―【校長室】―

バーン!

たのもー!!
【……ノック位しないか、高屋敷君。それに何だねそのコスプレまがいの格好は】
「あのねー僕ゆーしゃなんですー!まおー倒しにきたんですよー!」
【意味が全然解らん。説明しろ、同じくコスプレまがいの安西教員?】
「つまりですね、高屋敷君はRPGごっこがしたくてあんな格好で素っ頓狂な事を口走っていて、私はそれに付き合っているという訳です」
【ふん…お前の後ろに居るのもそうか?】
『はい、校長先生。因みに高屋敷君が勇者、安西先生が魔法使い、俺は剣士といった役柄になっています』
「宿屋は保健室なのー!」
【あのなあ聡美…あまり甘やかすとロクな事にならんぞ】
「人の事を言えるのですか氷室さん、貴方が甘やかすから私はこんなに我儘に育ってしまいましたよ」
【自覚があるなら直せ。…まあ良い、それより勇者パーティーが校長室まで何の用だ?】
「だからー魔王倒すのー!!」
【……私か?】
「ええ、ご名答です」
『飽くまで遊びとして受け取って下さい、校長先生。俺は実際に刃向かう気は有りません』
【どうして君までそんな遊びに付き合っとるんだ…】
『申し訳有りません、校長先生。しかし、安西先生のご命令でしたので』
「とゆーわけで魔王覚悟ー!これ以上お前の好きにはさせないぞー!!」
【私は付き合う気はないぞ。早く帰れ】
「私達では力不足だと?ふふっ…その過剰な自信が貴方の天下を終わらせる事になりますよ…」
【何だ、無理矢理か?無理矢理にでも話に組み込まれるのか?】
『……来る!』
【何が来るんだ、何もしとらんぞ】
「来る前にこっちから行っちゃえ!うりゃぁ秘剣技〔人体切断マジック〕ー!!」
【馬鹿な、他の二人なら未だしも君が私に適う訳が…(ドグシュ!)な、何ぃっ!?】
『確かにいつもの高屋敷君では、決して校…魔王には適いませんが』
「ふふふ…しかし、今の高屋敷君は私達二人の力で格段にパワーアップさせています。氷室魔王さん、御覚悟を」
【何故そこまで真剣なんだ?…まあ良い、お前達がそのつもりなら、こちらも本気を見せようか…】
「!?…来ますよ二人共!しっかり防御を…」
【さっさと片付けて、仕事に戻らねばならんからなぁ!!


ドゴオォォォォーーーン!!!!


『ぐっ!』
「きゃうぅっ!!!」
「っ…!」
「痛…ぁ……あ、あ、ゴホッゲホッッ!?」
「ちっ…高屋敷君、今治癒魔法をかけます、少しだけ我慢を…」
【うん?どうしたお前達?まだ半分の力も出しとらんぞ。その程度で私に挑んだのか?】
『第二陣は俺が防ぎます。安西魔導師は高屋敷勇者君を』
「いえ、次はあれよりも強力なものが来るでしょう…一人では無理です、私も防御の術式を広げますよ」
【そんな暇をやるとでも思うか?…行け、地獄より引き連れし魔獣よ…奴らの頭を噛み砕け!!】
「な…馬鹿な、どうやってあんな化け物を…!?」
『やはり間に合いません、ここは俺がやります』
「ゲホッ…でも会長、あんな数一人じゃ!」
『五百九十七匹。残りは…』
「…分かりました、何とかしましょう。…高屋敷君下がりますよ!」
「でも…!」
『高屋敷君、君なら…きっと平和を取り戻せるよ。……さよなら』
せ、生徒会長ぉーーー!!!


―――――――――――――――


【ふん…死んだ、か…まあ私に逆らった時点で決まっていたがな】
「会長君…!」
「ひぐっ…会長ー…!」
「君が泣いてどうします!勇者でしょう?」
「でも、だって…!」
【さてと…さあ、後追いの準備は出来たか?】
「くっ…!高屋敷君、私の傍から離れてはいけませんよ」
【ああ、冥土の旅路で迷子にならんよう、しっかり面倒見てやるが良い……これで終わりだ、〔絶技破壊演舞波導〕!!】
「いやあぁ!!」
「ぐぁ…っ!ま、不味いですね…今の私の状態では…!」
「!?センセ血が!」
「これは…っ…大したことではありません。しかし、参りました、展開させた術式が、魔王に食われて…ああ、本当に不味い。防壁術式まで食い破られる」
「ど、どうしよ…!!」
「さあ、どうしましょうね?…全く、あの人はいつまで掛かって…!!」
【なかなか美味い味だ…だが、これで食い納めか。残念だが、最後の一口と…



