もう三が日もとっくに終わったのに

安西先生がおせちを作って来いとか言うから

僕は泣きながら作りました



「…ははあ、相変わらず不味い料理ですねぇ」
「泣きながらがんばって作ってやったのにそれか!!ふざけるなー!!」
「ふざけていませんよ。何故なら君の料理下手をいびる為に作れと言ったのですもの」
「涙も枯れ果てたよ…」
「ガラナを買ってありますよ」
「水分が足りないとかそういう即物的なことじゃなくて」
「いやー不味いですねぇ〜☆」
「うるさいな!!嬉しそうに不味いって言うな!!」
「食えない事も無い。というこのギリギリラインが堪りませんね、リアルで良いですよ」
「だって…それでも味見して作ってるんだよ……不味いのは気付いてるけど、なに入れても直んないんだもん」
「まあ才能ですから」
「ねー安西先生、僕のこと女の子にしてくださいよぅ」
「な…っ!?」
「なにそんな驚いてんの?」
「馬鹿な、高屋敷君が自らそんな、得ろげのような台詞を…?」
「変な意味で取るからだろ!違うよぉ、女の子だったら料理上手じゃん?だから黒魔法でも変な科学でもいいから女の子にしてみてよー」
「なんだ、つまりませんねえ…しかし女子だからといって料理が上手いとは限らないでしょう?」
「だってー」
「実際のところ料理人は殆ど男性ですしね、味に拘るのは男性なんですよ。にも拘らず家事で料理を担当するのは女性ですが、これは女性は手抜きが上手いからです」
「マニアは男に多いとか、そういうこと?」
「大体そんなところです。ですから、女の子になっても料理上手になるとは思えませんよ」
「じゃあどうすりゃ上手になるのかなー?」
「んー…そうですねえ、見た目の方は大分まともになってきましたし、手際に問題があるとは思えませんよ」
「ならやっぱり味?」
「でしょうね。味見をして不味いと思えるのなら味覚に障害もなさそうです、調味料の使い方が問題ですね」
「気を付けてるつもりなんだけどなぁ…」
「気を付け方が足りないのではありませんか」
「そんなことないよ!」
「へえ、そんなことなくてこんなクソ不味い料理が出来るのですか?では高屋敷君はある種の天才だと言えますねぇ〜尊敬に値しますよこのド料理下手」
「う、うわーん!?あぁーん!!」
「こんなものを食べるくらいなら砂でも噛んでいた方がマシです。この数の子も出来合いのものを使っているくせにウスターソースをかけるなどという暴挙のせいで全く壊滅的な味の破壊です。これじゃ子供が出来る訳もないでしょうねえ、蛆虫でも噛み潰していた方がまだ孕む可能性があります。それにこの田作り、どの魚も目が死んでいますよ」
「死んでるんだから当たり前だよ!」
「おや、そうなんですか?てっきり高屋敷君が自分の目に似せて調理したのかと思いましたが。あとこの黒豆、どうしてしょうゆで煮付けているんです?マメに働く奴らになんか醤油をぶっかけてやるという意思表示ですか?そろそろ進路を真面目に考えないとニートですよ高屋敷君」
もう分かったからごめんなさいってば!!もうやめてよー!!
「分かれば良いのですよ。これからもお料理頑張って下さいね」
「ううう…でもさ、でも、がんばっても上手くいかないんだもん…どうすりゃいいの?」
「それは…相手の気持ちになれば良いのですよ」
「相手?あ、食べさせる相手?」
「いいえ、食べられる料理の気持ちになってみるのです。という訳でさあ高屋敷君食材になってみましょうね☆」
「ぎゃああ今まで散々食べられてきたからもう良いですグゲガオゴブフッッ!!!

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