ピンポーン♪

ガチャ

「はっぴぃはろいん!とりっくおあとりーと?」
「…随分と気合いの入った仮装ですねぇ高屋敷君…寒くないのですか?」
「?アンタなに言ってるのかわかんない。僕はタカヤシキなんて名前じゃない」
「………あ、役作りまで気合いが入っているのですね」
「役?なに言ってるのかわかんない。いいからとりっくおあとりーと?早くしないとイタズラだ!」
「はいはい、今あげますから待って下さいな、高屋敷君」
「違う違う違う!誰だタカヤシキ?!僕はタカヤシキなんて名じゃない!アンタムカつく!イタズラやる!!」
「え?あ…待ちなさい高屋敷君!土足で上がり込むだなんてお行儀が悪いですよ」
「アンタ、バカか?僕、行儀悪いのがお仕事だ」
「いくら何でも仕事はないでしょう?悪ふざけが過ぎると先生怒りますよ」
「???仕事だ、壊すの、僕のお仕事…」
「あ、ティーカップを壊したのですか?!もういけません、お仕置きしますからこっちにいらっしゃいな高屋敷君」
「違う!タカヤシキじゃない!ヤだやめろツノ引っ張るのダメぇ!」
「言い訳は聞きません。さっさとそんな仮装を取って……ん?」


―――――――――――――――


「ロージー、そんな所に。離れてはいけないと言った筈でしょう」
「え?あれ?安西先生?どしたのそんな半裸で…それに離れるなって、僕これからセンセの家に行くとこだよ?」
「安西先生?やれやれ、一体何をして遊んでいたのか…さあもう帰りましょう」
「なに?もうってどゆこと?センセの家行っちゃダメってこと?」
「ああ、もう、おふざけはその辺で。君の我儘は疲れます…」
「ワガママって…もーなに言ってんのかわかんない!あとその格好止めて服着なよ!露出狂だよ!!」
「ロージー、君こそその格好。そんな格好では帰った時に怒られますよ?角も何処で落としてきたのです?」
「ツノぉ?なにそれ、そんなの元から付いてないよ。ってかさっきからロージーって誰?」
「いい加減に…ねえ、帰りましょう?君は要領が良いけれど、その代わりにいつも私が怒られている」
「……そだね、帰ろ。センセの家にさ。そのカッコじゃ風邪ひきそうだし」
「ロージー…?やけに物分かりが。…何か企んでやしませんか?もう君の罠に引っ掛かるのは止めにしたいのです」
「あーもーハロインだからってふざけ過ぎ!罠はいつもそっちが仕掛けてくるんじゃん、いいから帰ろ!!」
「やっと帰ってくれるのですか。良かった、地獄を勝手に抜け出たことがばれたらどうなっていたか」
「…地獄?もしかして、安西先生じゃないの?」


―――――――――――――――


「離せ、痛い、ツノ引っ張るの離せー…!」
「おやおや、本物の悪魔でしたか。もっと早く言って下さいな」
「アンタが勝手に間違えた!謝れ!謝れ!」
「はいはい、ごめんなさいな。それにしても高屋敷君にそっくりです。よく似た悪魔も居たものですねぇ…」
「しらない。ソイツが似てるんだ」
「ところで、お名前は?」
「僕?僕、ロザリア」
「ロザリア?女の子のような名前ですね。人のことは言えませんが」
「アンタなんていうの?」
「聡美といいます」
「ふうん…サトミ、僕のオモチャにちょっと似てる。ラルフって奴、知らない?」
「ラルフさんですか?さあ…」
「ラルは僕のゆうこと聞くのに、サトミは怖い」
「怖くて結構ですよ。と言うか私似の悪魔はそんなにへたれなのですか」
「僕のゆうことなんでも聞くよ、ラルは僕より弱いから。えへへ、今も地獄からムリヤリ連れて来た。僕、こっちの