『悪いが、そういう訳にはいかねえなあ』



【ぬ…誰だ!?】
『あーども、戦士の相模です校長魔王?いや、魔王校長?』
【…君もか、相模教員…!】
『よぉ安西…苦戦してるみてぇじゃねえか』
「ふっ…遅かったですねえ、全く…」
『ああ、待たせたな。…会長はどうした?』
「ぁ…」
「…」
『……そうか…まあ、そんなら弔い合戦といこうじゃねえか。頼まれたもんなら持って来たぜ』
「やれやれ、本当にギリギリでしたよ…」
『間に合っただけありがたいと思えよ、こっちもギリギリだったんだ』
「持ってきたって…なに、を?」
『テメーがまともな勇者になる為の武器だ』
「聖剣エクスカリバー…魔王を倒す為の伝説の剣です」
「え?え?!い、いきなり言われても僕そんなの使いこなせないですよ!」
『使いこなすも何もねえ』
「私の魔力と、相模さんの武力を君にぶち込みます。君は統合の器となって剣を振れば良い…馬鹿にもショタにも出来ますよ」
「…僕ホントに勇者なの…?」
「器に成れるのは君だけです。…さあ、始めましょう相模さん」
【戯けか貴様等は、今のを聞いてやらせると思うか?】
「やらせてくれたじゃありませんか」
【何?】
『俺達が馬鹿みてえに解説何ざ語るかよ…おらいけや安西!お前の薄汚ねえ魔術でよぉ!!!』
「一言余計ですね。…術式第三十三番発動、術式第八番発動、術式第百七十…
【馬鹿な…!何時の間に術式の展開を!?】
『お約束は嫌いな質だ…ダベってるところを殺らなかったお前の負けさ』
「術式第百九十一番発動、術式第七十五番発動、術式第十三番発動、術式第百二十…」
【ふん…させるか、術者を破壊して術の構築を止めてくれよう!!】
『おっとぉ!させるかってなこっちの台詞でな!!』

ガギイイイィィーーーーィンン!!

【貴様!を止めただとっ…!?】
『アイツの念仏もそろそろ終わりだ…最後の手向けは高屋敷から貰いやがれ』
「術式第百九十九番発動!!全術式の発動終了です高屋敷君…ぶっ壊れたら殺しますよ、最大補助魔術〔神力構成式〕!!!」


「っあ?!あ、うわ…うあ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ーーーーー!?!!


『…クソが…!』
【……何だ、笑わせるな…最後の切り札は力を注がれ過ぎて粉々か?】
「あ゛っあ゛あ゛!がぁっ!?ぐぁあ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛…!!」
「っ…高屋敷君…」




「あ、あ…あは、あはははは!!」
【?!】
『けっ…冷や冷やさせんじゃねえよなあ…』
「君なら出来ると思っていましたよ、高屋敷君…!!」
「そうだ…僕は勇者様…魔王を倒す、世界で一番強い勇者様……えへへ、魔王め!覚悟しちゃえー!!」
【己この私が!この私が高が人間なんぞに!負けるものかぁーーーー!!!】



ズガァアアアアアアアアーーーン!!!!



【ぐおおぉ!?!おおっ…があああああああああ!!】
「僕は勇者様だもん、魔王は勇者に勝てないってのは常識だよね♪」
『よくやったじゃねえか高屋敷。ガキの割にはマシな方か』
「ふふっ、マシだなんてとんでもない。高屋敷君は世界で一番、良い子ですよ」
「えへ、えへへー!それほどでもないですよぅー!」

【…く…ふん、精々浮かれているが良い……】

「え?」
「…」
『往生際ワリぃなあ』

【覚えて置くが良い…人間共、貴様らに欲望がある限り…悪は決して消えはしない……】

「そんなこと…!」
『相手にすんな、高屋敷』
「もう行きましょう、私達は勝ったのですから」
「…うん」




【復活の日はそう遠くないさ…くっくっく…はは、はっははははははは…!!】



―――――――――――――――



【………では、各自仕事に戻るようにな】
『うぃーす』
「僕世界救ったの!えらい?えらい?!」
『…(もう生徒会の始まる時間だな…)』
「ええ、偉いですねぇ。だから進学の希望を考えましょうね?」

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