「…暇。ですねぇ高屋敷君…」
「うー?うん、まあヒマっちゃヒマですー。お茶センセの分もいれたげよっか?」
「やる事が無いと本当に退屈です。童貞でも食ってきますか」
「あぼぶぅっッ!?!ななななに言いだすのバカっ!!」
「何です?君が食べてほしいのですか」
「言ってないですそんなこと!!真面目な顔で言うのやめてよ、冗談は冗談らしい顔して言いなよねー!」
「冗談じゃありませんけど」
「黙れもう!変態リバ教師!!両刀!!」
「言いたい放題ですねえ…まあ良いです。そんな事よりこれをどうぞ」
「?なんですかぁそれー。オモチャ?」
「良いのですか高屋敷君、変態リバ両刀教師にそんな無防備に近づいて」
「んうー?オモチャのコンパクト?アッコちゃんのキャラ商品…じゃないんだね。でも今時コンパクトで変身するア

ニメなんて他にあったっけ?」
「いえ、玩具ではなく本当に魔法のコンパクトです」
「…黒魔術の?」
「ええ」
ぎゃああ触っちゃったー!!
「っとと…駄目ですよ高屋敷君、投げたりしては鏡が割れてしまうでしょう?それに触ったからといって何もありま

せんよ」
「えーホントー?なんか毒付いたような気ーするー」
「図書館の古い本じゃないのですから…」
「ねえねえ、それでそのコンパクトはなんなんですかぁ?世界を崩壊させられるの?」
「そんなまがまがしいものを不用意に持ち出す訳ないじゃありませんか。…まあ、結局は玩具です」
「さっき本物って言ったじゃん」
「だから、本物の玩具…つまりは魔法で遊べるオモチャです」
「ほえ?」
「君の為に作ってあげたのですよ。これには私の魔力が込めてありますから、高屋敷君が黒魔術を使えなくても大丈夫です。存分に変身して遊びなさいな」
「えーそうなのすごいですー!!ありがとセンセ、僕うれしー!!」
「喜んでくれて、私も大変嬉しいですよ」
「えっとーえっとねーなにになろうかなー?」
「何にでもなれますよ、ウサ耳だろうと人魚だろうと…」
「んと、じゃあテクマクマヤコンテクマクマヤコンセロハンテープになーむぐぅ!?
「ど、どういう思考回路をしているのですか君は…?」
「ぷはぁっ!苦しいですよぅいきなりなにするのー?!いいじゃん僕がなりたいって言ってるんだからセロハンテープでも!」
「あのですねぇ高屋敷君、このコンパクトは元に戻る時も呪文が必要で、しかも掛けた本人が唱えなければ戻れないのです。自我すらないセロハンテープになってどうやって戻る気なのです?」
「先に言ってよ!」
「まさかセロハンテープになりたがるとは思わなかったのですもの」
「えーじゃあ動物とかにもなれないってことー?」
「人間の声帯じゃないといけませんね」
「むー…意外につまんなーい。役立たなーい」
「貰っておいてその態度…無邪気な子供は恐ろしいですねえ〜」
「うーん…あ、そだ!ねー大人になるってどうかなあ?メルモちゃんみたいにー」
「ああ、良いんじゃありませんか?」
「じゃー決定!んと、いくつになろっかな?…センセっていくつ?」
「私ですか。今年で二十七になりますよ」
「んじゃ僕も二十七になる!えへへ、九年後は安西センセくらいおっきくなってるかなあー?」
「あ、呪文はテクマクマヤコンではなくエロイムエッサイムですよ」
「悪魔君…?…ん、んと、それじゃあエロイムエッサイムエロイムエッサイム我は求め訴えたり、二十七才の僕になーれ!(ボウン!!きゃうっ!?
「ん…?」
「あううビックリしたあー………あれ?」
「ふうん…これが二十七才の高屋敷君、ねえ…」
「え?え?なにその反応?ちょっ…鏡!鏡見してー!」
「姿見ですか?どうぞ…ちょっと小さいですが、まあ半身は映るでしょう」
「あ、ありがと……え?」

「…」
「な、なにこれ全然変わってないー!!背も全然センセに勝ててないー!!」
「4センチくらいは伸びていますよ。顔も少し大人びましたし」
「そ、そうかなあ?」
「ふふ、安心しました。多少変わりましたがやはり君は君、可愛い高屋敷君のままらしいですねえ…」
「うう、やっぱ形容詞は可愛いのまんまなのかー…」
「嫌ですねえ、褒めているのですよ?ああ良かった、君が二十七になっても抱っこ出来そうですねぇ幸せです」
「僕はヤだよ成人してからも抱きぐるみなんて!!…あ…そういや先生は九年後どうなんの?三十六のおっさんでしょ?」
「ああ…やってみます?変身関連なら、君以外でもいけますよ」
「んあ、なんか恐いけど…エロイムエッサイムエロイムエッサイム我は求め訴えたり、安西先生三十六才になぁーれ!」
「…(ドゴオオォーン!!)」
「爆発でけえな!?ケホっ…煙で見えない…あの、安西センセ…?」
「ゴホン…どうですか高屋敷君、三十六の私は?」
「………魔法に失敗したんじゃないかってくらい何も変わらないね」
「そうですか?…まあ、大人は見た目年齢をあまり取りませんし」
「で、でも肌が若いままだよ?シワくらい普通…」
「それはほら、ちゃんとスキンケアしてますし」
「…エロイムエッサイムエロイムエッサイム我は…」
「ん?何をするのですか高屋敷君?」
「我は求め訴えたり、安西先生百才になーれ!!」
「な…高屋敷君さすがにそれは…(ズゴオオオォォーーーン!!!)」
「うわっ!す、すごい煙っていうか粉塵…!……センセ?あの、見えない…ね、先生どこ?」
「……」
「あ、いた。…けど煙でコナンの犯人にしか見えないです、こっち来てよー」
「………ちっ」
「え?な、なに?なんか来たら不都合なことあんの?」
「少し黙りなさい、高屋敷君」
わぎゃビックリした!?!な、なに目隠しなんかしないでよなんでコンパクト取り上げるのー?!」
「…(ガシャン!バキン!!)」
「な…(ボシュン!)?!」
「ん、やはり壊したら魔法も解けましたねえ」
「………」
「まあ暇潰しくらいにはなりましたし、それなりに成功した玩具でしたね。ねえ高屋敷君、君もそう思うでしょう?」
「…うん…」


100歳の安西先生は

声も若かったし

手も綺麗だった

ねえ安西先生

あれはコンパクトの魔法が不完全だったんだよね?

ホントは安西先生も年を取るよね?


人間…なんだよね?

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