「…んあー…」
「……」
「…ぅやー…センセー起きてー、チェックアウトの時間だよー」
「……」
「寝起き悪いのもいい加減にしてったらー」
「…眠いものは眠いのです…」
「ダメだってばぁ、僕はともかく旅館の人に迷惑掛かるでしょ?」
「……」
「ほら起きて起きて!!踏むよ?!」
「では私は君の中身が出るまで踏み潰します」
「やっぱムリヤリ起きると身体によくないよね!自分のペースで起きていいと思うよ!」
「物分かりの良い子で先生嬉しいですよ……」
「…でもさー…」
「っ……ええ、ええ…解かっていますとも…仕事があるんじゃないのと言いたいのですね?」
「うん」
「………起きますよ…」
「がんばって安西先生!低血圧に負けないで!」
「荷物を…纏めて置いて下さいな、高屋敷君……」
「うん、やって置くから、ちゃんと起きてね?」



―――――――――――――――




ガチャ、バタム!



「高屋敷君、荷物は積み込み終わりましたか?」
「全部積んだよー」
「ん。それでは出発と行きましょうか…」
「大丈夫センセ?まだ眠いんだったら運転やめといた方がいいんじゃない?」
「心配無用ですよ。雪道ですし、ゆっくり運転しますから」
「そう?じゃー帰ろっか」
「ええ」



ブロオオオォォ……



「一泊しかしてないけどさー、温泉気持ちよかったね安西センセ」
「そうですねえ、高屋敷君のお肌がつるつるになっていますよ」
「片手運転止めてよつーか触んないで!!」
「やはり日本人は温泉ですよね、雪のチラつく露天風呂は心が和みましたよ」
「疲れ取れるよねー」
「まあ取れたってまた蓄積される訳ですが」
「あー…そっか、センセこのあとすぐお仕事なんだっけ」
「君は良いですねえ高屋敷君、家に着いたらすぐごろ寝が出来るのでしょう?これだから子供は恨めしい…」
「うう、それを言われると僕困っちゃいますよぅ…どうしてもあげらんないしさぁー」
「早く大人になりなさい高屋敷君、大人になってこの生き地獄を味わえば良いのです」
「あのさあ、おっきくなれって言ったり小さいまんまでいろって言ったり、どっちかにしてよ!」
「そうですね…小さく幼く可愛いままでも良いのですが、大人になってくれた方が良いやも知れませんねえ」
「なんで?」
「そうでなければいつまで経っても、私と大人の恋愛が出来ないでしょう?」
「お断りだよ!!」
「嫌ですか?一緒にドロドロの生きるか死ぬかの恋愛をしてほしいのですがねえ」
「そういう発言を聞く度にピーターパン症候群がどんどん悪化していくからやめてよ!」
「私だってピーターパン症候群ですよ。ああ、社会人なんて辛いばかりでちっとも楽しいことなどない…」
「そんなに仕事溜まってたんだ…って言うか、最近センセ遊んでばっかりだったと思うけどなあ…」
「…ねえ、高屋敷君?」
「ふえ?」
「帰っても仕事が待っているだけですし…」
「え?」
「このまま心中しましょうか、高屋敷君☆」
「うわああ故意にハンドル操作を誤るな崖が崖がアッギャアアアアァァァァーーーーーー……………!…!!……!!!」

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