道分かんないから」


―――――――――――――――


「…だからさー…僕、そのロージーって子じゃないってば……なんで何回言っても信じないの悪魔さん」
「その手は何度も食わされました。私とて同じ手に800回も引っ掛かる程君を信じはしない」
「800回も引っ掛かってるのに、どうして今回だけは信じてくれないのかなあ…」
「ところで、ロージー一体何処へ向かって?地獄に帰るのではなかったのですか」
「だーかーらー!もう、いいから着いてきて!センセに会えばなんとかしてくれると思うから」
「ロージー。何を言っているのか私には…」
「もういい、もう説得とか納得とかさせるの諦めた…早くセンセに押し付けちゃおっと」


―――――――――――――――


「へえ…なんだか高屋敷君と違って強気な子ですね……で、そのお友達はどこにいるんです?」
「分かんない。はぐれた。困った奴」
「それは君が迷子になったのだと思いますが…」
「そんなことない!悪魔、バカにするなよ!!」
「…(これはこれで…)」
「あのね、さっきから、僕のこと軽く見てるだろ?!角引っ張ったの、怒ってるんだからな」
「ん?あー…まあ……ふうん、強気なのもなかなか虐め甲斐が…」
「聞いてる?!あ、悪魔舐めるとヒドい目に遭うぞ!悪魔にかかったらなあ、人間風情なんて一捻りだっ」
「そうなのですか?怖いですねえ…」
「えへへ、怖い?怖いだろー」
「…ところで、私のフルネームを知っていますか?」
「?知らない」
「安西聡美といいます」
「アンザイサトミ…?」
「聞き覚えはないでしょうか…」
「アンザイサトミ…サトミ……サトミ・アンザイ………!?!あ、あああ安西家の次男坊のか!?」
「ええまあ、お祖父様達程ではありませんが、これでも地獄ではそれなりに名の知られた…人間風情なのですがね」
「あわ、わわわ…!」
「さあどうしてあげましょうか…?お気に入りのカップも壊されちゃいましたし、どんなお仕置きが良いですかねぇ

…?」
「こ…怖くない!僕の方が強いもん、どうせサトミもラルと似たようなもんだー…」
「へえ?じゃあ戦ってみます?魔術で悪魔と戦うのは久しぶりです。レオナールさんと、納豆は挽き割りか小粒かで 喧嘩をして以来ですね」
「ど、どっちが勝った?」
「挽き割りです」
「そうじゃない!!」
「まあまあ良いじゃありませんか。先手は君にあげますから、どうぞかかってらっしゃい?」
「言われなくたって……きゃうっ!?!」
「ふふふ…残念でした」
「あう…っ!…痛い…変だ、サトミ、人間だろ?人間がどうして、そんなに強い?」
「威勢の良い割にはその程度ですか…全く、弱い犬ほどよく吠えると言うのは本当ですねぇ駄犬君?ま、知能が低い くせに私に手向かうとは下級悪魔らしいと言えますけれど。でもですねえロゼリア君?私はてっきり君と楽しい戦い が出来ると思ってこんなにも大量の術式を展開させてしまったのですけれど、一体どうすれば良いと思います?全弾 君にぶつけてぐちゃぐちゃに壊してあげましょうか?ですが、最初の二三発でゴミクズの様なその小さな身体は跡形 無くなるでしょうしねえ…まあ悪魔は死にませんし、再生する毎にぶつけてあげましょう。いやあ全く蚤より弱い君 相手では全弾撃ち尽くすのにどれくらい掛かるんでしょうか?長ければ長いだけ、君のそのこまっしゃくれた腹立た しい小生意気な顔面を破壊出来るのかと思うと実に愉快痛快、花火でも上げてお祝いしたい気分ですよ死ねば良いで すねこのクソガキ!!」
「う…うえ、うああああぁぁーん!!ラル!ラルフー!!」
「おやおや…泣いちゃいましたか。けれどお友達を呼んでも無駄ですよ?君みたいに我侭な悪魔、もう嫌いになりま したって」
「?!な、なに言って…
「君の事なんてこっちに捨てて、一人で地獄へ帰ってしまったのでしょうね。だってほら、現に助けにやって来ない 」
「違う…違う……ラルは、僕を…ラルフ、ラルフ、助けて…!!」
「今更後悔しても遅いのですよロゼリア君?ラルフさんは意地悪な子は嫌いだったのですって…一緒に居たくなんか ないのですって……ふふっ、もうだーれも君の事を助けてくれないのですよ…?……君はね、ロゼリア君…… 一人ぼっちなんです!!あっはは!可哀想に!!」
「いやあぁ!!違うの!違うの止めて!いやああ止めて、止めて!ラルフ!ラルフ助けてぇー!!ああああ ああああああああああ!!!



