ガララ


「こんにちわ安西センセー」
「こんにちは、高屋敷君。ところで高屋敷君はお裁縫が出来ますか?」
「お裁縫?あんまりやらないけど…」
「そうですか…では、自分でやりましょうかねえ」
「どっか破いたの?それくらいなら僕できるですよー」
「いえ、切れてしまったのです。君と私の間に掛かっていた赤い糸が」
「また自分に都合のいい幻覚を見てる!!そんなもんがいつ掛かってたんだよ!?」
「さあ高屋敷君小指を出しなさい、こうして布団針で真紅の絹糸を縫い付けてあげましょうさあさあさあ!」
「ぎゃああああああ指が指がぎゃああ千切れるうぎいぃがあああああぁぁぁ!?!
「あ。……千切れてしまいましたね」
「い、い、いいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ…っ!……!!」
「布団針では空く穴が多過ぎたのでしょうか…。でも大丈夫ですよ高屋敷君、ちゃんと絹針が用意してありますし、君にはもう一本小指がありますしねえ」
「もうやめてもうやめてもう許してお願いだから言うこと聞くからなんでも聞くから…」
「うーんそれではロマンティックさに欠けてしまうのですよねえ〜…という訳ではいぷすっと」
い゛い゛っ!!
「針が細いからそんなに痛くないでしょう?…しかし血は出ますね……あはは、これならわざわざ赤い糸を用意しなくても、白い糸で良かったかも知れませんね?」
「痛い、痛いぃ…!」
「あれ、痛いですか?でもまあ、もう縫い終わりましたから大丈夫ですよ。絆創膏を巻いてあげますね」
「ひっく…ひぐ……っうくぅ……」
「んー素敵な小指になりましたねぇ。よく似合っていて素敵ですよ」
「…っ…ふ、ふふ…」
「おやおや?普段の虐待に比べたらそんなに痛くなかった筈ですが、おかしくなっちゃいましたか高屋敷君?」
「なってないよ…そうじゃなくて、ねえ、安西センセ…?」
「はい?」
「僕の指に赤い糸つけたんだからさ…安西センセの小指にもつけないと意味ないよねえ…?」
「………ははあ、成る程?仕返しをしたいのですか」
「その細くて白くてすらっとした長い指を布団針で千切ってやるから覚悟しろー!!」
「ふふっ。ええどうぞ、構いませんよ?小指一本なんてケチなことは言いません、何本でも好きなだけちぎって下さいな」
「う…?…あ、ん、…いい度胸じゃん…」
「どうしました高屋敷君…?さあ、どの指でもお好きなように?」
「あ…じゃ…右の小指……いい?」
「君のやりたいように…」
「うん……あの、それじゃさ、刺すよ?布団針…」
「はい、いつでもどうぞ」
「……ぅ…(ズブチッ!)」
「ああぁっ!!」
「!?」
「……あ、ああ…高屋敷君?…続けて、構わないのですよ?」
「安西、センセ…痛いの?いつもは腕もげても全然平気なのに?」
「…君に傷付けられると…」
「…うぁー…」
「続けないのですか?」
「つ、続けるよ!…仕返しだもん…痛くて好都合…だもん」
「では…」
「…(ガリリブチ!ゴリッブツン!グチ、グチ、ずぶチュッ!!)」
「っく、ああ!うあぁ…っ!!あ、あ、ああぁーーー!!!」
「やめ…っもう、もうやめる…」
「くっ……は、…はぁ…はっ……どうしてです、高屋敷、君?まだ、私の指は一本も、ちぎれていません…よ?」
「だって、だって、僕こんな怖いこと出来ない」
「君がやりたいと言ったのに?」
「…でも、出来ない」
「続けて下さい、高屋敷君。私は君に贖罪をしたい。君と同じ苦痛を味わうことで君の心の苦痛を軽減させたい」
「もういいから…もうやめて…(ドンっ!)うあ!?」
「どうして君はそんなにも優しいのでしょう?けれど私は君に許して欲しい。強引なやり方ですみませんね、でも、こうする以外に君は私に傷を付けてくれそうにありませんから」
「重いです、やめて、降りてよ…あがぁっ?!」
「可愛い歯です。まだ乳歯が残っている…さあ高屋敷君、私の小指を噛み千切って下さい。私に苦痛を与えて下さい。君の痛みを私に下さいな高屋敷君!!」
「やっ…やだあ!!ドンっ!)」
「っ!?」
「あ…ご、ごめんねセンセ…ごめんなさい……た、立てる?」
「どうして…どうしてですか高屋敷君……突き飛ばすなんて、どうして…」
「ごめんなさい…僕、僕は…あ、あんなこと言ったけどでも、やっぱりそういうのダメだと思うから……だから、もうやめて」
「………」
「…あの」
「…ああそうですか。じゃあもう良いですこれいりません(メゴキブチッ!)」
「うげ、なに自分で指もぎ取ってるんですかってやっぱり痛くないんじゃん!?なんだったのさっきの痛がり様は?!」
「演技に決まってるじゃないですか」
「くそー何回も騙されてるのにまた騙された!」
「ああ、あ…がっかりです。折角トラウマを植えつけようと思ったのに、全く君は思った以上のへたれですよ」
「悪かったねー!!つーか普通にトラウマになったよ!」
「どうせ小指の赤い糸という単語を聞いたら圧し掛かってきた私の重みと狂気に満ちた瞳をフラッシュバックする程度でしょう?」
「? …じゃあどんなトラウマがよかったのさ」
「そうですねえ、計画としては初めて自らが残虐な行為を行ってしまったことによる逆説的なトラウマで君のサディスティック面が目覚める予定でした」
「なんで!?なんで僕をサディストに目覚めさせたいの?!」
「マゾヒストを虐めるよりサディストを虐めた方が楽しいって知ってますか?喜ばれるなんて不本意ですね。私は純粋に、苦痛と憎しみにギラつく瞳が徐々に光を失っていく様を見たいのです」
「一歩上を行くド変態だな!大人しくプレイで喜んでなよ!!」
「けれど、まあ…良いです。先生は虐められて気持ち良さそうな顔をする高屋敷君も、好きですよ☆」
「自分に都合のいい幻覚見るなつってんだろうがー!!」

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