ガララ

「こんにちわー安西先生」
「こんにちは高屋敷君。ちょっと足の踏み場がありませんから気をつけて下さいね」
「相変わらずいっぱいチョコ貰ったね。でも僕だって貰ったよ」
「…ああ、友チョコ交換で」
「そーだよ友チョコ交換でだよ！！悪かったね女の子認定で！！」
「で、君から私の分は？」
「あー、あのね、家に忘れてきちゃったから明日持ってく（ドゴメキョ！！）あべえっ！？！ 」
「君は行事の大切さというものを何にも解っていません！何です明日持ってくるとは？馬鹿にしているのですか？！」
「そんな怒ることないでしょ？！いったいなもう首がー！！」
「だって、遅れてしまっては愛が無いじゃありませんか」
「そんなもん元から無いよ」
「高屋敷君たら冷たいですねぇ…私はこんなにも君を愛しているというのに…」
「放せ変態ー！っていうか愛してる人間が愛する人の首を折るもんか！！」
「まあ冗談はさて置き、早く取ってきて下さい。私はチョコレートが食べたいのです」
「いいじゃんこの山済みになってるチョコ食べれば…媚薬とか毒薬とか呪物入っててもセンセどうせ効かないんでしょ？」
「そりゃあ効きませんが良い気持ちはしませんよ。口に含んで妙に糸を引く感触があるなと取り出してみたら、なっがい髪の毛が喉の奥からズルズル引きずり出てくるあのおぞましさが君に解るのですか？」
「…取ってきたげるね」
「ありがとう御座います」

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「ただいまあー！ふぁ、もー疲れちゃったー…はい安西センセ、チョコだよ」
「これはこれはお疲れ様でした。ありがたく頂きますね」
「今年はココアのスポンジケーキに砂糖煮のオレンジを挟んで三段にしてから溶かしたブラックチョコレートを全面にかけてみましたー。どう？おいし？」
「素晴らしい甘美さです高屋敷君。この舌の表面にブラックチョコが触れた瞬間の苦味と次に噛み砕いた瞬間鼻腔を擽りながら現れるオレンジの爽やかな甘さがカカオの香りをより一層引き立てて」
「すごい頬張ってるのにどうしてそんなに流暢に喋れるの？でも喜んでくれて嬉しいですよぅ」
「君のお菓子作りは毎年上達していきますね。生徒の特技が成長していく様を見ることが出来て先生、とっても嬉しいです」
「…センセ、僕のお菓子はすごいほめてくれるのに、料理になるとものすごく罵るよね」
「不味いですもの」
「ぐすん…」
「そうそう、今年のホワイトデーお返しは何が良いですか高屋敷君？」
「去年は焼肉って言ったら酷い目にあったしー…んぅ、なにがいいかなー？」
「君の料理を食べてあげるというのは如何です？」
「うっさいうっさいうっさいのー！！それのどこがお返しなのさ嫌がらせの嫌味だよバカー！」
「嫌ですねえ高屋敷君たら、料理を食べるというのは一種の表現です。みなまで言わせないで下さいな」
「え？どゆこと？わかんない」
「ちゃんと言って欲しいですか？」
「うん」
「では言いましょう。高屋敷君、君をお嫁に貰ってあげましょう。どんなに不味い料理でも朝昼晩と総て平らげてあげますよ」
「だからどこがお返しだっつってんだよ死ねー！！変態教師死ねー！！」
「何を馬鹿な高屋敷君、顔も良くて高身長で高収入で高学歴で実家は金持ち家柄も良しな私と結婚出来る等とは君の様な可愛いだけが取り柄の凡人には夢のような出来事ではありませんか。おまけに君のクソ不味い料理意を食べてもらえるし永久就職も出来て受験からリタイヤだって出来る。一体この条件で何が不満だというのです？」
「僕が男だからに決まってるでしょっつーか女でも結婚しないね！安西先生みたいな根性悪と誰が！誰が結婚するか！！」
「…ふうん、やっぱり自覚は無いのですねえ」
「はあ？！」
「ねえ高屋敷君…君は如何して何だかんだと言いつつ私の傍にいて、バレンタインケーキなんかを焼いてくれるんでしょう？」
「…は？」
「君との付き合いももう三年程になります。さて、その長い時間の間に、私が君の精神の奥に何をしていたのでしょうか」
「なに…なに言ってるの…？僕は…」
「怖がることはありませんよ…大丈夫、そのうち精神の表層にも浮かんでくる……君は、私に…そう私のことを……」
「僕は、僕は、僕が？僕が、僕は、安西先生のことを？」
「……少し早いですが、もうお返しを差し上げましょう。何が欲しいですか、高屋敷君？」
「…僕は…」
「…」
「僕は…指輪、ダイヤの、ダイヤの指輪が欲しいの、ダイヤの、安西先生と、三ヶ月、お揃いで、お揃いの指輪ダイヤの、ダイヤモンドの僕と安西先生でお揃いの指輪でお給料の三か月分、が、欲しい、の」
「ふふっ…そう言ってくれると思っていましたよ」
「くれる、くれるの？僕に、僕に、僕と？」
「ええ勿論。さあ、エンゲージリングです…嵌めて御覧なさい？きっと君の指にぴったりですよ…」
「あは、あはは…嬉しいの、僕、僕、安西先生のこと、僕、安西先生と」
「君の事を愛していますよ……結婚しましょう、高屋敷君」

「する訳ないだろこの結婚詐欺師ー！！！」
「高屋敷君たら、指輪を燃やすことないじゃありませんか」
「あぶねーうっかり頷くところだった！！ものすごいギリだった！僕の精神の脆弱性突くのいい加減にしてよ安西センセのバカ！！思い付きで人の人生狂わせるな！！」
「だって高屋敷君がなかなかお返しを決めないんですもの…」
「あと一月もあるんだからいいじゃないゆっくり決めたって！」
「それじゃあご馳走様でした。もう帰って良いですよ」
「テメー！！いい加減にしろ僕がいつまでも虐待に甘んじてると思うなよー！！」
「残念ながら、君はいつまで経っても私の玩具と決まっています」
「…え、あの、さっきの話は冗談なんだよね？さっきのは、一瞬だけの催眠術…なんでしょ？」
「……あ、職員会議の時間ですね。それではもう帰って下さい、また明日会いましょう、高屋敷君☆」
「ま、待ってよ答えて安西先生ウソなんでしょ？！ちょ、ま……うああああぁぁぁーーーーーーー！？！？！！ 」

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