「高屋敷君、ランドセルを入手したんですけれどちょっと背負って
「ロリコン!ショタコン!殴る!今度こそ殴る!!
「別にそんな気はありませんけれど、最近デパートで新一年生準備が凄いでしょう?何だか微笑ましくなって買ってしまったのですが、よく考えてみれば使い道が無くて」
「これだから金余りは嫌い。もっと考えてお金使ってよ」
「だからあげます高屋敷君、背負って下さい」
「いらないよ!流石の僕でも小さいよ!」
「それがそうでもないのです。売り場で吃驚したのですが、昨今のランドセルというものは肩紐もよく動くようになって成長しても全く苦しくありませんし、何より大変軽いのです。私が小学生だった頃を鑑みると進歩しているのですねえ」
「僕の頃だってだいぶ軽かったけど…そんなに重かったの?」
「そうですねえ、変質者を撲殺出来る程度には鈍器でしたよ」
「よく分からないよ安西先生!」
「黒のランドセルが毎日の登下校の度に赤くなってしまうんですよ。ああ、色といえば最近のランドセルは色々な色がありますよね」
「そ、そうだね、個性の時代だもんね…」
「私はあんまり好きじゃありませんけれどね。高屋敷君は?」
「んー僕はいいと思うですよ。ピンクとか水色とか可愛いしー」
「でもほら、低学年は外見に性差が少ないでしょう?背後から判別出来ないと何かと困るんですよね」
「やっぱロリコンとショタコンじゃねえか!!前々から疑ってたけどやっぱりか!?」
「だって純粋で可愛いじゃありませんか。一緒に遊んでいて変なことしてこないのって幼児だけですし」
「…ちょっと混乱してきた」
「性犯罪の被害者が幼児や女性だけとは限りませんよ」
「色々大変なんだねセンセ、遊び相手にも不自由だったんだね」
「まあ最近は高屋敷君で遊んでいますから」
「でって言うな!!とだよと!」
「そういえば高屋敷君はどんな小学生だったのですか?今とそう変わらなそうですけれど」
「別に普通だよう。中休みと昼休みはみんなでグランドとかたいくかんでおにごっことか凍り鬼とかー影ふみとか?」
「ああ、影ふみは私もよくやりました。懐かしいですねえ」
「ホントー?じゃあさ、今からやろっか?二人だからちょっと寂しいけどー」
「良いですねえ。校庭は未だ雪が積もっていますし…体育館に行きましょうか」


―――――――――――――――


「なんか久々にたいくかん来たー。もう授業は無いから一ヶ月以上ぶりー」
「受験生でも運動をした方が良いですからねぇ。私が鬼になりましょう、どうぞ高屋敷君?お逃げなさい」
「うん!わーい楽しいのー!!」
「…ふふふ…」
「♪かっげふみーしましょうー☆逃げるカーゲー躓くカーゲー…」
「…(ダン!)」
「ヒィッ!?!」
「ふふっ……踏みましたよ高屋敷君…君の影を、ね…」
「あ、あ、あ…うん、うんそう…だね」
「捕まえました、君の影を。捕まえました、君の半身を」
「どして…身体が、動か、ない」
「ま、影縫いの術みたいなもんです。影の君を私が踏んでいますから動けませんよ」
「うう…なんで?どうして先生はいつも楽しい遊びで僕をいじめるの?」
「それは私にとって君をいじめるのが楽しい遊びだからです。大体、影踏みだなんて呪いじみた遊びへ魔術に通じた私を誘う君が馬鹿ですよ」
「僕は、僕はセンセと遊びたかっただけなのに…ぐすん」
「安心なさいな、このまま影を殺して君の魂を壊すことも簡単ですが、そんな可哀相な事しませんよ」
「放してくれるの?」
「いえ、影をひっぺがして私の家に飾ります。玄関脇が淋しいと思っていたところでしてね」
「なんで人の影をそんな軽い気持ちでインテリアにしちゃうの?!返して(バリベリベリー)いだだだだ!!?」
「ピーターパンでこんなシーンがありましたねえ…大丈夫ですよ高屋敷君、前に作って仕舞い込んでいた君の人形があります。あれに入れて影人形にしますから」
「やめてよ返してよ!」
「丁度良かった、ランドセル掛けにも出来ますね。…さて、もう君の影はありませんから影踏みも何もありません。帰りましょう、高屋敷君?」
「……」



あの日以来

急に鋭い痛みが走ったかと思うと

なにもしてないのに傷が出来ていたり

息が苦しくなったり

気絶したりするようになりました

ねえ安西先生お願いだから

僕の影を虐めないであげて

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