雪がいっぱい降りました

なので母さんに言われて

家の前で雪かきをしています

半分くらい終わったけど

ちょっと休憩して雪だるま作ろっと


「こんにちは高屋敷君、雪だるまですか?」
「あれ、安西先生!えへへそうですよ、可愛いでしょ」
「ええ、高屋敷君そっくりの小ささで可愛いです」
「え?そんなにちっちゃいかなー…」
「それはもう、私が作ったならこんなもの…作ってみせてあげましょう」
「大人気なーい」
「遊びにも全力を出すのが大人ですよ。ついでに雪かきもやってあげます」
「ホント!?ありがとセンセ。がんばってねー僕ここで見てるから」
「高屋敷君、待ってる間寒いでしょう。お金をあげますから、温かい飲み物買ってきなさいな」
「いいの?」
「ええ、その代わり私の分もお願いしますね。…はい」
「ありがとー。じゃ行ってきまーす!」
「はい、転ばないようにね」


―――――――――――――――


「ただいまーセンセコーヒーでよかっ…わあなんじゃこりゃ!?!」
「おかえりなさい高屋敷君。買ってきてくれました?」
「か、買ってきたけど…なにこの雪ダルマー、でか過ぎて顔の部分が見えないよー」
「全長五十メートルです」
「僕の家の前、そんなに雪あったっけ。そして十五分で作ったの?」
「まあ全部片付けたら、それくらいにはなりますよ」
「あーホントだすごく綺麗になってる!!ごめんねセンセ、疲れたでしょこんなにー」
「なんて事ありませんよ、良い運動になりました」
「ごめんねごめんねありがとう安西先生。あとでなんかお礼するね」
「気にしなくて良いのですがねえ…」
「あー、雪だるまよりカマクラ作ればよかったね。中でコーヒーとかココア飲めばよかったねー」
「…いえ、作ってありますよ」
「え!?ウソ、どこに?」
「ほら、雪だるまの影に…」
「……さっきまで絶対無かった」
「見間違いですよ。だって、現にあるじゃないですか」
「でも、でもこんなでかいの見過ごすはず…」
「まあまあ気にせず。一緒に中で温かい飲み物を堪能しようではありませんか」
「うん…」
「以外に寒くないものですねえ、風も入って来ないですし…」
「安西先生…コーヒー、飲まないの?」
「ん?…ああ、ちょっと…ねえ」
「……もう冷めちゃった?」
「え?」
「だってそれ…湯気もう出てないしさ」
「んー…」
「ココアと取り替えたげよっか?これまだあったかいよ?」
「良いのですよ高屋敷君。気にしないで飲みなさい」
「んーんやっぱ取っ替えたげるよ!雪かきしてくれたんだし、はいそれちょうだい…?」
「…」
「………コーヒー…凍って、る?」
「…そうですねえ」
「………どうして?」
「ああ、高屋敷君…」


僕の頬を挟んだその手は

雪の様に白くて冷たくて



「誰にも話してはいけませんよ」



おでこに冷たくて柔らかいものが触れて

僕はそのまま目を閉じて…




―――――――――――――――






「…高屋敷君、高屋敷君」
「……あれ…僕…?」
「高屋敷君、そろそろおうちに入りましょう。いくらカマクラといっても、眠る場所には不適当ですよ」
「寝ちゃったの?」
「ええ、疲れていたのでしょうね。ココアは零しそうでしたので私が頂きましたよ」
「…コーヒーは?」
「コーヒー?あれは私用に買ってきてくれたのではありませんか。当然飲みましたよ?ほら」
「そっか、そう…だよね」
「いけませんでした?飲みたかったのなら今度買ってあげますから…」
「ううん違うの。夢だったんだね、びっくりしちゃったよ」
「夢?」
「なんでもなーい。それよりさセンセ、雪かきのお礼にお昼食べてってよ。鍋焼きうどんだよ」
「ああ良いですねえ…では、お言葉に甘えるとします」


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「いやぁそれにしても積もりましたねえ高屋敷君」
「積もっちゃったねえ雪。センセ雪かき手伝ってくれたけど、自分家はいいの?」
「ああ、人にやらせてます」
「去年もそうだったね。…あ、鍋焼きうどんできたって」
「高屋敷君が作ったのですか?」
「母さんだから安心しなよ、ちょっと待っててー」
「ええ…」
「…はい、どーぞ。揚げ玉入れる?」
「お願いします」
「先生は揚げ玉をサクサクのうちに食べる派?デロデロになってから食べる派?」
「デロデロ派です」
「だよね、僕もー」
「鍋焼きうどんは温まりますねえ」
「そうだねー。あ、揚げ玉ちょうだい」
「どうぞ」
「うん。……」
「? 何ですか高屋敷君、手を離して下さいな」
「センセの手あったかいねー」
「ああ、ストーブの近くに座っていますし…位置交換しますか?」
「そうじゃなくてねー…あのね、さっきの夢の話だけどね?」
「カマクラでの?」
「それそれ。あのねえ、さっきの安西センセ、雪かきとかカマクラとか雪だるまとかすごく早かったでしょ?それに、夢の中では先生の手がすごく冷たかったの。だから僕、安西先生は雪女なんだって、僕…?」



触っていた安西先生の手が

温かかったはずなのに

「話してはいけないと言ったではありませんか」


ふっと冷たい息が首筋にかかり

僕は凍りついて動けなくなった

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