「何を言ってるんです…駄目ですよ、これはもう知り合いの人形師に渡す約束がありますもの。今日の午後には取りに来る予定です」
「ダメダメダメー!!絶対ダメ!こんなもん世に解き放ったら大変なことに…
「ああもう煩いですよ高屋敷君。帰りなさい。ほら、甘酒も桜餅も雛あられも家でお食べなさいな…車に気を付けて帰るんですよ(ガララピシャン!)」
「え、あ、だっ…ダメだってば安西センセー!!」



次の日

人形はやっぱり引き渡されていて

どこに行ったのか

安西先生に聞いても答えてくれません

この世に安西先生が二人になったのかと思うと

僕は怖くて怖くて眠れません

 BACK