っ掛けられたり

冷水を浴びせられたり

暖房の無いこの部屋で真っぱで放置されたり

およそ虐待と名の付くものは殆どと

それ以外のオリジナリティ溢れる虐待も

この一晩ですべて体験しました

確実に僕の人格形成の枷になりました


覚えてろよ


「…来ませんねえ高屋敷君…そろそろ用務員さんの見回りの時間だと思うのですが…」
「その時がテメーの人生が終わる時だ!!絶対訴えてやるから覚悟しろー!!」
「おやまだそんな事が言えるのですか?では次の虐待プログラムを開始といきます?」
「ごめんなさいなにもしませんもうしませんぶたないで」
「素直な高屋敷君は大変可愛いです、よしよし」
「助けて…もう助けて…もうおうちに帰して…」
「私も帰したいのは山々なのですが、出られない事には仕方ありませんねえ」
「なんで出られないのさ!」
「君が気絶している内に、お湯を窓枠とドア枠に流して氷を溶かそうとしたのですが全然解けなくてねえ。それどころかそのお湯が逆に凍ってしまってもうどうしようもないですよ☆」
「バカー!!そんな事くらい道民なんだから常識じゃんかセンセのアホー!!」
「私はそんな事したことありませんもの、いつも使用人の仕事ですよ」
「これだからボンボンは…っ!…あ、そうだ窓割ればいいじゃん!?」
「防犯用に強化ガラスに変えたばかりでして…」
「タイミング悪いなーもう!!なんとかなんないの?先生化け物みたいな腕力なんだから割れるんじゃないのー?」
「えー?無理ですよ、私お腹が空いて力出ませんもの」
「頑張ってよお願いだから!なんでいきなり腹ペコキャラになっちゃうのさ?」
「高屋敷君の一部を食べさせてくれるなら力が出るやも知れません」
「ダメダメダメ!!それはダメ!!ムリ!!」
「高屋敷君…昔、飛行機事故で雪山に遭難した人達がいました」
「ふえ?」
「彼らは死んだ仲間達の肉を食べて生き延びました。しかしローマ教皇はそれを咎めはしなかった、生きる為にはそうするしかなかったから……生きてこそ。そう、生きてこそです!」
「いや…あの…」
「生き延びる為には仕方が無いことなのです高屋敷君、少しの犠牲で生きることが出来るなら、それは正しき事なのです。…さあ」
「で、でも…だってそれってセンセがちょっと頑張ればしなくていい犠牲なんじゃ…」
「……死にたいのですか、高屋敷君」
「う…うう……」
「さあ、ナイフを…」
「僕が…?」
「私がやるよりは、人道的かと思いまして」
「っ…」
「…」
「うっ…うう…ひぐ……」
「…高屋敷君」
「怖いよ、先生、怖い…」
「タオルを噛んで、舌を噛み切らないように」
「く………」
「…」



ザグチッッ!!



っぐあがああぁーーーーーー!!!
「高屋敷君…!」
「ひぎっ…(グチ!グチブチブチブチブチィッ!!)ギグ…アガァ、オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!
「血止めを…ああ、高屋敷君、しっかりして下さい…!」
「(ベリリバリ!ヌち…ズブッズチッザグドチュッ!!ドベチッ!!)」
「……高屋敷君…高屋敷君?」
「…」
「…気絶を、してしまいましたか…」
「…」
「君の思いを無駄にはしません…これを食べて、ああ…一緒に外へ出ましょうね、高屋敷君」




気が付いたら病院のベッドの上で

先生は僕の手を握っていてくれて

いっぱい謝ってくれた


大丈夫だよ安西先生

右足はなくなったけど

一緒に生きて帰れて嬉しいよ

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