「ただいま帰りましたよ高屋敷君…(プシュッ!!)ぶっ!?」
「シャワーの匂いをプンプンさせて帰ってくんなー!!」
「だ、だからと言って顔面にファブリーズする事はないでしょう…まさかわざわざ家から持ってきたのですか?」
「そうだよ。一回帰って持ってきたの」
「そんなに嫌なら私以外の人に教われば良いじゃありませんか」
「だって他の人、教えても無駄だって意地悪言うしー」
「私も無駄だとは思っていますが」
「いいから早く教えてよ!!もう僕数学のセンセにタメ息吐かれるの嫌なのぉ!!こないだのテストがとんでもなく悪かったの数学だけー!!」
「私に吐く権利はないのでしょうか…まあ良いですよ、始めましょうか。ご飯食べました?」
「食べてない。おなか空いた。ごはんちょうだい」
「…数学のお勉強は良いのですか?」
「そんなもん後でいいからばんごーはーんんーーー!!!」
「自分でも驚く程殺意が湧いてきて驚愕です。丁度タイマーのご飯が炊けたところなのでこれを顔面に…」
「もぐもぐ」
「あ…何を勝手に食べているのですか高屋敷君」
「おかずがないですよぅ安西センセ、おかずはー?」
「……ごはんですよで良いですか」
「ありがとー」
「ふう…」
「今日はなんだか安西先生弱いね。どしたの?」
「んー、流石に八人相手は疲れました」
「もむもぐ、一人何時間?」
「八人纏めて相手をして三時間です」
「やーセンセ超不潔ー!えい(プシュ)」
「だから顔面はやめて下さいと」
「だってー」
「大体シャワーを浴びたのに不潔と言われるのが納得いきませんよ」
「余計卑猥なんだもん」
「…ところで、ねえ高屋敷君、私の分のご飯は…」
「え、全部食べちゃった」
「……」
「んーおなかいっぱいになったら眠くなっちゃったです。眠気覚ましにお風呂入っていい?」
「高屋敷君、ガキだからといって遠慮と無縁なのは褒められたことではありませんよ」
「でももうさっきお湯入れちゃった」
「…何を、勝手に」
「お風呂好きなんだもん」
「しずかちゃんみたいですね」
「センセも入る?シャワーじゃ疲れ取れないじゃん。僕優しいから背中流してあげますよー」
「…ガードが堅いのか弱いのか…」



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「♪いーい湯ーだーなぁー!」
「ご機嫌ですねぇ」
「うん!僕センセのうちのお風呂気に入ってるの。広いし景色綺麗だしー♪」
「君の方が綺麗ですよ」
「そういうのいいから」
「その柔肌が熱い湯に浸かりほんのりと桃色に色付いた姿は全く眩しくて目が離せませんね」
「顔を背けながら言うなよ!無理してまでやおいボケなくていいんだよ!?」
「しかし私のキャラですし…それに君こそさっきから私を視界に入れてくれないではありませんか」
「だって安西先生全身変な鬱血だらけなんだもん。不潔ぅー」
「この桜吹雪が目に入りませんか」
「入れたくないってば!!やっぱ背中流してあげないからね」
「まあ犬の爪痕とかついてますし、下手に擦られたくないですしね」
犬!?!
「あ、いや…犬…っぽい人というか、犬井さんというか」
「ウソだー!!この動物虐待娼夫!!」
「だって仕事だったのですもの仕方が無いじゃありませんか。私だって本物の犬より仔犬の様な高屋敷君の方が…」
黙っていい加減に!!もう何か今回ギリギリアウトだよ不健全だよー!」
「ところで君の飼っているラブラドールのガラナちゃん、お元気ですか?」
「元気だけど安西先生の求めている元気とは違う!ガラナちゃんはもっと立派な犬のお嫁さんにするって決めてるの!!」
「嫌ですねえ、そんなつもりで言った訳ではありませんよ?」
「もーいい…身体洗お…」
「ならば私は君の頭を洗ってあげます」
「していらないです」
「だって私はもう洗う所がありませんし…ああ、高屋敷君の髪の毛はポメラニアンの毛のように柔らかですねぇ…」
「犬で喩えないでよ!!」
「ふふふ、可愛い顔でキャンキャン吼えて、コーギーみたいですね」
「だから犬で喩えるなぁー!!もういい上がる!お風呂おしまい勉強教えて!!」
「良いですか高屋敷君、犬が十二匹居るとしますね?これを三つのケージに同数入れたいとすると…」
「高三で割り算習ってる僕が言い難いけど、犬で喩えるなって言ってるだろこのバカー!!」
「因みに裏設定としてこの十二匹の犬達は対人間用にある種の特殊訓練を受けていましてそれはもう耐久力や舌使いも一流で」
死ねやあああああーーーーーい!!!!!




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「ただいまー」
「あらおかえり智裕。丁度よかった、ガラナちゃん散歩に連れてってくれる?」
「……え…?」





その朝

僕は初めて

ガラナちゃんの散歩をサボった

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