「ぐ…ぁ……っ」
「…お願いです、一度頷いてくれさえすれば、こんな事…」
「やめ…て……セ…ン…………」
「高屋敷君…どうか、私を(パァン…ッ!!)
!?っげほ!ゴホガハァッ!!」
「やれやれ…やはり作り物は駄目ですねえ…あんなルールも守れないとは」
「あ…安西先生…!」
「私としては、久しぶりになりますね高屋敷君。折角面白いゲームを思い付いたのですけれど、この『安西聡美』の おかげで破綻しちゃいました」
「……殺したの」
「壊した、のですよ。不良品だったのでね。…君を殺しそうでしたし」
「………」
「おや、泣いているのですか高屋敷君?」
「っく…お願い、もうやめて……もう僕、こんなのいやだ…!」
「ん。もう良いですよ、ここらでお開きにしましょう。君から見付けてもらえなかったのは残念でしたけれどね」
「ホントに…?もう、僕は迷わなくていい?安西先生を、捨てなくていいの?」
「ええ、私が本物…それで御終い。さあ、行きましょうか」
「…うん」
2「君は本当によく騙されるのですねぇ高屋敷君。そんなどう見たって偽者にしがみ付いて、一体何がしたいやら? 」
「ふえ!?」
1「おや…まだ出来の悪い玩具がいたみたいですねえ」
2「出来が悪いのはどちらでしょうか。作り物の分際で本物を名乗るとは、おこがましいとは思わないのですか」
1「やれやれ…まったく面倒です。ですが高屋敷君、君ならば判ってくれますよね?私が本物だと…」
2「それは私の偽者です!こっちに来なさい高屋敷君!!」
1「高屋敷君、聞いてはいけません。あれは幻です…さあ、私の手を取りなさい」



眩暈がして立っていられない

僕には見分けがつけられない

二人の安西先生が

同じ声で僕を呼ぶ

膝をついて吐き気をこらえる

傍に転がるやさしい安西先生の死体が

僕を嘲って笑ってる

助けて

お願い助けて




助けて安西先生ー!!




背後から一筋閃光が伸びて

二人の安西先生を消し飛ばした


慌てて振り返ってみると、そこには呆れ顔の安西先生が居た



「でかい声出すんじゃありませんよ…騒がしい子ですね君は」
「あ、あ、安西先生!?」
「こちらに来なさい?手を取れ?はん!そんな馬鹿なことを私が言うものですか。欲しいものは奪う、それが私です ね。…ほら、行きますよ高屋敷君」
「ぐえっ!…く、苦しいですよう安西センセー…」
「あんな不出来な作り物を、私と思い込んだ罰ですよ。全く三年飼った甲斐もありませんねぇ」
「…安西先生?」
「はい?」
「安西先生?」
「だからなんです?頭の螺子が飛びましたか?」
「本物の、安西先生なの?」
「そうですよ」
「でも!だって、でも違うかもしれないじゃない!!だって…僕、さっきも見分けつかなかった…両方本物にしか見 えなかった!!今の安西先生が、本物かどうかだって僕……!!」
「はあ?本物かどうかをどうして高屋敷君に決められなくてはいけないんです?私が本物だと言ったら本物なんです 。君は黙って従ってりゃ良いのですよこの馬鹿ガキ」
「…え」
「もう後夜祭が始まってしまうじゃありませんか。さっさと歩かなければライオンと84Pさせますよ」




……

………

…さっきまで本物探せとか言ってたのに

………

……

…うん…

これくらい傍若無人で人非人でサディストで鬼で悪魔で人でなしだったら

なによりとんでもなく自分勝手だったら

本物の安西先生なんじゃないのかなあ

うんもうそれでいい

僕知らない



もう疲れた…

…後夜祭かあ…

……

帰ろ

またフォークダンスとか踊らされるだろうし

クラスのみんなごめんね

ただでさえ殺されて人数少なくなってくのに手伝わなくて

明日の片付けはがんばるから

僕先に帰って寝るね…




―――――――――――――――


【…安西教員はどうした?】
『本体でしたら先程まで、高屋敷君と遊んでらっしゃるのを見かけましたが』
「いやあーすみませんお待たせしました。ちょっと高屋敷君に構い過ぎて」
【うん?なんだやっと来たのか…もう最終段階に入るんだ、急いで仕度しろ】
『人員不足の賄いご苦労様でした、安西先生』
「ええ、学校長。仕度はもう済ませているから大丈夫ですよ」
『安西先生、高屋敷君の方は?』
「今頃疲れて、ベッドでおねむでしょうね」
『そうですか』
「…ところで氷室さん、もういい加減にその私の複製を返してくれませんか」
【む?…いや、しかしなあ…】
「大体それは一番の失敗作なのですよ?年も幼すぎましたし、何より頭が高屋敷君並みに悪いですし」
『申し訳ありません、もう少し生徒会の人員を安西先生の複製に回せればよかったのですが』
「良いのですよ、生徒会には随分動いてもらいましたものねえ…」
【ああ、学外の人間を集めたのは正解だった】
「生贄の数が随分と…ふふっ」
『現在、後夜祭として全人員が校庭に集まっています。手早く片付けるならば、今かと』
【ふん…準備は良いのだな、安西教員?】
「完璧ですよ」
【では術式の発動に取り掛かれ、総員持てる力の限りを尽くして稼動させろ】
「了解です、学校長…会長君、無線連絡をお願いします」
『はい、安西先生。総ては我が【私立挫賂眼学院高等学校】の為に』

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