ガチャ



「安西センセ見て見て、なんか先生そっくりの悪魔さんに会ったよー…って、なにしてんの?」
「おや高屋敷君、その隣に居るのは…?」
「ラルフ!!」
「ロゼリア!?」
「わ、僕そっくりの悪魔もいたの?!世間狭っ!」
「では、君はロゼリアでは…」
「だから違うってさっきから言ってたじゃない。悪魔さん信じてくんないんだもん」
「高屋敷君たら、折角良い所だったのに結界を解いてしまうのですもの…」
「ふうーん…その結界の中で、僕そっくりの悪魔君を虐めてた訳なんだ?」
「良いじゃあありませんか、君を虐めた訳ではないのですし」
「悪いよ!!」
「ロゼリア、泣いているのですか?…貴方が、泣かせたのですか?」
「あーとても面白かったですよ。ラルフさんでしたっけ?良い玩具ですね、下さい」
「…ロゼリアは玩具ではありません」
「ふうん?まあ良いです、お馴染みの玩具がのこのこやって来てくれたみたいですし」
「僕の事か!?嫌だよ僕オモチャじゃないよ!!」
「領分を侵した非礼は謝ります、サトミ・アンザイ。しかし、ロゼリアを泣かせた事は許しませんよ」
「…いいなあ、素直に可愛がられてて…」
「貴方の許す許さないは私にとってどうでも良い事です。早い所その子を連れてお帰りなさいな」
「その女王様な所、直した方がいいよ安西先生。悪魔より性格が悪いって人としてどうなの?」
「…ふう…貴方に逆らっても勝ち目はない。それに、ロゼリアを連れて帰ることの方が先です」
「…」
【ロージー?もう大丈夫です、帰りましょう。…ロゼリア?】
【……ラルフ、一人で帰れ】
【何を言って?】
【っ…僕、ラルフに意地悪言った。ワガママで困らせた。…ひぐ…ラルフ、僕を嫌いになった…】
「おや、さっきのイビリが結構効いてたみたいですね。悪魔の癖に軟弱なものです」
「人間の癖に悪魔を精神的に追い詰めるなよ!つーかホントに人間なの?!」
【ロージー、君を嫌いになってなど。君は意地悪ですし我侭で困った子です、でも、大切な友人ですよ】
【ウソだ。ラルフ、いつかきっと嫌いになる…】
【いいえ、なりません。私は悪戯っ子のロゼリアが好きですから…ずっと一緒にいます、絶対にね】
【…ホントに?じゃあ、ワガママ言ってもいい?】
【どうぞ?】
【んと…ラル、おんぶしろ!!】
【はい、ロージー…その代わり、地獄へ帰りましょうね】



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「…帰っちゃったねー」
「悪戯好きの悪魔と、それに甘い悪魔ねえ…Trick to Treatってところでしょうか」
「羨ましいなあ、安西センセもあれくらい優しかったらなー」
「じゃあ、私達も仲睦まじくハローウィンパーティーでも始めましょうか?」
「うん!だいぶ時間掛かったけど僕、お菓子食べたいですよぅー」
「という訳でお菓子を下さい氷室さん」
「下さいっ♪」
如何してうちに来るんだお前等は!?!

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